この時期に、あえて民主党の外交政策を展望する。日本の総選挙で、各種世論調査の数字が指し示すとおりに、もし民主党が勝利を飾るとなれば、その場合の日本の新政権の外交政策や安保政策はどうなるのか。
この展望を占うのは時期尚早かもしれないが、いまの日本の民主党の外交や安保の政策は外国からみると、どう映るのかを知ることには意義があろう。とくに世界でも唯一の超大国、そして日本にとって唯一の同盟国である米国の反応を知ることの意味は大きい。
もっとも米国と一口で評しても、国政レベルだけでも単一ではない。政権与党の民主党がまずあって、いまや野党となった共和党が存在する。リベラルと保守という区分による政治勢力の差異もある。だがこと日本への政策、日米同盟への姿勢となると、米側の民主、共和両党の間の政策の違いはそれほどは大きくない。共通部分が多いのだ。とはいえ政策上の微妙なニュアンスや比重はまた異なってくる。
そうした諸要因を踏まえて、ワシントンで米国側の専門家や識者に日本の民主党の日米同盟や日米安全保障に対する政策をどう認識しているかを質問し、具体的な見解の回答を得た。
まず連邦議会の下院外交委員会で日米関係などを担当する民主党側補佐官は日本の民主党の安保政策にいくつかの疑問と懸念とを表明した。ちなみに議会の補佐官たちは実名をあげての発言はしてはならないこととなっている。
「日本の民主党の政策を定義づけることがまず困難です。この政党内には元社会主義者から元自民党保守派まで広範な顔ぶれが含まれているからでしょう。発表された外交や安保の政策もRiddle(不可解な判じ物)のようです。日本の対外関係の基礎を米国との同盟関係におくというマニフェスト部分は米国側の対日同盟保持という立場からすれば心強いですが、『緊密で対等な同盟関係』とは具体的に何を意味するのか、分かりません」
「日本の民主党はインド洋での自衛隊の給油活動についていろいろな声明を出していますが、突き詰めれば、自衛隊を撤退させたいという意向のようです。この動きは米国にとっては深刻な負を意味します。まず日本が日米協力や日米同盟から後退するというシンボリズム(象徴)の予兆として認識されます。
さらにはオバマ政権がいまや対外安保活動では最大の対象とするアフガニスタンでの対テロ闘争からの『日本の離脱』となると、地上戦闘部隊を派遣し、いまその継続について苦慮しているヨーロッパ各国の動向にマイナスの影響を及ぼすという実質的な負にもなります」
「日本としては対米同盟の保持には米中関係というファクターをこれまでより真剣に組み込まねばならないときに、日本の民主党の姿勢は日米関係で『これはよくない』というネガティブな注文ばかりで、では何をするのか、ポジティブな注文がうかがわれません。
米国議会では対日同盟を維持していこうという点でのコンセンサスはあっても、日本や対日同盟への関心はきわめて低い。他方、中国への関心が高いのです。日本の民主党の態度は米国の中国傾斜を加速させかねません」
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3792 日本の民主党の外交政策を米国はどう見るか 古森義久

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