4312 爆弾テロ、インド謀略説も浮上 宮崎正弘

あれは本当にタリバンが仕掛けた爆弾テロだったのか。パキスタンで下町商店街爆破の大惨事は誰が犯人か?インド謀略説も浮上。
先週、パキスタンの国境の町ペシャワール(10月28日、ミーナ市場)でおきた爆弾テロは買い物客でごったがえす下町のバザールが現場だった。百名近くが血の犠牲となり、とりわけ買い物客が女性だったので、同情心も募った。
死体の多くは手足がバラバラで、周辺が瓦礫と血の海と化した。11月3日現在、行方不明者は十五名、瓦礫に埋まっているという。
「タリバンが民衆を敵に回す行動をとるとは考えられない。無辜の女性、こどもが多くの犠牲になったが、おなじパキスタン人同士、これは外国勢力の仕業だ」という声を現場に入った米国人記者が報じている(NYタイムズ、11月5日)。
以下、同紙のレポートに依れば、「五年間貯金して、やっと娘のドレスと靴を買ってやれるとおもっていたのに」。お金を握りしめて母親と子供五人を突如失ったパキスタンの労働者の声がある。「タリバンが狙うのなら、軍施設、警察。そして金持ちがとまるマリオット・ホテルの筈だ」。
現場は日本で言えば浅草仲店か、御徒町「アメ横」のような場所。廉価な消費物資、衣類がならび朝から買い物客でごったがえす。じつは筆者も十年ほど前にペシャワールへ行ったおり、この商店街で土産を幾つか買ったことがあり、情景を思い浮かべることができる。
ではいったい誰が?
パキスタン情報部はワジリスタン攻撃の報復でタリバンの仕業と断定した。軍の情報部はパキスタンの庶民ばかりか、上層部からも猜疑心で見られている上、欧米はアフガニスタンのアルカィーダ、タリバンとパキスタン軍情報部の将校らが裏で繋がっており、機密情報が筒抜けになっている事態を重く見ている。だから信用されていない。
民衆にタリバンが敵対する筈がないと信ずるペシャワールの庶民の間では、急速に爆弾の真犯人説がとびかい、インド情報部か、モサッドの陰謀だと、まことしなやか陰謀説が、またたくまに席巻しているという(ヘラルドトリビューン、サブリナ記者、11月5日付け)。
▲陰謀説という情報戦も戦争の有効な手段である
パキスタンと敵対するインドはともかくとして、モサッドは論理的飛躍がある。911テロはユダヤの陰謀というアラブ世界にはびこる荒唐無稽の陰謀論と同類だろう。
ただしパキスタンの治安悪化と紛争の長期化、泥沼化が目的であるとすれば外国勢力の関与も考えられないことはないだろう。
げんにプーチンは大統領時代にチェチェンへの攻撃の合法性を獲得するためにKGBに秘密工作をやらせて、モスクワで連続爆破をおこさせ、チェチェンのテロリストが犯人だと言ってのけた。
思い出されたい。ボスニア&ヘルツェゴビナ戦争。
1994年2月5日、サラエボの「青空市場」。迫撃砲弾が撃ち込まれて60名が死亡、200名が重軽傷を負うという大惨事が発生し、セルビアへの憎しみが倍加した。
ところがモスレム側の自作自演説が、その後濃厚となった。だがあとの祭り。欧米はセルビアを非難し、米国はセルビアを空爆し、国際世論はひたすらボスニアに味方した。
ミロセビッチとカラジッチというセルビアの民族指導者がヒトラー呼ばわりされ国際法廷に引きづり出された。この情報操作はボスニアが米国の広告代理店を国連ロビィスト駆使しておこなわれた(詳しくは高木徹『戦争広告代理店』、講談社文庫)。
パキスタンの魑魅魍魎、隣国インド。そして隣接するアフガニスタン。混迷はますます漆黒の闇へと疾走をはじめた。
  
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