3887 ロシア外務省が鳩山発言を評価 古沢襄

鳩山新政権についてロシア外務省は「肯定的に評価する」とのコメントを発表した。日ロ間の最大懸案である北方領土問題には、あえて触れていないが、タス通信によるとロシア下院のコサチョフ外交委員長は、鳩山氏の領土問題解決の意欲を認めながらも当面は「(鳩山氏は)保守的な日本の世論に手足を縛られる」と述べている。
このことは鳩山政権になってもロシア側から北方領土問題の解決に一歩踏み出す意思がないことを示している。祖父である鳩山一郎元首相は日ソ国交回復した立役者となったが、国境確定問題は先送りされた。
日ソ国交回復共同宣言では「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す」と記された。
しかし、平和条約の締結交渉は北方領土四島の全面返還を求める日本と、平和条約締結後の二島返還で決着させようとするソ連の妥協点が見出せないまま今日に至っている。
一時期には経済的に困窮しているソ連側が日本の経済援助欲しさに妥協してくるという読みがあった。日本の外務省の基本戦略は、北方諸島への援助を打ち切り、困窮させて返還の世論を引き出そうとする「北風政策」といわれた。
しかしプーチン大統領になって石油、天然ガスなど資源外交を展開してきたロシアは、経済復興が顕著となり「北風政策」が通用しなくなった。ここから日本側からは「二島先行返還論」やその変形である「2プラス2」方式が検討されてきた。鈴木宗男氏はこの考え方に立つ。
一方、鳩山代表は北方領土問題に積極的にかかわってきた形跡がない。だが祖父が果たせなかった日ソ平和条約(日ロ平和条約)の締結を自分の手でやりたいと思っているのは間違いない。
その方式は日ソ共同宣言で日本への返還が確認されている歯舞・色丹の二島を、ひとまず日本側に返還させ、残った択捉・国後の両島については、両国の継続協議とする「二島先行返還案」であろう。これを鈴木宗男氏は「段階的返還論」とよんでいる。
野党に回った自民党には北方四島の即時・全面返還を求める保守派の力が強いから、「二島先行返還」にしろ「段階的返還」にも徹底的に反対するであろう。ロシアも歯舞・色丹の二島返還で日ロ間の領土問題は決着させるつもりでいる。
<ロシア外務省は31日、民主党が圧勝した日本の衆院選の結果について、ロシアとの信頼関係強化の意思を示した同党の鳩山由紀夫代表の発言を「肯定的に評価する」とのコメントを発表した。日ロの最大の懸案である北方領土問題には触れていない。
コメントは、ロシアは近く発足する日本の新政権との間で「建設的関係を整えていく」とし、特に経済分野での協力強化に関心を示した。またアジア太平洋地域における協力と、地球規模の問題に関しても協力を拡大するとしている。
鳩山代表は31日未明の記者会見で、祖父である鳩山一郎元首相が日本とソ連の国交を回復した1956年の日ソ共同宣言に署名したことに触れ、日ロの信頼関係強化を早期に図り、北方領土問題の解決にも努力する考えを示していた。
タス通信によると、ロシア下院のコサチョフ外交委員長は同日、鳩山氏が示した領土問題解決の意欲について「すぐに実現することはない」と断言。「柔軟で日ロ関係にも精通しているが、最初の段階では保守的な日本の世論に手足を縛られる」と述べた。
ロシア紙コメルサントはタス通信のゴロブニン東京支局長の記事を掲載。民主党は領土問題で従来の日本の立場を変えず、ロシアとの広範な経済協力を唱えているとし、当面はこれまで通りの外交が維持されると分析した。(共同)>
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