4354 寺島実郎氏の反米の系譜 古森義久

実は寺島実郎氏の言論をあえていまさら取り上げることには、私はためらいを感じていました。いくら著名でも民間の一論者にに過ぎず、それよりもさらに、私は寺島氏の言論をすでにさんざん批判の対象としてきたからです。
寺島氏には長年、知己を得ており、顔を合わせれば、丁重に挨拶をします。個人的には彼になんの恨みもつらみもありません。しかし公的な意見の発表はまた別です。やはり改めて論評の対象にすべきだと考えるにいたりました。
なにしろ寺島氏は今回は総理大臣の影の外交顧問のような役割を果たしているのです。やはりさらなる論評に値するでしょう。
しかしその前に私がもう6年も前に正面から寺島氏の言論を批判していたことを紹介します。田久保忠衛氏との共著『反米論を撃つ』でかなりのページをさいて、寺島氏の外交論を批判していたのです。
寺島実郎氏がこれまでもどんな言論をしてきたかを知ることは、鳩山由紀夫氏の思考の背景を知ることにもつながります。
上記の書のなかに「寺島実郎という反米レトリック」という項目があり、田久保氏と私が対談の形で語っています。そのなかの私の発言は以下のようでした。
「寺島実郎氏はひと口でいうと、反米ではないフリをしながら、反米論調をふりまく人ですね。アメリカに対する政策をまじめに考えるときには絶対に触れざるを得ない日米安保条約へのスタンスにしても、はっきり反対とは言わないけれど、総括すれば、事実上の反対となります。
その反アメリカの主張には情とも理とも区別できない、いろいろな要素がごちゃまぜに入っています。それらをすべて合わせても、所詮はとらえどころがなく、政策論たりえません。寺島氏の論調はレトリックによる実体のごまかしが目立ちます。
その手法はカギ括弧の多用です。自分が反対する対象は『力の論理』とか『力こそ正義』などと、カギ括弧でくくり、やたらと単純化、悪魔化します。アメリカの政策が果たして『力の論理』だけなのか。そんな単純ではないでしょう。
しかし寺島氏はアメリカの複雑で多様な対応をもすべて『力の論理』という自分勝手な表現でまとめ、ネガティブな言葉のパッケージをつくってしまいます。『力の論理』とか『力こそ正義』という短絡的な態度がよくないのは自明です」
寺島氏のカギ括弧乱用のトリックについて、私はさらに詳しく述べています。その紹介は回を改めます。
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