久しぶりに黒田勝弘ソウル支局長の記事を読んだ。黒田氏は京都大学経済学部卒。共同通信社ソウル支局長を経て1989年から現職の産経新聞社ソウル支局長。1992年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2005年菊池寛賞受賞。朝鮮半島取材では第一人者である。
根っからの韓国好きだったから、共同外信部の異動人事を断って産経新聞に移った。20年前のことになる。私が共同通信社の常務理事時代のことだが、編集局から聞かされて少なからず驚いた記憶が残る。といって手放しな韓国礼賛ではない。
むしろ韓国や朝鮮民族が好きだから、日本への劣等感の裏返しとして現れる韓国民族主義を婉曲に批判してきた。北朝鮮や韓国の朝鮮民族の歴史と文化に造詣が深い。韓国民族主義の色が濃く、反日傾向がある韓国の新聞からは黒田批判が出るが、意に介さずに20年以上もソウルに居座って健筆を振るってきた。
金大中・盧武鉉左派政権の下での韓国軍は、過去10年、対北融和政策で“事なかれ主義”に終始してきたという指摘は正しい。それが李明博政権になって、北朝鮮の軍事的挑発には“断固対応”との姿勢に変わったと分析している。
韓国の聯合ニュースは、北朝鮮が今回の武力挑発事件について韓国の謝罪を求め「責任ある措置を取るべきだ」との報道文を発表と伝えている。領海侵犯したのは韓国側だとの主張である。李明博政権は応じないであろう。
<【ソウル=黒田勝弘】韓国と北朝鮮の海軍が10日、7年ぶりに交戦した。南北の警備艇による銃砲撃戦の現場は、西海岸の黄海上の南北軍事境界線付近。この海域では過去にもしばしば軍事衝突があり、南北で対立と緊張が続いている“海の火薬庫”だが、オバマ米大統領の日本や韓国訪問を前にした衝突の背景が注目される。
今のところ北朝鮮の意図としては「韓国との緊張を印象付けることで内外の関心を集め、念願の対米交渉実現を図ることと、軍および民心に緊張感を持たせ国内引き締めを狙っている」(韓国軍当局筋)というのが大方の見方だ。
また韓国側の変化もある。李明博政権下の韓国軍は、対北融和政策で“事なかれ主義”に終始した過去10年の政権とは異なる。今や北朝鮮の軍事的挑発には“断固対応”との姿勢に変わっている。今回、韓国軍は北朝鮮警備艇からの銃撃に対して即時、応戦し、警備艇を半壊させ撃退している。これまでは応戦に際しては上部の判断をあおぎ、自制することが多かったという(同筋)。
「西海五島」と呼ばれるこの海域では1999年と2002年に、南北間で戦死者を伴う激しい衝突(1次、2次延坪海戦)があった。李政権は過去に冷遇された海戦および戦死者の顕彰を積極的に進めるなど、軍の士気高揚を図ってきた。
韓国軍当局の発表によると、北朝鮮の警備艇は韓国側の無線による警告を無視し、境界線を越えて韓国側への侵入を続けた。このため韓国警備艇が海上に向け警告射撃したところ、北朝鮮警備艇は韓国艇に向け直接銃撃を加えてきたため交戦状態になったという。
韓国側でNLL(北方限界線)といわれている海上の南北軍事境界線は、北朝鮮の沿岸近くまで深く切れ込んでいる。このため北朝鮮は現状に不満が強く、NLLを無視する侵犯を繰り返してきた。
今回、北朝鮮警備艇が警告を無視して侵入を続け、さらに韓国警備艇を攻撃してきたことに対し、韓国軍当局をはじめ韓国政府は「単なるNLL無視作戦」とは別に「政治的な意図」を感じている。
北朝鮮は現在、核問題をめぐって米国との直接交渉の実現に全力を挙げている。南北間の軍事衝突は米国の目を朝鮮半島に引き付け、米国を北朝鮮との対話の場に引き出すのに効果がある-と計算しているのではないかというわけだ。(産経)>
<韓国の聯合ニュースは10日、朝鮮半島西部の黄海で同日午前に発生した、韓国軍艦艇と北朝鮮の警備艇による銃撃戦について、韓国軍関係者の話として北朝鮮側に死者1人、負傷者3人の被害が出たと伝えた。朝鮮中央通信によると、北朝鮮の朝鮮人民軍最高司令部は、韓国側に謝罪を求める報道文を発表した。
韓国の李明博大統領は同日、「これ以上、状況が悪化しないよう、落ち着いて毅然(きぜん)とした対応を取るよう指示した」と述べた。大統領府が発表した。同国の鄭雲燦首相も国会で「偶発的な衝突」と述べ、政府として冷静に対応する姿勢を強調した。
朝鮮人民軍最高司令部は「南朝鮮(韓国)軍当局は今回の武力挑発事件について謝罪し、責任ある措置を取るべきだ」との報道文を発表。領海侵犯したのは韓国側だと主張した。(共同)>
杜父魚ブログの全記事・索引リスト
4355 “事なかれ主義”から“断固対応”に 古沢襄

コメント