鳩山新内閣の顔ぶれは公平にみて期待半ばと不安半ばということになる。仙谷行政刷新相は出色の人事だったろう。これまでの仙谷由人氏のイメージは社会党出身、反小沢の急先鋒、しかし党内若手の信望が厚く、面倒見の良い政治家という印象が強かった。
行政刷新相としての仕事は緒についたばかりだが、バランス感覚に優れ、若手官僚を起用する意向もみせている。単純な”官僚叩き”ではない。いずれ鳩山内閣の目玉閣僚として注目を浴びるのではないか。
内閣の大番頭になった平野官房長官も悪くない。鳩山側近ということだけが喧伝されたが、小沢幹事長ら党と内閣のつなぎ役としては、この人がうってつけではないか。地味ながら官房長官としての記者会見も無難にこなしている。
私とほぼ同年の藤井財務相は人事が決まるまで、すったもんだの局面があったが、財務省を預かるベテラン政治家としては、この人を置いて他はいない。高齢なので国会の長期審議に耐えられるかという不安がないわけではないが、そこは豊富な経験で乗り切るだろう。野田副大臣とのコンビも期待できる。
地味ながら直嶋経済産業相もバランス感覚に優れている。麻生前内閣の2009年度補正予算で始まったエコポイント制度を景気回復の視点から続行すると早々と打ち出している。制度を続けながら、その効果を見極める考えで、小沢環境相も「今の景気動向では一定の役割を果たしている。景気の回復が山を越えるまでは継続すべき制度だと思っている」という。
自民党政治で打ち出された政策の破壊から始めて、民主党政治の政策実施を性急に急ぐことよりは、国民に視点を合わせた政策展開が必要であろう。官僚叩きに狂奔するよりは、政治家主導で官僚を使いこなすのが正道である。
総じて新内閣の顔ぶれは急がず着実に民主党らしい政策の構築を目指しているので期待できる。
だが、どうにも理解し難い人事も散見される。脱官僚を目指すなら、トップに座る大臣は、その職務に通暁している人物が求められる。まったくの素人大臣では、官僚は面従腹背になるだろう。今の民主党では外交・安全保障政策の第一人者は前原元代表の右に出る政治家はいない。
前原防衛相がうってつけの起用だったのではないか。米国にも人脈がある前原氏なら難航が予想される日米交渉でも押したり引いたりが出来る。それが場違いの前原国交相に起用して、八ツ場ダムの中止交渉に当たらせている。
場違いの上塗りは北沢防衛相であろう。五期にわたる県会議員から参院議員になっているが、外交・安全保障政策に通暁しているとはいえない。参議院外交防衛委員長の経験者というだけの起用ならお粗末としか言いようがない。
亀井金融担当相も場違い人事。国民新党の目玉政策である小泉郵政改革の見直しで郵政担当相に起用したのは、それなりの理由があろう。だが、鳩山首相が郵政担当相だけでは軽いポストと批判されるのを怖れたのか、付けたりに金融担当相にも任命している。
金融担当相はサジ加減ひとつで市場に大きな影響を与える。その懸念は早くも現れ、東京市場で金融株が下落した。海外からも英ロイター通信が亀井批判の記事を書いて、欧米に伝わった。
やはり新内閣の布陣は功罪半ばすると言っていい。
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4007 功罪半ばする鳩山内閣の布陣 古沢襄
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