オバマ大統領への支持が下がり、批判が高まっています。本日11月3日に行われる一連の選挙で民主党側がどれほど後退するか。この結果によってはオバマ政権はさらに力を失うでしょう。こうした現状について記事を書きました。
■虚像と実像…政治は変わる
「オバマ氏は自分がどんな人間であるか、わかっているのか」こんな論評をみて、おやっと思った。リベラル系のベテランのコラムニスト、リチャード・コーエン氏が3週間ほど前にワシントン・ポストに書いた一文だった。
本来のオバマ支持者のコーエン氏が明らかに批判を表明していたからだ。このコラムは「オバマには気骨があるのか」というタイトルで、シカゴへのオリンピック招致にオバマ大統領が出かけたことを「愚行」と断じていた。
そして同大統領がアフガニスタン平定作戦の苦境にあって米軍増派を求めるスタンレー・マクリスタル司令官との協議を避けていることを批判し、「オバマ氏は人々に好意を抱かせるが、国際問題では最重要となる畏敬(いけい)の念を抱かせることがない」と、突き放していた。
同じ時期に無党派に近い長老政治評論家、デービッド・ブローダー氏もワシントン・ポストに「真の大統領は敢然と立つか」という題の評論を書いた。
オバマ政権が必死で推し、猛反対にあった医療保険改革案について「オバマ大統領は自分自身の中枢の信念は一体なんなのかという国民からの絶えない疑問に、ついに答えねばならない真実の時がきた」というのだった。
同じ疑問は穏健保守と評されるコラムニストのデービッド・ブルックス氏も提起していた。ニューヨーク・タイムズの10月30日のコラムで「不屈への疑問」と題し、アフガン作戦にかかわる米国の軍部や政府の当事者たちが「オバマ氏という人間」について深刻に懸念していると書いていた。戦争を進める際の最高指導者に不可欠な覚悟や不屈さがあるかどうかが疑問だというのだった。
こうした疑念はバラク・オバマという政治指導者が一体、どんな人間なのか、究極の核心がなおわからない、という落ち着かない気分から発しているといえそうだ。
オバマ氏は常に冷静である。感情に流され、乱れることがない。弁舌はさわやか、理路整然、「変革」や「希望」や「核なき世界」という理想のスローガンで世界を魅了する。服装も体形もマナーも最高に近い。
だが米国民として、職業人として、あるいは政治家として、どんな実績を積んできたかとなると、明快な答えは出てこない。
その点をコーエン氏は「オバマ氏はこれまでの人生で成し遂げたことにより敬愛されるのではないところが大統領としての弱点なのだ」と総括する。確かにオバマ氏は米国の歴代大統領にくらべ、就任前の実績というのがきわめて少ない。
「共同社会の組織係」という難解な職業に加え、州会議員、そして連邦上院議員を事実上、3年ほどというだけなのだ。先人たちが州知事や副大統領という行政の要職をこなし、着実な業績を残していたのとは対照的である。
オバマ氏のそんな短所も大統領就任当初はかえって新鮮さとして歓迎された。だが就任から9カ月、山積する難題を少しも解決できず、新しい成果を残すでもない。オバマ氏を支持してきた識者たちの間でも陶酔からさめたかのように、彼の虚像と実像とをはっきり区分しようという動きが起きてきたようなのだ。
その背後には当然、一般国民の態度の変化がある。ラスムセン社の10月30日発表の世論調査結果ではオバマ大統領を「強く支持」が30%、「強く不支持」が39%だった。
政権当初には夢想もされなかった数字である。だが事は簡単、政治は変わるということだろう。
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4301 オバマ大統領の虚像と実像 古森義久

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