新型インフルエンザに関する内閣の幹事会が7日開かれ、「第二波の想定」、その場合の「中央省庁が業務を継続するためにとるべき対応策」について、膨大な資料が配布された。
会議の主宰は内閣官房内閣参事官、メンバーは厚労省だけでなく関係省庁を網羅し、資料案を了承した。国として、新型インフルエンザ第2波について具体的な認識を示すはじめてのものだ。厚労省ホームページの報道資料には含まれていないが、入手した資料はA4、78ページ。これに基づいて、その概要を述べる。
まず、第2波が襲来した場合、最悪どのような事態が起こるか。その想定はこうだ。
・新型インフルエンザが発生した場合、人口の25パーセント(つまり4人に1人)が罹患し、ひとつの波が2ヶ月間続き、その後流行の波が2~3回ある。
・社会・経済的な影響としては、事業所において、本人の罹患や罹患した家族の看護のため、従業員の最大40パーセントが欠勤することが想定される。また不要不急の事業の中止、物資の不足、物流の停滞、多数の中小企業の経営破綻が予想され、経済活動が大幅に縮小する可能性がある。
さらに国民生活においては、学校・保育施設等の臨時休業、集会の中止、外出の禁止等社会活動が縮小するほか、食料品・生活必需品等が不足するおそれもある。
そこで「中央省庁では職員の休暇や関連事業者の休業、物資の不足等によって、業務を遂行するための人員、物資、情報が充分得られなくなることも想定しておくべきである」としている。
とくに社会・経済的な影響の具体例として次のような事態を想定している。
【第1段階(海外発生期)】
・ 帰国者の大幅増や検疫強化による、国内の海・空港の混雑
・ 出張や旅行の自粛
・ 国民の不安の増大、問い合わせの殺到
・ 食料品・生活必需品の需要の増大
・ マスク・消毒液の需要増大
相変わらず専門家が「意味がない」と指摘している検疫を行い、予防上、マスクの無意味なことを啓蒙する気はないらしい。
【第2段階(国内発生期)】
・ 発熱センターや、国・自治体に対する問い合わせ殺到
・ 学校・保育施設の臨時休業、集会中止、興行施設などの休業
【第3段階(拡大期、蔓延期、回復期)】
・ 医師、看護師、医薬品、人工呼吸器等の不足により一部医療機関が診療中止
・ 電気、上下水道、ガス、電気などのインフラ供給が停止する可能性あり
・ 食料・生活必需品の不足
・ 学校・保育施設で最大4割の従業員が欠勤
・ 企業の経営破綻が増加、雇用失業情勢の悪化
そしてやっと、
【第4段階(小康期)】
に漕ぎつけるという想定なのである。この間、8週間(2ヶ月)。庶民がトイレットペーパー争奪に走った70年代のオイルショックの、あのときのことを思い出してほしい。想定の最悪事態が現実のものになった場合のことを考えてほしい。
高々、罹患者5000人ほど、死者ゼロのこの春の第一波であの騒ぎである。間違いなく、パニック、機能麻痺した国家の姿が見える。
ところが、さすがわが官僚は健気である。中央省庁の機能を維持するためのガイドラインを、以下、延々と述べているのである。
21ページ以下50枚以上の膨大なものだから、お経(基本的な考え方)は飛ばして、要点を箇条書にすると
・ 国内発生以降、一般業務を縮小して新型インフルエンザ対策に要員を投入する
・ これに従事する職員にはワクチンを先行接種する
・ インフルエンザ様症状のある職員には、特別休暇の取得を認め、外出自粛の徹底を要請する
・ 業務遂行に必要な物資・サービスの調達、人員体制、通勤手段、勤務方法を検討しておく
一般国民は、早くしないと役所に物を買い占められてしまうかもしれない。
・ 国会関連の質問や資料要求業務は出来るだけ縮小する
国会議員は手足をもぎ取られたコウロギのようになるだろう。役人が国家を動かすことになる。
・ 職員の通勤時の感染リスクを低減するため時差通勤や自転車、徒歩などによる通勤を検討する
・ 感染拡大を防止するため、混雑した電車内ではマスクを着用する
まことに行き届いた配慮だ。
・ 職員が通勤・公務中に罹患した場合は、国家公務員災害補償法によって救済が認められることがある
・ 庁舎内で感染しないようにパーティションを設置したり、食堂のテーブルを離す
・ くしゃみをするときは、口を前腕部(袖口)で押さえて飛沫が拡散しないようにする
・ 各省庁や(公務員共済組合は)は省内にある診療所での医薬品(抗インフルエンザ剤)の備蓄を確認する
因みに、ワクチンがどこに蓄積してあるのか国民は知らされていない。備蓄場所を知っているのは、彼らだけ
なのである。
ばかばかしくなってきたので、いい加減にしたいのだが、要するのそこに見えるのは、役人天国。国民の生活、健康維持より自分たちの職場の安全対策、健康を先行して検討する官僚の実相である。
資料はその証拠書類としては、第一級のものだ。78枚の会議資料の20枚が「想定」残る50枚が中央省庁で、国家機能を維持するための仕事の進め方についての対応策に費やされている。
似たりよったりのばら撒き合戦のマニフェストを貴重な紙面や芸能ニュースと一緒にワイドショーで品定めするより、全文を公開して各党の感想を聞き、選挙の判断材料にしたほうが、余程、国民のためになると思うのだが。
もっとも、冷夏の観測。早くもある候補予定者が、運動員の新型インフルエンザで事務所を一時閉鎖したという報道もある。第2波の襲来は案外早く、「人の集まる投票所へ行くのは止めましょう」、国会は新型インフルエンザで開けないことになるかもしれない。
いたずらに煽るつもりはない。だが「適正な危機感」は持っていなくてはならない。
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3796 政府の「新型インフルエンザ想定」 石岡荘十

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