3791 胡錦涛の右腕にも汚職捜査の手が 宮崎正弘

飽くなき権力闘争、「上海派」と「団派」が互いに汚職摘発の神経戦。中国の2008年公式統計で、汚職などによる処分が十五万一千人という数字、このうち党幹部は4960人、あまりの腐敗ぶりに取り締まりの強化が謳われた。
15億円の収賄事件で死刑判決がでていた李培英(元首都空港集団社長)の死刑が執行されたことが8月7日に判明した。
その衝撃の余波が去らないうちに胡錦涛の右腕、李克強副首相に汚職疑惑が浮上した。ハルビン市党書記に就任したばかりの蓋如根から李は六千万元(邦貨換算九億円弱)の収賄を受け取って、彼のハルビン市党委員会書記という重要ポストを認めたというのだ(「BOXUN NEWS」、8月2日付け)。
同紙に拠れば蓋如根は大慶市長時代に政治局中央常務委員会に高額な賄賂をつぎつぎと送りつけ、次の昇進を露骨に画策し、ハルビン副市長、市長代理、そして大慶時代の石油ビジネスにまつわる賄賂で得た蓄財から法外な賄賂を李克強に贈呈していたという。
汚職摘発は続いている。
中国核工業集団社長兼党書記の康日新が不正入札および公金流用容疑で逮捕、中央規律検査委員会で尋問されているそうな。
同集団は中国の原子力産業の中核企業、党書記を兼ねる大物の逮捕は様々な憶測を呼んでいる。同集団傘下で香港に上場されている「中核国際」の株価は09年8月5日の報道直後から16%も暴落した。
康は江沢民と同じく上海交通大学の出身。核発電関連企業にまつわる不正入札事件の最近の例を挙げると中国技術進出口公司元総裁・?新生、中国広東核電集団公司(中広核集団)副社長・沈如剛らの事件がある。
▲家電量販大手「国美電器」創業者を拘束、余波があちこちへ
中国家電最大手とされた国美電気の創業者=黄光裕とその夫人が不正証券取引をしたとして北京で拘束され、その香港での保有資産207億円相当が差し押さえられていることも判明した。
この「国美事件」は芋づる式に共産党幹部の逮捕拘束を招来し、家電量販業界の地図を塗り替えたと言われる。日本のラオックス買収も、この事件の余波と間接的関係があるらしい。
 
このほか四月には広東省政治協商会議主席の陳紹基と浙江省規律検査委員会の王華元書記が汚職の疑いで取り調べを受け、六月には深せん市長の許宗衛も汚職容疑で拘束されており、これら全員が国美電器汚職事件と絡むのだ。
黄光裕は香港での株価操作が一番の容疑。
死刑判決もじゃかすか乱発されており、四月には故黄菊(前副首相、元上海市長)の秘書だった王維工に死刑判決(ただし執行猶予付き)。
王は失脚した陳良宇(前上海市党書記)の収賄事件にも絡み、陳をデベロッパーに紹介した案件では見返りに一億三千万円相当の賄賂を受け取っていた。
上海は世界的繁栄を誇る大都市ゆえに建設、開発、株式、商取引にまつわる汚職はつきもの。そもそも故黄菊夫人の余慧文は夫の現職時代、上海の「上流夫人」らを集めて、「上海慈善事業夫人倶楽部」などと名乗り、デベロッパーと癒着し、数社の企業顧問にも就任していた。
 
当該倶楽部には呉国邦(現全人代委員長)、陳良宇(前上海書記)らの夫人を網羅し、農地の没収などに「辣腕」を発揮した。余慧文は「女帝」の異名があったが、今夏の倶楽部改選で理事にも落選したことが分かった(博訊新聞網、8月10日付け)。
 
こうみてくると団派への突き上げと旧上海派への操作という権力闘争のバランスが作用しながらも、両派が懸命に相手の影響力をそぐ執拗かつ陰湿な闘争を持続させている実態が浮かび上がってこないか。
▲司法も汚職にどっぷりと浸かっていた
青島では裁判官の腐敗が猖獗をきわめ、汚職捜査といって容疑者から多額の賄賂をとり、不起訴としたり減刑したり、脱税容疑を見逃す替わりに賄賂を得たりのやりたい放題が発覚した。
司法の腐敗は指摘するまでもないだろうが、中国では最高裁判所副院長までが逮捕されている。
青島では劉青峰・青島地裁副院長(青島大学教授兼務)ら三名が犯罪に絡み、このうち青島四方区のキュウ衛東裁判長は自殺した。
 
愛人問題での職務解雇もかなり多い。西安市質量技術監督局のトウ宗生局長は、部下の女性を愛人としてきたが愛想のもつれで06年に女がオフィスで服毒自殺した。
三年間、因果関係の調査の結果、「社会主義道徳と倫理に反する」として西安市規律委員会は局長職務を解雇した(多維新聞網、8月10日)
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