新防衛相になった民主党参院議員の北沢俊美氏の人事は異色といえる。防衛省内には衝撃が走った。北沢氏の公式ホームページでは「多国籍軍への派兵は、反対! 」と題して、次の主張をしている。
<今のままでは、イラクに平和は訪れません!!
小泉首相は、国会での議論も国民への説明も無いまま、イラク多国籍軍への参加を決めました。憲法を捻じ曲げ、イラク特措法にも違反する暴挙です。民主主義を武力で押し付けるブッシュ政権に黙って付き従うだけの小泉外交は、世界の国々から共感を得ることはできず、極めて危険です。
戦闘が終息しないまま、米軍が指揮する多国籍軍になし崩し的に自衛隊を参加させてはいけません。イラクの自衛隊を一日も早く撤退させるべきです。>
この論点からすれば、インド洋に派遣している海上自衛艦、ソマリヤ沖の船舶護衛に当たる海上自衛艦の撤収を見据えた鳩山人事といえなくもない。
北沢氏は2007年9月、参議院外交防衛委員長に就任した。
「テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案」の審議に際しては、田母神俊雄前防衛省航空幕僚長を参考人として喚問し、参考人質疑に当たって次の様に発言した。
「この際、田母神参考人に一言申しあげます。現在、本委員会ではいわゆる補給支援特措法改正案を審議しておりますが、今般、参考人の論文をめぐる問題を機にわが国の文民統制に対する国民の懸念が高まり、そのあり方が問われる事態となっております」
「本日、参考人に出席を求めた趣旨は、国民の代表機関たる国会の場において政府に対し、この問題をただす一環として招致したものであり、決して本委員会は、参考人の個人的見解を表明する場ではありません。参考人におかれてはこの点を十分に理解し、質疑に対し、簡潔にご答弁をいただきますようようお願いをいたします」
「さらに本日の委員会の質疑にあたって、質疑者ならびに答弁者に対し、委員長から一言お願いをいたします。今回の前航空幕僚長の論文事案は、制服組のトップが自衛隊の最高指揮監督権を有する内閣総理大臣の方針に反したことを公表するという驚愕(きょうがく)の事案であり、政府防衛省において、文民統制が機能していない証であります。このような中で国民が文民統制の最後の砦(とりで)として期待するのは国会であります」
「昭和の時代に文民統制が機能しなかった結果、三百数十万人の尊い人命が失われ、また、国家が存亡の淵に立たされたことは、忘れてならない過去の過ちであります。国家が存亡の淵に立った最初の一歩は、政府の方針に従わない、軍人の出現と、その軍人を統制できなかった政府議会の弱体化でありました。こうした歴史を振り返りつつ、現在の成熟した民主主義社会の下において、国民の負託を受けた国会がその使命を自覚し、もって後世の歴史の検証に耐えうる質疑をお願いする次第であります。それでは質疑のある方は順次、ご発言をお願いします」
これについて毎日新聞は次の様に報じている。
<参院外交防衛委員会は11日、政府の歴史認識に反する懸賞論文を公表し更迭された田母神俊雄・前航空幕僚長(60)に対し、参考人質疑を行った。田母神氏は同じ論文に航空自衛官94人が応募した問題に関し「(全国の部隊に募集要領をファクスした)空幕教育課長にこういうものがあると紹介はした」と述べた。一方で「私が指示したら(隊員の)応募は1000を超えていたはずだ」と述べ、直接の指示は否定した。
また自身の論文について「村山談話は具体的にどこが侵略とは書いていない。論文とは別物だ」と述べ、政府見解に反していないと主張。さらに「私が書いたものはいささかも間違っていない」と改めて持論を展開した。論文は憲法が禁じる集団的自衛権の行使に言及しているが、田母神氏は「一般的な状況を書いた」とする一方、「今は改憲すべきだと思っている。国を守ることについてこれほど意見が割れるようなことは直すべきだ」と主張した。
論文を募集したマンション・ホテルを全国展開する総合都市開発「アパグループ」との関係については、田母神氏は「車代を含めて資金提供は一切受けていない」と語った。
野党側は「田母神氏になぜ懲戒処分の手続きをしなかったのか」と追及。浜田靖一防衛相は「田母神氏が徹底抗戦すれば処分に時間がかかる。隊員の士気が落ちる事態は避けたかった」と述べ、騒動の収拾を優先した点を説明した。
田母神氏は昨年5月、空自の部内誌「鵬友」に今回と同趣旨の論文を寄稿している。この問題について、浜田防衛相は「チェックしていなかったのは問題だった」と不手際を認めた。
この日は通常の参考人招致と異なり、田母神氏が委員の質問だけに答える形式を取った。田母神氏が持論を一方的に披露することを警戒したためで、会議の冒頭、北沢俊美委員長(民主)が「委員会は論文問題をただす場。個人的見解を表明する場ではない」と田母神氏にくぎを刺す場面もあった。
問題の論文は10月31日に公表された。「日本が侵略国家というのはぬれぎぬ」などと主張し、過去の侵略戦争を謝罪した政府の「村山談話」(95年)と真っ向から対立する内容。浜田防衛相は田母神氏を空幕長から更迭し、今月3日に定年退職させた。(毎日)>
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081111-00000005-maip-pol
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3979 北沢俊美防衛相で省内に衝撃 古沢襄

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