3992 来年の”夏の陣”が、民主党の命運を握る 古沢襄

小選挙区制度は民意が極端に振れてしまう欠陥を内在している。それでもなお制度の利点があるとすれば、政権交代を容易にして、古き秩序を破壊し、新しい秩序を模索する「新旧交代」の実験が出来ることである。長期にわたった自民党政権でも、この新旧交代は行われてきた。タカ派的政権からハト派的政権への”擬似政権交代”が同一権力構造の中で繰り返されている。
古くは岸政権から池田政権への政権交代があった。また市場原理主義に拠った小泉政権は、靖国参拝に具現されたタカ派的な政権であったろう。安倍政権はさらに新保守主義の色が濃いタカ派政権だったことは論を待たない。二代にわたったタカ派色に自民党内でハト派の反作用が起こっている。リベラル色が濃い福田政権の誕生である。
しかし福田政権がハト派政権と規定するのには疑問がある。二代にわたったタカ派政権は、小泉郵政選挙の圧勝という小選挙区制度の結果を生んで、福田政権の”擬似政権交代”の色を薄め、さらに誕生した麻生政権は市場原理主義からの離脱を掲げながらも、極めて曖昧な政権になった。小選挙区制度の下で極端に現れる民意は、その後の政権を縛ることになる。
その間に市場原理主義による”負”の面が中央と地方の格差、国民所得の拡大した格差で現れて、”擬似政権交代”では、国民の中に鬱積した不満を吸収できない状態になった。総選挙で民主党が圧勝したのは、ひとつの”必然”だったといえる。自民党の支持者の中から民主党を支持する一種の反乱を招いている。
だが民主党が圧勝した結果は、民主党そのものを縛ることになろう。民意は小泉政権で生じた市場原理主義による格差の是正を求めている。格差の是正はより公平な分配を求め、それは公権力による底辺に対する手厚い分配になる。民主党は内政にウエートを置いた”内向け政権”にならざるを得ない。小さな政府よりも大きな政府の方向に行かざるを得ない。
日本が高度経済成長期にあれば、分配にウエートを置いた政策目標が達成できる。しかし景気回復の先行き不透明な中で、経済活動が収縮傾向にある時に、分配の財源をどこに求めるか、民主党は政権与党として困難な課題を背負っている。
突き詰めれば、いずれは国債の増発や消費税の増税に財源を求めるしかない。内政にウエートを置いた”内向け政権”だから、外交・安全保障という”外向け”政策は曖昧にならざるを得ない。このハンドリングは極めて難しい。
鳩山政権は社民党と国民新党との連立を組んだ。分配原則の徹底化を唱える社民党は国債の増発や消費税の増税に反対を貫くであろう。それは国民に新たな負担を求めるからである。外交・安全保障政策でも対米従属からの離脱を求めている。それは民主党の政策と微妙な違いがある。
社民党からすれば、来年の参院選で民主党が過半数を割ったまま、社民党が勢力を伸ばすことが望ましい。まさに同床異夢といえる。そして、その可能性が十分にある。同床異夢の政権が続けば、民意がまた動く可能性が出てくる。
小沢幹事長が次の参院選を最大の政治課題だと思いを定めているのは、このことを認識しているからだろう。まさに来年の”夏の陣”こそが、民主党の命運を握っている。
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