労働組合と八年間も交渉したが、そこで役に立ったのは政治部時代に三年間、社会党左派の人たちと付き合った経験であった。とくに左派の書記とは仲良くなった。深入りして書記の家を泊まり歩き、一週間も家に帰らなかったことがある。
野党には野党の論理がある。労働組合には労働組合の戦術的な思考がある。政府や与党とは違う世界だったので、知らず知らずのうちに深入りしてしまった。社会党というのは、議員集団よりも書記集団の方が力を持っている。
今の社民党は昔の社会党とは違うので、書記集団の力が弱いのかもしれない。しかし行動原理は社会党そのものを受け継いでいる。福島瑞穂さんが巨大化した民主党と渡り合っている様は、社会党の時代を彷彿とさせる。
度重なる政策協議の中で、話し合いがつかない時には、どこまで突っ張るか、協議が不調に終わる度に戦術論議を闘わせているに違いない。このような場合には、どうしても強硬論に引っ張られる。ギリギリまで粘ろうということになる。
だが、社会党は突っ張り過ぎて、元も子もなくした経験を重ねた。左派の闘将だった山本幸一氏とはとくに親しくなったが、素顔の山本氏は妥協の名手だった。突っ張りながら、落としどころをいつも考えている。「力以上の欲をかくと元も子も失う」と言ってニヤリと笑った。
今の社民党は、どこまで突っ張ることが出来るか、間合いを計る時期にきている。福島瑞穂さんもそれを考えているに違いない。タッグマッチを組む亀井静香さんも、そろそろ潮時だという動きに出ている。連立協議を壊すつもりはサラサラない。
しかし突っ張って急上昇した勢いを着地するのは、かなりのエネルギーが必要になる。左派がいう「運動理論」なのだが、一定のカーブを描いて着地させないと組織が持たない。その局面が迫ったとみている。
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3936 着地のための運動理論 古沢襄

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