3849 米国は「バナナ共和国」になるとの予言 宮崎正弘

天文学的借金は経済を、ドルを崩落させ、米国は「バナナ共和国」になる。世界一の投資家=ウォーレン・バフェットが恐るべき予言。
日本の国内を観察していると、近未来の備え、安全保障への感覚が希薄で、「政権交代」が選挙のイシューだと聞くと、絶望的になる。国際情勢といったい死活的関係があるのだろうか。
世界一の投資家として知られるバークシャー・ハザウェイ社会長のウォーレン・バフェットが予言した。「ドルは崩落が近く、新しい借金によって米国は“バナナ共和国”に転落するだろう」(NYタイムズ、8月19日)。
「輪転機を回しつづけてドルをまき散らす政策を米国は改めるべきだ。ドルの運命は議会が握っている」(米議会は赤字国債の上限を決める)。
バフェットは続けて言う。「ドルは下落する『かも知れない』ではなく、確実に下落するのだ」
1942-45年の第二次世界大戦をのぞき、米国が公的債務を積み上げてきたペースは穏やかだった。しかし昨今の債務残高増加ペースは1920年代からのそれより、二倍のペースで突き進んでいる。
とはいえドルの為替レートは複雑であり、経常収支のみならず金利、資金の流れ、政治、市場心理などがからみあって世界的規模で変動するものであり、80年代の日米貿易摩擦のおりも日本円の急上昇が続くと言われたが、90年には持ち直し、昨秋もドルの大暴落が言われ商品市場が急騰したが、ドルは持ち直し、いままたユーロに対しての急落はあっても、他の通貨に対してドルは安定的である。
ドルが急落したら第一に石油、ガス、金などが急騰するだろう。
第二に比較的に労賃が下落するアメリカで生産した方が安いとなれば、日本も韓国もいや中国企業さえも生産拠点をアメリカに移動するだろう。
インフレ懸念があれば、工場移転を差し控えるが、いまのアメリカにはインフレ再燃の可能性が低い。
いかにしてインフレを抑え、経済成長を持続させるかによって米国経済は軌道に乗ることが出来る。バナナ共和国になることはない、と多くの米国のエコノミストは自嘲気味に解説を続けているが・・・。
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米国の庇護下の発想では、これからの日本は生き残れない。この本には保守の覚醒を促す激越な憂国論に横れている。西尾幹二『権力の不在は国を滅ぼす』(ワック)
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いつものように辛辣な批評が並ぶが、今度の評論集はいくつか従来の西尾史観にはなかった特質を胚胎している。何編かは「WILL」や「正論」に書かれたものである。
第一に北朝鮮への経済制裁に関してのパラダイムが激越である。
すなわち経済制裁は「戦争行為」であって、北朝鮮も米国も、日本の経済制裁は『戦争』段階という認識だが、経済制裁を実施している日本はぽけっとして、或いはシレッとして、平和主義のままに埋没し、言葉だけが虚ろに戦争準備空間を飛び交っていると。
この見解は外務省、政府の認識と異なる。
すなわち「日本は既に北朝鮮に対して『宣戦布告』をしているに等しいのであり」(中略)「相手がノドンで報復してきても、なにも文句を言えない立場ではないか」とする危機意識。これを保守の政治家も分かっていないことに西尾氏は苛立つ。
日本はとうに「北の標的なのに他人事」なのだ。
そして保守が賞賛する安倍前総理はアメリカに取り込まれてしまったと容赦なく批判すると同時に皇室の危機を保守陣営に存在しなかった鋭利なツール(言葉)でばっさり斬る。穏健な保守主義を奉ずる人から見れば、温度差というよりやや違和感に囚われるだろう。
第二に保守思想の崩壊的予兆を西尾氏は淡々と述べるが「自民党は左翼政党に成り下がって」という議論ばかりか、すでに「文藝春秋も左翼雑誌に」になりさがり、いやいや、自衛隊が左翼グループに成り下がっているではないか、と状況パラダイムの分析はさらに先鋭化する。
明確に次代を予言して西尾氏はこういう。
「はっきり予言しておきますが、アメリカに庇護された平和主義の時代はいよいよ間もなく終わるのです。アメリカに義理立てする東京裁判史観――占領軍の統治に便利だった日本の指導者悪者論――とは本当に、確実に訣別し、戦前のアメリカと戦前の日本が再び対等に裸で向き合わざるを得ない時代が近く到来することがどうして分からないのでしょうか」(本書258p)。
なぜなら「金融と軍事の両面でアメリカに鎖で繋がれている日本はこのうえなく危ういというべきで」、「アメリカは沈没していく大型船です。日本は自ら鎖を断ち切ってうまく親船を離れる子舟になりうるか。それは離れようとして満身創痍の手傷を負い、どうにもうまく行かず、親船に繋留されたまま洋上をさまよい、海底奥深く引きずり込まれて行くのか」(153p)という分岐点に差しかかっていると現状を分析されている。
パラダイムは次のように変わると西尾氏は言う。
「戦争という手段を封じた現行憲法が今まで辛うじて有効だったのは、日米安保条約とワンセットになっていたから」。
だが、もはや時代状況は変わり「この条約は共産圏から日本を守る役割を失い、ゆっくりしたテンポで変質しつつあります。日米安保条約は今では国際社会での日本の行動の自由を拘束し、国内では、外交政策や経済構造や司法や歴史教育観などにおける日本の自律を侵害し続けている」(298p)とされる。
つまりこの先の日本には日米安保体制を克服するなにものかが必要、その気概がしかし、いまの政治家にはあるのか。
時局重大な日本であるにもかかわらず、戦後状況の延長と問題の先送り政治によって、国家中枢が犯されて、「権力の空洞化」という問題が濃密に浮かび上がる。本書を読むと暗澹たる思いがする。そして馬鹿の国民はつぎにとんでもない馬鹿を選ぶ選挙に熱狂している。日本はますまる劣化してゆくだろう。
 
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