投票日なったが、民主党と鳩山代表がこれから先に置かれるだろう立場が、今年1月に大統領に就任したオバマ大統領に限りなく似てきた。
アメリカではオバマ候補(当時)は”Change”を標榜し”Yes, we can.”と唱えて全米に風を巻き起こし、本命と見られていたヒラリー・クリントン候補(現国務長官)を蹴落とした。時の流れを恐ろしいと思わせてくれた。
さらにオバマ氏は無数の共和党支持者をして「彼はアメリカを必ずや変えてくれるものと期待する。だから生まれて初めて民主党候補に投じた」と言わせる強風を巻き起こして当選した。
だが、彼のキャンペーン期間中にアメリカ経済には100年に一度の猛烈な向かい風(head windという)が吹き荒れて、就任後の大統領はその対策に狂奔させられる結果となった。しかも、逆風は吹き止まず、彼は未だに”Change”に本格的に着手できる段階に到達していない。
ところで我が国はどうだろう。7月時点の悪材料をザッと拾ってみれば失業率=5.7%と史上最悪。有効求人倍率=0.42倍と3ヶ月連続で過去最低を更新。消費者物価=マイナス2.2%と初の2%台で、これは私が言い続けた
明かにデフレ傾向。
私はデフレがもたらす悪影響を指摘してきた。「物を安く売れば小売業でも製造業でも利益率は低下するし、売上高も縮小する。そこでコスト削減に努力する。
その先にあるものは人件費と人員のカットもある。原材料の仕入れ価格も引き下げねばならなくなる。納入業者はその要求に応ずる以外に選択肢がない。外注への発注量も減らすといった悪循環が続く」という具合。
その環境下に経済同友会のセミナーでは、我が国の代表的企業の首脳達が海外需要の獲得を目指して進出していくと表明。それでは上記3項目の何れに対しても何の対策にもならないのだ。
民主党はマニフェストとやらには「そうなってくれれば良い」と有権者に思わせるようなことが羅列されている」のだが、その耳当たり良いことを実現する前に、オバマ大統領がいきなり直面したような事態には、何をさておいても対応していかねばならないのである。
物皆値下がりする中で、生存をかけて懸命に努力している圧倒的多数の中小以下の製造業と加工業(マスコミ風な失礼な表現では町工場)は此処まで大メーカーを支えてきたが、現在では受注量が激減し資金調達もままならずこの上なく倒産の危機に苦しめられている。
我が国ではアメリカでGMを破綻させた後で公的資金を投じて救うような具合に、中小企業を救うことは出来ないだろう。だが、その対策は絶対に必要ではないか。民主党にその用意があるのか。
デフレ傾向を阻止しようと思えば、その対策として消費者の可処分所得を増やすために昇給させねばならない。だが、現時点で多くの経営者がそんなこと(=昇給)をするとは考えられない。安心して経営者がそうするための政策を民主党が用意できるのか。
経営者にデフレを阻止せよというだけでは何もならない。何分にも「100年に1度」の事態で誰も有効な対策を知らないのだから。しかしながら、今日の状態を招いた責任は自民党にありはしないか。民主党にどの業種から救済に着手するかが解っているのだろうか。
アメリカのように大手金融・証券・損保会社が相次いでChapter 11となれば解りやすいが、我が国ではじり貧の業種が多く、どれから手を付けるべきかの判定は難しい。だが、失業者は救わねばならないし、物価を何処で安定するかを決めねばなるまい。
我が国でも時の流れは勢いを増すばかりである。だが、政権交代だの、300議席だのと囃し立て、猟官運動などしている場合ではないのではないか。民主党には我が国がアメリカの後を追うことがないように、必死の努力をせねばならぬと自覚して貰いたいものである。
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