4097 中国はなぜイランをかばうのか 古森義久

イランの核兵器開発の動きに対しては、いわゆる国際社会も国連も一致して反対の姿勢を強めている、というのが最近の情勢です。とくに国連では安保理常任理事国のアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の5カ国が連帯して、イランへの経済制裁へと進みつつあるようです。
イランに対する強固な姿勢は各国共通しているというのが大方の認識でしょう。
ところがそうでもないのです。中国はイランに対しなにかというと、ひそかに、陰に、あまり厳しい措置が決まらないよう、動いてきたのです。
国連では中国は周知のように拒否権を持っています。一国だけですべての提案を抹殺していまうオールマイティーの力を有しているのです。
その力を利用して中国はイランをかばってきました。
でもなぜなのか。そのへんに光を当てる記事を書きました。以下はその記事の内容のブログでの紹介です。
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イランの核兵器開発を防ぐ国際努力が大詰めを迎えていますが、アメリカの政府や議会の内外では国連の対応にカギを握る中国がイランとのきずなを強め、イランへの制裁強化などの措置に同意しない見通しへの懸念が深まっていることが明らかとなりました。
米国議会下院外交委員会筋は1日、同委員長の民主党ハワード・バーマン議員らが8月の中国訪問の結果を踏まえて、中国政府のイラン核開発問題への対応に強い不満を抱いていることを明らかにしました。
同外交委員会では超党派で中国が最近、急ピッチで進めているイランでの石油やガス開発が両国のきずなを強めていることに注視し、中国が米国などと連帯してのイラン核開発阻止の試みに消極的になっていることに懸念を深めているとのことです。
ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストも30日にこの中国とイランとの結びつきが米国主導のイラン核開発阻止作業を骨抜きにする可能性を報道しました。
これらの報道を総合すると、米国当局がとくに注意しているのは
(1)今年8月に中国側がイランに製油所2カ所を増設する計画に30億㌦を出す合意が成立した
(2)同7月にはイラン側が自国内に製油所7カ所と約1600キロの石油パイプラインを総額430億ドルで新設する計画に中国企業群の参入を求めた
(3)同6月に「中国石油」がイラン南部の天然ガス開発計画への50億㌦の投資をする合意が成立した
(4)2004年には「中国石油化工集団」がイランの石油開発に700億㌦を投入する契約を結んだ
(5)中国はここ5年間に石油とガスの開発のためイランに総額1200億㌦を投入し、すでにイランの石油の最大輸出先となった―という動きなどだといいます。
このエネルギー資源をめぐる両国の結びつきがこれまでも中国に国連主体の対イラン経済制裁を弱めさせてきたと米側はみるわけです。
下院外交委員会筋によると、中国は国連安保理での対イラン経済制裁審議でも少なくとも3回、微妙な形で制裁の内容を弱める行動をとったとのことです。
同筋はこんごオバマ大統領が二週間の期限を切ったことで米国や英仏両国などの対イラン姿勢はさらに硬化することが予想されるが、中国が抑制の措置に出ることは確実だろうとしています。
中国がイランの核開発に反対しながらもなお強硬な制裁などに賛同しない理由としては、石油やガスというエネルギー資源での両国の結びつき以外に、「米国の中東での覇権を抑えるためにはイランの存在は重要だとする戦略的な目的や中国とイランはともに開発途上国から発展して地域の先頭に立ち、欧米諸国の政治理念に対抗するというイデオロギー共有の傾向」などが米側の専門家らによって指摘されています。
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