国連安全保障理事会は、史上初めて米大統領自ら議長を務めた首脳級会合で、核不拡散体制の徹底と同時に、核軍縮と原子力の平和利用を推進し、将来的には核兵器廃絶を実現しようという歴史的決議を採択した。
オバマ米大統領は「核兵器なき世界」実現という理想主義の旗を掲げる一方で、「イランと北朝鮮だけではない」としながらも両国を名指しした上で、国連の全加盟国が核軍縮の責務を負うと念を押した。さらに核兵器開発国家やテロリストへの核関連物資・技術の流出に対しては、断固たる態度を示している。
<【ニューヨーク共同】国連安全保障理事会は24日、核軍縮・不拡散をテーマにした初の首脳級会合を開いた。米国が提出した「核兵器のない世界」に向けた取り組みをうたった決議案を全会一致で採択し、米大統領として初めて安保理議長を務めたオバマ氏の理念を、核保有国である5常任理事国を含む各国が共有する形となった。
非常任理事国の日本も鳩山由紀夫首相が出席し、演説する。
決議は冒頭で「より安全な世界の希求と、核兵器のない世界に向けた条件の構築」を決意。核拡散防止条約(NPT)を「核不拡散体制の礎石であり続ける」と位置付け、すべての国にNPT加盟を呼び掛けるとともに、NPTが定める5核保有国による核軍縮交渉促進の必要性を訴えている。(共同)>
<【ニューヨーク共同】「核兵器なき世界」を目指す国連安全保障理事会の決議の要旨は次の通り。
【前文】
一、安保理は核拡散防止条約(NPT)の目的に沿い、国際社会の安定を促進、より安全な世界を希求し、核兵器なき世界に向けた条件構築を決意。
一、NPTは核不拡散体制の礎石で、核軍縮や原子力エネルギーの平和利用の重要な基礎と強調。
一、核保有国の核軍縮の努力を歓迎。第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わる新条約に向けた米ロの交渉開始決定も歓迎。
一、非核兵器地帯条約の締結に向けた措置を歓迎、支持。非核地帯の設立は核不拡散体制強化に貢献すると確認。
一、(北朝鮮に核開発停止などを求める)安保理決議825(1993年)、1695(2006年)、1718(06年)、1874(09年)を再確認。
一、(イランに核開発停止などを求める)安保理決議1696(06年)、1737(06年)、1747(07年)、1803(08年)、1835(08年)を再確認。
一、核テロの脅威に深刻な懸念を表明、核物質・技術がテロリストに渡るのを防ぐ効果的な措置の必要性を認識。
一、国際原子力機関(IAEA)との調整による、原子力エネルギーの平和利用に関する国際会議の開催に関心を表明。
【本文】
一、NPT加盟国に条約で定めた義務を完全に履行するよう要請。
一、NPTに加盟していないすべての国に非核保有国として加盟するよう要請。
一、NPT加盟国に核軍縮に関する効果的な措置についての交渉を開始し、核軍縮を行うことを要請。
一、NPT加盟国に10年のNPT再検討会議の成功に向け協力することを要請。
一、すべての国に核実験を実施せず、包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名、批准と、同条約の早期発効を促す。
一、ジュネーブ軍縮会議に兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約の早期交渉開始を要請。
一、核不拡散体制に対する現下の重大な挑戦に特別な懸念を表明、関係国に安保理決議で定めた義務の履行を要求。
一、NPTが平和目的のための原子力エネルギーの研究、利用などを加盟国の奪うことのできない権利として認めていることを強調。
一、多国間の核燃料サイクル実現に向けたIAEAの一連の取り組みを核拡散防止の観点などから促進。
一、IAEAの保障措置(査察)協定が核拡散防止にとり重要だと確認。すべての国に同協定と追加議定書の署名、批准、履行を要請。
一、加盟国に核テロの危険を減らすために核セキュリティーの基準を4年以内に引き上げるよう要請。(共同)>
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4033 「核兵器なき世界」の歴史的決議 古沢襄

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