4092 中川昭一氏の死因は? 石岡荘十

中川昭一元財務・金融相が10月4日午前、東京都世田谷区の自宅寝室ベッドで死亡しているのが見つかった。死亡時刻は3日の23時前後と見られるが、目立った外傷はなく、事件性は低いと見られる。現在のところ遺書なども見つかっていないという。
マスコミは政界の反応を大々的に伝えているが、ここでは死因を中心にこれまでの情報を整理しておく。<行政解剖の結果、(心臓に栄養を補給する)冠動脈に1・2ヶ所細くなっているところがあった>という。
つまり狭心症気味だった。しかし<これが死因とは結びつかない。このため警視庁があす(10/6)以降、病理検査を行って死因を解明する>とNHKの10/5夜のニュースが伝えた。
「病理検査」というのは肉眼で見ただけでは分からない臓器、組織、細胞レベルの異常を顕微鏡で調べる検査のことだ。
東京都医務監察院が1000人以上の突然死した人の死因を調べた結果では、その89%が心臓・血管系に起因しているという報告がある。その「突然死」というのは、胸が突然苦しくなるなどの症状が発症して数分以内に死に至ることを言う(厚労省研究班)。
その70~80%が心室細動と呼ばれる最悪の不整脈が原因だ。強度のストレスに遭遇すると心室細動を発症することは分かっているのだが、病理学的にはまだ完璧には解明されていない。
またアルコールはしばしば不整脈発症の引き金を引く。それやこれや、中川氏が置かれた大臣辞任、落選という政治的な環境を考えると「強いストレス」に加えてアルコール、それに睡眠薬を服用するような状況ではなかったかということが容易に想像される。       
心臓には筋肉でできた4つの部屋がある。2階建てで上の2つが左右の心房、その下に左右の心室がある。このうち、体内に血液を送り出す最後の、もっとも心臓らしい仕事をするポンプが左の心室(左心室)だ。ここがストレスや飲酒によって異常行動を起こす。
心室細動である。突然、ぶるぶると細かく振動を始める。こうなると最早、全身に血液を送り出すことが出来なくなる。この左心室の異常振動を止めるためには電気ショックしかないとされていて、今普及し始めているAED(体外除細動器)が有効である。
しかしそんなに手近かに機器があり、それを操作する人が居合わせることは滅多にない。結果、毎日100人以上が突然死していると見られている。加齢疾病のひとつである心房細動に較べ、死亡率ははるかに高く、年間実に4万人以上が心室細動で亡くなっている計算となる。
中川氏がその1人だったという可能性が極めて高いと私は考える。            
昔から「ポックリ病」と言う言葉がある。予期しない若者(殊に男性)が、夜間睡眠中に夢にうなされたような大きい「いびき」や「うなり声」を出して突然死するため、「ポックリ死ぬ」という意味で「ポックリ病」という言葉が広く使われてきた。
一部の研究者は「青壮年急死症候群」という言葉を使っているが、これもつまるところ今で言う「突然死」に近い病態だと考えられている。しかし詳しいことはまだ研究段階にある。      
ポックリ病には次のような特徴がある。一見、健康であるが、30%に心身疲労がある。85%が夜間睡眠中に発作を起こす。ことに0~6時が多い—。
最後に、中川氏の細胞レベルの病理検査を行っても基礎的な疾患が発見されない可能性もあることを付け加えておかなければならない。「特発性心室細動」と呼ばれ、その実態はこれまた今後の研究に待たなければならない。
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