間もなく、医療関係者に対する新型インフルエンザワクチンの接種が始まるが、医療の第一線では、霞ヶ関が思い描いているようなわけには行かないようだ。
私の知人のところへ届いたメールをそのまま紹介する。
<新型ワクチンについて、XX市ではまだ医療機関と国の契約の手続きも進んでおりません(県医師会が委任状を各医療機関からもらって国と契約することになっていますが委任状の書類がまだ来ません)。
また、当院では現在季節性インフルエンザワクチンの予約を受けておりますが(10/15開始予定)、新型の流行と重なっており、厳密にインフルエンザ患者とワクチン接種希望者を分けることは不可能です。
もっと医療機関に金があれば新しい建物でも増築して患者さんとワクチン接種希望者を分けられるでしょうが・・・・
昼休み(関西の診療所ではご存知のように、昼過ぎから夕方まで一時外来診療を閉めます)に接種しようにも、看護師や事務のやりくりがつきません。また我々も疲弊してしまいます。
ここに新型ワクチンの接種が入ってきますから、おそらく相当な待ち時間と混乱が予想されます。厚生労働省役人様の知ったことではないでしょう。
大本営そのものですね。ワクチンのような専門的知識と見識の必要な業務を、経験も知識も(責任感も)不十分な官僚があれこれ指図する制度はおかしいですね。
この状況、太平洋戦争とそっくりです。「ワクチン=飛行機」、「開業医=兵隊」に置き換えてみてください。海外と比較して、「ワクチン=飛行機」の絶対量がたりないため、強烈な統制下におき、「開業医=兵隊」の人海作戦を強行し、現場には混乱が残ります。
ちなみに、予防接種の価格、供給量まで政府が決めているのに、実態は民民契約。優先接種と称して、事実上、接種を勧奨し、法定接種に限りなく近づけつつ、責任と補償は回避していると見るのが妥当です。
政府がするなら「法定接種」として、国が主体になるべきです。政府とメディアと国民の状況は、かつての戦争をみるようです>
・関連。
国立がんセンター中央病院の土屋了介院長は10/13開かれた講演会「新型インフルエンザの諸問題」で、「当病院では、医療関係者用として300人分が必要と要請していますが、まだ100人分しか来ていません」と明らかにした。
また同講演会のスピーカーとして出席した現役の医系技官、木村盛世防疫官は「新型インフルエンザに関する対策は、公衆衛生学や感染症などについてまったく知識のない医系技官が机に向かって計画を作っている。
所管の厚労省の上田(博三)健康局長は国民を人質にとって世界でも初めての新型インフルエンザ対策に取り組んでいるようなものだ。無責任きわまりない。即刻辞任すべきだ」と名指しで厳しく批判した。
この席には、厚労省足立信也政務官も出席していたが、新型インフルエンザ対策はじめ医療関連の政策立案の体制について、筆者の質問に対し、
「大臣以下政務三役だけでは問題を捌ききれない。近々、舛添元厚労相がやった大臣政策室のようなブレイン集団を立ち上げたい。大臣にも進言している」
こう述べ、医療対策立案の体制を整備する考えを明らかにした。脳外科23年、議員の中ではもっとも臨床経験が長い足立政務官の動きに注目したい。
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4170 ワクチン接種現場の混乱 石岡荘十

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