病気のために、たったの63日の総理大臣で終わった石橋湛山氏だったが、これほど人気のあった政治家はいないのではないか。普通なら総理大臣の座を退けば誰も来なくなる。湛山は違っていた。旧制中学は五年制だったが、甲府中学(現在の甲府一高)を卒業するのに七年もかかっている。落第することを気にしなかったというから、人並み外れた神経の持ち主。凡人と違う魅力がある。
吉田茂氏に見込まれ、第一次吉田内閣の蔵相になった。爾来、吉田政権下で財政・経済の舵取り役を務めている。ケインズ経済学の権威として知られたが、石橋経済の特徴はインフレ経済論にあるともいわれている。高度経済成長政策を推進した池田勇人首相は、湛山氏の愛弟子といわれた。
湛山氏が健在なら、今の経済状況はデフレが深刻化する危機的状況だと言うだろう。
八月の全国消費者物価指数は2・4の低下と4カ月連続で過去最大の下落率を更新した。物価が下落するのだら、消費者にとって朗報などと暢気なことを言っておれない。デフレが深刻化すれば、消費者は先行きの値下げを待って買い物を手控える。それが価格競争にさらされる企業の業績を直撃して、倒産が続発、失業者が街に溢れる。過ぎたるは及ばざるがごとしである。
湛山氏は「インフレを歓迎する者はいない。だが、失業者を出すか、インフレをとるかとなると、インフレをとる」と明言している。だから石橋湛山はインフレ論者と言われても、まったく意に介しなかった。英ロイター通信の日本経済を分析した記事を読みながら、湛山氏のことを思い出している。
福田赳夫流の安定経済・縮小経済理論は、そろそろ拡大再生産の経済理論に切り換える必要があるのではないか。鳩山内閣に平成の湛山がいるのだろうか。
<[東京 29日 ロイター] 総務省が29日発表した8月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、コアCPI、2005年=100.0)は前年比2.4%低下の100.1となり、4カ月連続で過去最大の下落率を更新した。
昨夏にかけたエネルギー高の反動のほか、国内需要の弱さが物価を一段と押し下げた。ただし、今秋からエネルギー要因がはく落していくため、前年比での下落率は次第に縮小していくとみられている。
ロイターがまとめた民間調査機関の予測中央値は前年比2.4%低下で、発表された数字は予想通りだった。全国の総合指数は前年比2.2%低下。食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合指数は前年比0.9%低下した。
8月全国分をみると、生鮮食品を除く食料、光熱・水道、交通・通信の下落が目立った。ガソリンが前年比31.4%低下、灯油が前年比44.9%低下と前月から低下幅が拡大するなど、エネルギー関連での物価下落が目立ったほか、電気冷蔵庫といった家庭用耐久財も下落するなど、国内需要の弱さも示す結果となった。
同時に発表された9月の東京都区部コアCPI(2005年=100.0)は前年比2.1%低下の99.7となり、3カ月連続で過去最大の下落率を更新した。予測中央値は前年比2.0%低下だった。東京都区部の総合指数は前年比2.0%の低下。食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合指数は前年比1.4%の低下だった。
9月東京分の内訳をみると、ガソリンは前年比24.5%低下(前月30.4%低下)と低下幅が縮小しており、昨夏にかけたエネルギー高の反動による物価下押し圧力が、はく落し始めていることを示す内容となった。
先行きについては、物価下落幅は次第に縮小していく見通し。エコノミストからは「全国コアCPIは昨年7─8月にピークをつけ、9月もこれに並ぶ高い伸びであったため、その裏の効果で9月は前年比マイナス2.3%前後となる見込み。10月以降は前年の裏の要因がはく落し、年内にマイナス1%近傍までマイナス幅が縮小する公算」(大和総研シニアエコノミスト・熊谷亮丸氏)との見通しが示されていた。
全国コアCPIはガソリンのウエートが東京都区部に比べて大きいため、原油動向をより反映しやすく、昨年7・8月にそれぞれ前年比2.4%上昇と直近のピークをつけ、昨年9月は2.3%上昇と若干上昇率は縮小した。東京都区部コアCPIは、昨年9月の1.7%上昇が直近のピークだった。(ロイター)>
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4052 デフレ危機に直面する物価下落 古沢襄
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