3920 石破茂総裁待望論 古沢襄

読者数が一万人を越える杜父魚ブログだが、圧倒的多数が自民党の後継総裁に石破茂氏を推している。4000本に近い記事の読者傾向をみると「自民党の後継総裁は石破茂氏が望ましい」という私の記事が二位、よく読まれている。自民党の若手議員は、政権交代選挙で落選の憂き目をみたので、総裁選挙の投票権がないが、石破茂氏の総裁待望論が出ている。
橋本元首相の次男で前衆議院議員だった橋本岳氏は自分のブログで長文の「石破茂総裁待望論」を書いている。平成研究会には次の派閥代表に額賀福志郎氏を推す空気があるが、若手議員はむしろ石破茂氏に衆望が集まっている。他派にも石破茂氏の総裁待望論がある。
自民党は長老議員が総裁を決める時代が去った。八日の自民党両院議員総会では石破茂擁立論が出るのではないか。菅選挙対策副委員長も石破茂擁立論。党総裁の若返りに懸念を示す空気もあるが、歴史的敗北を喫した自民党は石破・菅コンビで危機を乗り切るしかない。選択肢は限られている。
橋本岳氏の石破茂総裁待望論。
<今回の選挙を振り返る上で、橋本個人としての反省点や改善点は当然山のようにある。まずは自分の活動を考え直すことが第一。選挙の敗戦の責任を誰か別の人や事象の負わせてはならない。それは当然だ。ただ、今後を考える上で、やはり引き続き自民党という看板を背負って活動する以上、これからの自民党に対して発言したいこともある。僕は今現在ただの一党員という立場でしかないから、むしろ率直にものが書ける。思うところの一端を記す。
◎僕なりに自民党を総括する
自民党は有権者の信頼を失い、歴史的大敗を喫した。しかも参議院選挙からの流れを止めることができなかった。社会保障費の削減による体制崩壊や長寿医療保険制度、さまざまな不用意な発言など、原因を挙げればキリがない。しかし代表的な理由を三つ挙げるとすると、以下の三つだと考える。
1.年金記録問題 ― 行政無謬神話の決定的毀損と、政治の危機管理の失敗
2.繰り返す総理・総裁の辞任 ― 党内不一致の露呈
3.鳩山邦夫大臣辞任 ― 国民意識との乖離
平たく言えば、部下の間違い(というか犯罪)は多くそのフォローも下手、しばしば中でごたついてトップが変わるし、何よりも国民の想いを汲まない、ということ。もちろん自民党内の立場に立てば言い分はあるし、経済対策・景気回復や安全保障など力を尽くした分野もある。しかし外から見てこう見えるのであれば、信頼は失うべくして失われたと言わねばなるまい。当時、中に居た一人としては申し訳ないとしかいいようがない。
◎根本は「総裁選に対する意識の低さ」
これらを招いた根本には、党および内閣のリーダーたる自民党総裁の選び方、および選ぶ際の意識に問題があったのではないかと思えてならない。僕は在職中に三回の自民党総裁選を経験したが、果たしてその時々に必要なリーダーを選べていたか?結果から言えば、そうではなかったと考えざるを得ない。人を得ていれば、年金記録問題はあそこまで問題が拡大しなかったかもしれないし、もっと長期に総理・総裁ができたかもしれないし、国民意識を踏まえた意思決定ができたかもしれないと思ってしまうのだ。
ただし総裁選の結果、総理・総裁を務められた安倍、福田、麻生の各氏や、その方々を支えた選対メンバーの方を責めたいわけではない。どの総裁選を見ても、当選された方はそれにふさわしい選挙戦を実行しておられた。僕が指摘したいのは、いずれも圧勝した当選者に投票した議員に「寄らば大樹の陰」とか「付和雷同」といった意識があったのではないか?ということだ。
自民党がごたごたしているように見えた原因の一つは、何か起こるたびに「若手有志の申し入れ」とか「署名活動」とかが発生することだ。僕は任期後半はほとんど関わらないようになった。なぜか。「若手の声を聞け!」というのなら、まず若手代表を総裁選に擁立して活動するのがそもそものスジだからだ。麻生総理誕生の総裁選の際、山本一太議員と棚橋泰文議員が「若手代表」として立候補を検討されたが、いずれも実らなかった。それは若手の実力の無さとみるべきだし、であれば声を聞いてもらえなくてもやむを得ない、ということになる。
僕は、安倍総理が当選された総裁選では谷垣禎一候補を応援した。3人の演説を聞き、消費税のアップを含めて最も真摯に語っておられたからだ。福田総理が当選された総裁選では、福田康夫候補に投票した。これはちょっとしたいきさつの末派閥の決定に従ったという理由であるが、そもそもこの回は候補者が少なすぎた。麻生総理が誕生した総裁選では、石破茂候補の選対に入って選挙する側に回った。結果は自民党総裁選の非情な厳しさを肌で感じるものだったが、後悔はない。
派閥による立候補前の調整も、総裁選を無意味なものにする一因だ。この最たるものは福田・麻生の二人しか立候補者がなかった二回目の総裁選だし、一回目に福田康夫氏が立候補していても歴史は異なったかもしれない。総裁選のたびに「○○派は△△氏で一本化」「□□派は分裂状態」といったニュースが流れるたびに、自民党への信頼は着実に減っていったのではないか。小選挙区制になった今、少なくとも衆議院では総裁選の母体としての派閥というのは既にフィクションなのだが、未だに残っているような思いがある人もいる。そろそろ目を覚まそう。
いずれにせよ、自民党総裁選は自民党員にとってリーダーを決める最も重要な選挙。そこに、主体性を持って参加した人がどのくらいいたのか?「人気がある人を総裁に」という実に安易かつ他人依存な意思決定をした人はどのくらいいるのか?各回とも下馬評通りに優勢な候補者が圧倒的な得票し当選する様子を目の当たりにしては、これらの疑問を払拭することはできない。リーダーを決める選挙が他人事として扱われれれば、組織はいずれ立ち行かなくなるに決まっている。その結果がいろいろな形で噴出し、今回の政権交代に繋がったのではないか。僕にはそう思えてならないのだ。
なお、結局麻生太郎氏に一度も投票したことがないが、決して他意はない。麻生さんは実にチャーミングな方だ。しばしば気にかけていただき、とてもお世話にもなった。ただ個人的には、外相を務められていた時が一番輝いておられたように思う。
◎これから自民党を支える議員の皆さんへ
僕も党員ではあるが、議員の時のようには党運営にコミットできない。総裁選については立候補はもちろん、推薦人にもなれないし投票もできない(一党員としてできるかもしれないが)。今回当選された方々に託すのみだ。ぜひ以下をご考慮願いたい。
○総裁選の議論について
挨拶回りなどをしていて選挙後の自民党の不評な点の一つは「まだ民主党のマニフェストの批判をしている」ことだ。確かに批判はいくらでも出来るし、選挙中も散々行ったが、それでも選挙の結果有権者は民主党のマニフェストを支持したのだ。その点は正しく受け止めなければならない。当面は民主党マニフェストは「絶対」なのだ。
むしろ自民党総裁選では「自民党の基本理念とは何か」「何故敗れたのか」「どうやって建て直すのか」を改めて議論してほしい。そして誰が当選しても、新総裁を中心に改めて選挙の総括をしてほしい。なお、総裁選より前に選挙の総括をすべき、という議論がある由耳にしたが、新総裁がやらないとあまり意味がないと思う。
○総裁選の方法について
これまで、自民党総裁選は、総理大臣の選挙と同じ意味だった。だからこそ、時間をかけて各地で遊説して回って多くの国民の皆さまへのお訴えもした。しかし今回は野党党首を選ぶだけだ。前回民主党の総裁選は一週間程度ではなかったか。これまでの規定をたてに、時間をかけて総裁選を行うのはナンセンス。緊急時なんだから緊急対応するべき。もしどうしても規定にこだわるなら、総裁選挙ではなく暫定総裁の選挙と位置づけてしまえばよい。
例えば派閥等の妙な活動を未然に防ぐために、有権者(国会議員+県連代表)を一か所に集めて演説会を行い、その直後に投票して決めてしまってはどうか。いちいち他人の指図を仰いだり、他人と相談しなければ投票できないのでは自民党国会議員の名がすたる。個人で真剣に考えて責任を持って投票するような方法を行ってほしい。これだったら一日でできるので、首班指名にも十分間に合う。貧乏な自民党の経費節減にもなる。一石五鳥くらいのアイディアだと思うのだが。
○次の総裁には石破茂さんが相応しい
次の総裁を「人気」で選んではならない。過ちは繰り返してはならない。今自民党は国民の信頼を失った。そこから再び信頼を勝ち取る能力がある人が、次の総裁であるべきだ。当選された議員の中で適任者は、石破茂農水相しかいないと思う。
石破さんは、護衛艦「あたご」衝突事故の際の責任者として被害者遺族の方々に対し、極めて真摯に対応された。その結果、自民党総裁選の時にはその漁協の方から海の幸を送っていただきご激励をいただくまでとなった。もちろん事故は起こしてはならないのだが、事故を起こした後、見事に信頼を回復し勝ち取る能力(向き合う力、お詫びする力、粘り強く説明する力、等)があることは証明済みなのだ。これまでの自民党に欠けていたのは、上記の力ではないのか?もちろん政策能力も抜群なのは衆目の一致するところ。とくに新連立政権の弱点である外交・安保が専門なのは心強い。堂々と論破していただきたい。
もちろん、ハデな人気があるわけではない。容姿も端麗とはいささか言い難い。でも、足らざるは皆で支えて補えばよい。そういう姿勢で投票し、支えてほしい。
◎むすび
以上、ほぼ四年間の議員経験を踏まえ、そして日本における二大政党制時代における自民党の必要性と役割の重さに想いを致し、僕なりの自民党愛をもって、将来に向けて思うところを記した。元気を出せ日本!とは父・橋本龍太郎のセリフだが、あえて今は言う。「元気を出せ自民党!」と。>
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