4208 拉致問題に関する鳩山政権の取り組み 古沢襄

二つのニュースがある。両者は直接の関係がないが、北朝鮮に関連する問題として、鳩山政権が本腰を入れて取り組まねばならない課題である。北朝鮮取材を続けてきた田原総一朗氏が拉致被害者の有本恵子さんらが「生きていない」と発言したのは記憶に新しい。これが有本さんの両親から精神的に傷つけらられたとして裁判沙汰になっている。これは裁判で決着をつけるしかない。
しかし拉致被害者の家族たちは生存を信じて救出を訴え続けている。民主党政権はこの声にもっと真剣に耳を傾けるべきでないか。あらゆるチャンネルを使って北朝鮮に働きかける努力が欠けている。田原総一朗氏が言うように拉致被害者が生存していないのなら、その事実を明確にするよう北朝鮮に迫る必要がある。
韓国の李明博政権がひそかに南北首脳会談の開催でシンガポールで極秘協議を行っていたことを、東亜日報に暴露された。先週のことだったという。大統領府関係者は秘密接触があったことを事実上確認したという。
訪韓したゲーツ米国防長官との間で「米国は核の傘、在来式戦力、ミサイル防衛能力を含むすべての軍事力を動員して韓国に拡張抑制を提供することにした」という韓国に対する米国の防衛公約が明らかにされた一方で韓国は北朝鮮とも秘密接触を保っている。
外交が持つ二面性といえよう。
日本は北朝鮮に対する経済制裁を緩めるつもりはない。しかし、その一方で拉致被害者の救出のための手立てを尽くす必要がある。かつては森内閣の下でシンガポールで日朝の極秘協議をしたことがある。政権交代が為されたとはいえ、拉致問題は日本が一貫して取り組む課題であることには変わりない。
<田原総一朗氏がテレビ番組で拉致被害者の有本恵子さんらについて「生きていない」と発言し精神的に傷つけられたとして、有本さんの両親が慰謝料を求めた訴訟の第1回口頭弁論が23日、神戸地裁田原氏側は請求棄却を求める答弁書を提出し、争う姿勢を示した。
答弁書で田原氏側は「外務省などへの取材に基づき十分な根拠がある。言論の自由は保障されるべきだ」と主張。田原氏本人は出廷しなかった。(共同)>
<政府は23日、韓国と北朝鮮が先週シンガポールで秘密裏に会い、首脳会談について話し合ったというメディアの報道を認めた。大統領府関係者は同日、記者団に対して、「過去の話なので改めて…」と言って、南北首脳会談に向け秘密接触があったことを事実上確認した。大統領府は22日までは、「知らない」または「確認できない」と言っていた。しかし、政府関係者らは一様に、具体的な接触内容については口を閉ざした。
今回の接触は、昨年2月の発足以来、南北首脳会談の必要性と可能性を数回にわたって強調してきた李明博(イ・ミョンバク)政府が実際に行動に出たという意味がある。今回の接触の内容は具体的に伝えられていないが、李大統領と金正日(キム・ジョンイル)総書記の首脳会談に向けた「水面下の調整」という見方が多い。李大統領は22日、カンボジアのフンセン首相との首脳会談で、「北朝鮮も(韓国が核の解決策として提示した「グランドバーゲン」に)深い関心を持つだろう」と述べており、議題が事前に調整されていた可能性もうかがえる。
しかし、首脳会談開催のために「秘密接触」方式を選んだことに対しては、批判の声が多い。李大統領はこれまで、南北関係において透明性と国民的合意を何度も強調してきたためだ。李大統領は、候補時代の07年4月に憲政会を訪れ、「国民の合意なしに透明でないいかなる会談も、国民の信頼を得ることはできない」と語った。李大統領は当選後の昨年3月26日、統一部の業務報告を受ける席で、「国民の意思に反する北朝鮮との交渉はない。南北間の問題は、非常に透明で国際社会が認めるルールの上で準備をすることになるだろう」と述べている。
今回の接触の前後過程は、これまで政府が明らかにした原則を色あせさせる。韓国側代表は、当局者でない、李大統領と親交の深い政治家か民間の人物だという。金大中(キム・デジュン)、慮武鉉(ノ・ムヒョン)政府時代に使用された方式と大差ない。また、政府当局者らは、接触の事実について「知らんふり」で一貫した。主務責任者の金ソンハン大統領室外交安保首席秘書官と玄仁澤(ヒョン・インテク)統一部長官は、23日まで「知らない」と言い続けた。ある北朝鮮問題の専門家は、「李大統領が本当に親交のある人物を動員したか、あるいは当局者が国民に嘘をついたことになる」と指摘した。
これに対して、大統領府内部では、「南北関係の特殊性を考慮しなければならない」、「低いレベルの実務接触まですべて公開しなければならないわけではない」という反論が出ている。しかし、今の時点で首脳会談が必要なのかについて国民的合意がなされていない状態で、原則を破ってまで首脳会談を推進する必要があるのかという非難を避けることは難しい。
ある外交安全保障問題の専門家は、「韓国で新政府が発足すれば、1、2年の間は誹謗や武力示威を行い、首脳会談をエサに経済的支援を要請することが、北朝鮮の長年の生存手法だ。韓国の権力者らは、人気管理と政権延長など、国内の政治的目的のために北朝鮮が差し出す手を握ってきた。現政権も違いはなさそうだ」と語った。(東亜日報)>
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