4250 アフガン戦争の大義はどこに 平井修一

ワシントンポスト(10月27日)が「米政府当局者がアフガン戦争で初の辞任、外地勤務の元海兵隊大尉『なぜ戦うのか、もはや分からない』」と題した記事を報じている。大義も出口もない戦争に対する米国民の疑問や厭戦気分はじわじわと拡大しているようだ。
ロイター通信によると首都カブール中心部の国連施設に28日午前、武装勢力が侵入し、同国治安部隊と銃撃戦となったという。最後の砦の首都さえも治安を確保できない状況は絶望的としか言いようがない。以下はポスト紙記事の一部である。
マシュー・ホー(36)は今年の始め、米政権がアフガニスタンでの作戦を進めるために求めていた「民事・軍事に通じた優秀な人材」として外地勤務に加わった。
イラクでの戦闘経験のある前海兵隊大尉のホーは除隊の後、ペンタゴンで働き、国務省では文官としてイラクで勤務し、7月までタリバンの温床であるザブール行政区の上席文民官だった。
しかし、ホーは、アフガンでは米国は単に武装勢力の抵抗をあおっただけだという思いに至った。彼の一連の発言は先月、ホワイトハウスに波紋を起こし、彼はアフガン戦争について抗議し辞任する初の米政府当局者になった。
「私は、アフガンでの米国のプレゼンスの戦略目的への理解と信頼を失いました」と、彼は国務省人事部に4ページの手紙を9月10日に書いた。「私には現在の戦略に対する疑問があり、私の辞任は、我々がこの戦争をどう続行するのかへの疑問ではなく、なぜ、何のための戦争なのかへの疑問によるものです」
ホーの手紙に対する反応はすばやかった。米政府高官は、彼らが優秀な文民官を失うばかりか、おそらく優秀な批評家になることを心配したのだろう。
イラクの米国大使、カール・アイケンベリーはカブールに彼を呼び、上級大使館スタッフの仕事を勧めたが、ホーは謝絶した。次に彼は米国へ呼び戻され、アフガン・パキスタン担当の特別代表、リチャード・ホルブルックと面談した。
「彼が優れた文民官であったので、我々は非常に深刻に彼の手紙を受け止めた」とホルブルックが言う。
ホルブルックは「この戦争は戦う価値がなかった」というホーの見方を共有しないものの「私は彼の分析の多くに同意した」と言う。ホルブルックは、ホーをワシントンの政策チームに加わるようこう勧めた。
「本当に政治的な影響力を行使してこの戦争の不条理を解決したいならば、外部ではなく内部でこそ仕事をすべきだ。その方が多くの関心を得ることができるし、政治的効果も大きい」
ホーは説得に応じて一端仕事を引き受けたが、1週後に彼の心は変わった。「私は仕事の重要性は認めますが、しかし、それは正しい行いでありませんでした」。辞任が決定した2日後に、彼はこう言った。
「私は反戦運動家でありませんし、人類愛を説くヒッピーでもありませんが、ザブールでの仕事は私がこれまでに持った二番目に良い仕事でした」
彼の一番の仕事経験は海兵隊員で、彼の最も親しい友人の多くはまだ海兵隊に従事している。
彼がアルカイダとタリバンについて言う。「殲滅する必要がある多くの敵がいます。私は、我々のイラクチームがたくさんの敵を打ち負かしたとき以上に幸せなことはありませんでした」
しかし、アフガンでは事情が異なる、と彼は辞表にこう書いた。
「多くのアフガン人は、主に米国の軍隊がそこにいるから戦っている。村や谷における米国の軍事プレゼンスは歓迎されないし、米国が後ろ盾になっている不正な中央政府も拒絶されている。有害な存在のタリバンや、パキスタンに拠点を置くアルカイダも掃討する必要がありますが、アメリカはその軍隊に、はるか彼方の基本的に内戦であるアフガンで死ぬよう命じているのです」
アメリカは理不尽な「大義なき戦争」をいつまで続ける気だろうか。4万人の増派をめぐって国論は完全に二分されている。オバマ大統領も決断をためらっているかに見える。その間に米兵は徒に死傷者数を重ねるのだろうか。
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