最近知り合いになった公認内部監査人(CIA)・公認情報システム監査人村田一さんが書いた「年次改革要望書」のことご存知ですか(埼玉県私塾協同組合広報誌 SSK Report 2009・4号)によると郵政民営化政策を始め弁護士増加、建築確認の民営化など、このところの「改革」と称する政策は、すべてアメリカの要求に屈したものだった。
だから村田さんは言う。
<4年前の総選挙で「郵政民営化は構造改革の本丸である」として小泉政権が掲げた「構造改革」に期待したにも拘わらず、様々な痛み、地方経済の疲弊、派遣労働者の増大など、失望感の大きくなったことが「政権交代」となった。
いまや悪者扱いとなった「構造改革」は1993年の宮澤政権時代に始まっており、その淵源には宮澤・クリントンによって始まった「年次改革要望書」の存在がある>。
年次改革要望書は、日本政府と米国政府が両国の経済発展のために改善が必要と考える相手国の規制や制度の問題点についてまとめた文書で、毎年、日米両政府間で交換される。
1993年(平成5年)7月の宮澤喜一首相とビル・クリントン米大統領との会談で始まったものとされている。『拒否できない日本』によれば、最初の要望書は1994年(平成6年)であった。関岡英之 『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』(文藝春秋 2004年4月21日 )
爾来「成長のための日米経済パートナーシップ」の一環としてなされる「日米規制改革および競争政策イニシアティブ」に基づきまとめられる書類であるが、マスコミはなぜか取り上げないから国民の大半は知らない。国民の知らぬところで結ばれた国家の約束は文字通り「密約」である。しかも毎年交わされているらい。
正式には「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書」(The U.S.-Japan Regulatory Reform and Competition Policy Initiative)という。なお、交換後は、それぞれの要望書について作業部会、上級会合の場で日米間で議論のち、日米共同の報告書をとりまとめることとなる。
最初の「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書」(年次改革要望書)が作成されたのは平成13年(2001年)であるが、これは先行する「日本とアメリカ合衆国との間の規制緩和に関する対話に基づく双方の要望書」の枠組みが現行のイニシアティブの形式に整えられたことによる。
双方の要望書は両国政府によって公開されており、日本から米国への要望書については、外務省のウェブサイトにおいて公開されている。
同様に、米国から日本への要望書については、駐日米国大使館のウェブサイトに日本語訳されたものが公開されている 、というが、それを開いてみる一般国民はいない。
米国側からの要望が施策として実現した例としては、建築基準法の改正や法科大学院の設置の実現、独占禁止法の強化と運用の厳密化、労働者派遣法改正、郵政民営化といったものが挙げられる。
米国政府からの要望で実現していない項目としては、再販制度・特殊指定の廃止・ホワイトカラーエグゼンプションが挙げられるが、年次要望改革書では引き続き取り上げられている。
一方、日本側からアメリカ側への要望が実現しなかった例は、BSE(牛海綿状脳症)に関しての全頭検査の実施などである。
アメリカ政府による日本改造と非難されるのは当然である。
関岡英之は年次改革要望書はアメリカ政府による日本改造という観点から注目し、アメリカによる日本への年次改革要望書の性格は、アメリカの国益の追求という点で一貫しており、その中には日本の国益に反するものも多く含まれているとしている。
衆議院議員小泉龍司(2005年9月の総選挙で落選)は、2005年(平成17年)5月31日の郵政民営化に関する特別委員会において、要望書について「内政干渉と思われるぐらいきめ細かく、米国の要望として書かれている」と述べている。
郵政民営化は郵便貯金や簡易保険などの国民の財産を外資に売り渡す行為であるとし、また三角合併解禁については時価総額が大きい外資が日本大手企業を買収して傘下に置き易くすることを容易化する行為として、外資への売国的行為とする意見がある。
年次改革要望書で言及されている医療改革は、外資系保険を利することが目的となる一方で医療報酬減額や患者の医療費負担増大が医療崩壊に繋がっていると指摘されている。
1999年の労働者派遣法改正により日雇い派遣が原則解禁となったが、労働環境の不安定化という社会問題を生み出している。
竹中平蔵郵政民営化担当相は2004年10月19日の衆議院予算委員会で小泉俊明の「(年次改革要望書を)御存じですね」という質問に対し、「(年次改革要望書の存在を)存じ上げております」と答弁した。
2005年6月7日の衆議院郵政民営化特別委員会では、城内実の「郵政について日本政府は米国と過去1年間に何回協議をしたか」、「米国の対日要求で拒否したものはあるか」という質問に対して、竹中大臣は米国と17回協議したことを認めるも、対日要求についての具体的言及は避けた。
郵政法案の審議が大詰めを迎えた2005年8月2日の参議院郵政民営化に関する特別委員会で櫻井充の「(年次改革要望書に)アメリカの要望として日本における郵政民営化について書かれている。(中略)国民のための改正なのか、米国の意向を受けた改正なのか分からない」という質問に対し、
竹中大臣は「アメリカがそういうことを言い出す前から小泉総理は(もう10年20年)ずっと郵政民営化を言っておられる。アメリカはどういう意図で言っておられるか私は知りませんが、これは国のためにやっております。(竹中は和歌山市の下駄屋の息子。なぜだか矢鱈な平等主義者である。小泉の懐に棲みついた)。
このまあ1年2年ですね、わき目も振らず一生懸命国内の調整やっておりまして、アメリカのそういう報告書(年次改革要望書)、見たこともありません。私たちは年次改革要望書とは全く関係なく、国益のために、将来のために民営化を議論している」と述べた。
日本の内政との密接な関係。誰がどう、言い訳しようと宮澤内閣以来の「改革」と称する政策のすべてはアメリカ国務省(外務省)の要求に屈したものだった。
1997年 独占禁止法改正・持株会社の解禁
1998年 大規模小売店舗法廃止、大規模小売店舗立地法成立(平成12年(2000年)施行)、建築基準法改正
1999年 労働者派遣法の改正、人材派遣の自由化
2002年 健康保険において本人3割負担を導入
2003年 郵政事業庁廃止、日本郵政公社成立
2004年 法科大学院の設置と司法試験制度変更
2005年 日本道路公団解散、分割民営化、新会社法成立
2007年 新会社法の中の三角合併制度が施行
報道で年次改革要望書がほとんど扱われていないことについて、関岡英之、城内実らから は、以下の点から、年次改革要望書に関する報道が広く国民に充分になされていないのが事実だとしている。
建築基準法の改正提言には、アメリカ政府の介在がひとことも書かれておらず、法改正の新聞報道でもいっさい触れられていない。 年次改革要望書の全文が日本のマスメディアで公表されたことはない。
郵政民営化をはじめとする構造改革の真相を国民が知ることとなったら暴動が起きかねないので、マスコミ対策は用意周到になされていた。郵政民営化に反対する政治評論家森田実が、ある時点からテレビ局に出演できなくなった。
『しんぶん赤旗』・一部夕刊紙以外の主要マスコミでは『年次改革要望書』が発表された事実そのものの報道もなされない。国会議員が国会で問題にしても、なぜか全国紙やテレビ局の政治部記者からは一件の取材もない。
アメリカ合衆国政府の主張(言い訳)
国務省で経済・通商分野を専門に担当したジェームス・ズムワルトは、小林興起(通産省出身の衆院議員。現在は民主党)から「『年次改革要望書』を日本に突きつけ、さらにその達成 achievement を強く求めている張本人key peroson の1人」と名指しで指摘されている。
2006年4月、ズムワルトは小林との対談で、日本の内閣がアメリカの年次改革要望書の言いなりだとする指摘に対し、否定的な見解を示した。
年次改革要望書を提示する理由について、ズムワルトは、日本の経済成長はアメリカにも利益を齎すと説明し、日本経済低迷の一因は規制の多さにあるため、その撤廃を年次改革要望書で求めているだけだと述べている。アメリカはあくまで「日本のしたいことを応援するスタンス」であり「小泉さんが考えていることの応援のつもりというのが基本的なスタンス」だとしていた。
その上で、年次改革要望書とは「日本の成長が最大の目標」であると説明し、日米の利害が激しく対立した日米構造協議などとは全く事情が異なると主張している。よく言うよ。
日本の政府と国会が束になってぶち当たった結果、負けたのではない。外務省のキャリアと称する役人が、唯々諾々と叩頭外交をして、各省に押し付けているだけである。これこそ密約ではないか。(文中敬称略)出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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