3967 メルケル首相が目指す中道右派路線 古沢襄

ドイツの総選挙(9月27日投開票)の情報が少ない。ベルリンから特派員電もあるが、国内政治の記事に押され気味。だがドイツの政治状況は日本と似ている。その意識でドイツの政局を見詰めると、これからの日本の政治状況が推し量れる。
たとえば米国の大統領選挙だと日本は一緒になって騒ぎ立てる。共和党と民主党の二大政党制度が日本の政治改革のモデルだと言われた。それは少し違うのではないか。強いて日本政治に近いモデルを言うなら、ヨーロッパの中道右派政党と中道左派政党の関係だと私は言い続けてきた。
米国には共産党が存在しない。労働組合があるが経済的要求に終始している。日本には歴とした共産党が存在するし、社会党は消滅したが形を変えて命脈を保っている。日本人の政治意識の少なくとも三分の一は中道左派的だと私はみている。
おそらく民主党は中道左派政権に近づくのであろう。党内に旧社会党グループや市民運動家をかかえ、社民党との連立を深めれば、ドイツの社会民主党、英国の労働党に近い政党になる。政策面でも中道左派路線が色濃くなる。
これに対して自民党の性格ははっきりしない。安倍内閣の成立に当たって、中川幹事長は「左にウイングを広げる」と言った。ところが安倍首相を支えたグループには新保守主義、つまりは右傾化路線を唱える人たちが多かった。本筋は左にウイングを広げることでもなければ、新保守主義でもない。中道保守路線の堅持にあったのではないか。
9月27日に投開票を迎えるドイツはメルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟が第一党になると世論調査では伝えている。メルケル首相の人気は相変わらず高いのだが、政党の支持率は4割に届かないという弱点もかかえている。したがってメルケル首相が目指す中道右派政権の樹立は、総選挙のフタを開けるまで分からない。
総選挙の前哨戦となった8月30日の三州議会選挙では、メルケル首相率いる保守・キリスト教民主同盟が、ザールラント、チューリンゲン二州で大幅に得票を減らしている。そうなると相変わらず中道左派の社会民主党との連立維持が避けられないかもしれない。この構図は日本の民主党と類似している。
だが理念が異なる政党の大連立は、景気回復や雇用創出で必ずしも成功していない。その認識の上に立ってメルケル首相は中道右派政権の樹立を目指している。これが成功するか、どうかは、自民党の再生にとって参考になる。
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