長い間、政治の世界を見続けてきて、本格的な政権交代に初めて遭遇した。
メディアの事前予測が出ていたから衝撃度は少なかったものの、民主300超が現実のものになるとは、この選挙戦がスタートした時点では想像もつかなかった。
まあ、小選挙区制を軸とした選挙制度だから、こういうことが起きるのも、あり得ない事態ではない。カナダなどで前例はある。
国民の審判なのだから、結果は厳粛に受け止めなくてはなるまい。とはいえ、民主党が勝った、というよりも、自民党が自滅的敗北を喫した、というイメージのほうが強い。
今回の結果は4年前の裏返しである。小泉氏が「郵政改革」の一点に焦点を絞り、自民党をぶっ壊すとやって圧勝したのは、いったいどういうことだったのか。その総検証を自民党は怠ってきた。そのツケが一気に噴き出した。
将来への漠たる不安が横溢する中で、民主党は「生活第一」を掲げ、「政権交代」の一点で大きな仕掛けに出た。ワンフレーズ・ポリティクスという点では、小泉氏と小沢氏の手法は同じだ。
小泉チルドレンと同様の小沢チルドレンが主役となった。勝てば官軍の世界であって、「小沢ガールズ」と揶揄されようと何だろうと、選挙をしのいでしまえば怖いものはない。政治家は選挙で負ければタダの人、とはよくいったものだ。
「鳩山政権」がスタートするわけだが、まだ現実感覚が出てこない。民主党のマニフェストは「ばらまき満載」のとんでもない代物だ。これを踏まえての政権運営がいかなるものになるのか、そこが見えてこない。
だが、そんなこともこれだけの圧勝となると、すべて吹き飛ばされてしまう。だいたいが、マニフェスト選挙という掛け声の一方で、有権者はマニフェストなどまったく抜きにした投票行動に出た。
鳩山氏の会見を聞いていて、国民のみなさまの「お暮らし」という表現に辟易とした。「お暮らし」である。なんでもかんでも「お」をつければいいというものではない。その「お」にポピュリズムがにじんでいる。
それにしても308議席である。中曽根政権時代に自民300というのに出くわして驚いた記憶があるが、これをさらに上回る。
そこで、民主党に対して心配するのもなんだが、巨大化したがゆえの「分裂圧力」が出てきはしないかと、そこが気になる。
これが一部メディアの予測したように320に達していたら、また違った展開になっていただろう。320は3分の2ラインだ。ここに達すると、衆院再可決が可能になる。
つまり、参院では単独過半数に至っていないことを気にする必要がなくなる。社民党に連立の誘いをしなくてもすむのだ。
鳩山氏は社民党、国民新党との連立政権をつくると言明した。党内には旧社会党グループを抱え、社民党との連立でスムーズな国会運営を目指す。
そこに、この政権のあやうさが浮かんでくる。日米安保体制をどう認識するかといったことから始まって、社民党は旧来型社会党と同じ体質だ。ここを気にしていたら、現実的な外交・安保政策など出てこようがない。
実質的に選挙戦を仕切った小沢氏は、またまた「神話」をつくってしまった。これで一段とパワーアップし、事実上の院政体制が確立することになる。
となると、党内の「反小沢グループ」がいつまでおとなしくしているか。これが自公と拮抗してかろうじて多数を制したぐらいの結果だったら、党内に結束力が強まるだろうが、これだけ膨張すると、存在感を誇示しようといろいろな動きも出かねない。
自民党は自民党で、これだけの大敗北を喫してしまえば、そういってはなんだが、「さばさばした」対応も可能になる。新総裁がだれになるのかはともかく、ある種の求心力が出てくるだろう。
しばらくは鳩山新政権への「ご祝儀感」が作用していくのだろうが、政治の世界、場面転換も早いのである。
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