欧米の血の犠牲の上に中国がアイナク鉱山開発を独り占め。アフガニスタン最大の銅鉱山アイナク鉱区はカブールの南東60キロ。この銅山は推定埋蔵1300万トン、市場価格予測では880億ドルの価値があるとされる。
開発がすべて達成されると世界第十五位の銅鉱山となる(アジアタイムズ、11月9日付け)。
数百の中国人エンジニアと坑夫がすでに働いており、皮肉にもアフガニスタンで支払われた給料を、本国に送金している。くわえて、この鉱山を守っているのは米兵とアフガニスタン警察1500名。しかもアフガン警察の給与の半分は日本が援助している。
鉱山開発は環境汚染に繋がり、儲かるのは中国だけという構図。なぜこういう矛盾がまかり通るのか? 米国の世論は「安保ただ乗り」論でチャイナ・バッシングを開始しているが、嘗ての日本バッシングのような盛り上がりに欠ける。オバマ訪中前でもありますし・・・。
日本とてカネの援助はするが、それが中国に裨益している実態をみて見ぬふりを決め込んでいる。ま、日本の政府は北京に朝貢政権ですから。
アイナク銅鉱山開発に中国冶金集団が35億ドルの入札に成功し、全体の75%を抑え、さらに中国の江蘇省銅山集団が残り25%を獲得した。
既にアイナク鉱山開発はことし五月に開始され、早ければ2011年に生産開始となる。年間20万トン。全量が江蘇省銅山集団に引き取られ同社は年間90万トンの銅精錬を誇ることになる。
向こう三十年の開発契約と推定され、毎年四億ドルを中国はアフガニスタン政府に支払う。
同時に中国はアフガニスタンのインフレ建設に深く関わっており、道路建設、石炭による火力発電所、加えて地下水くみ上げ装置、鉱山労働者のための住宅、学校、病院の建設も開始した。
なぜこんなことになったか?
アフガニスタンの担当大臣イブラヒム・アデル鉱山相と中国企業との間でなんらかの密約があったに違いないと冒頭のアジアタイムズが言う。
なぜなら当時の入札には米国、カナダなど錚々たる世界企業が応札したにもかかわらず、アフガニスタンに派兵もしていない中国が土壇場で権益を独り占めしたからだ。
しかも07年におこなわれた入札直前に世界銀行の鉱山開発専門家チームが作成したレポートでは中国冶金集団が海外での実績がほとんどないことを警告していたにもかかわらず。
▲中国の本当の狙いはパキスタン・イラン国境の銅山開発にあり
だがパキスタン情報筋によれば中国の本当の狙いはアフガニスタンに隣接するパキスタンのセインダック鉱山であるという。
この鉱山は銅のほかに金の埋蔵が確認されている。(ちなみに金価格は11月12日、史上最高額の1オンス=1119ドルを更新)。
セインダック鉱山はパキスタンのもっとも危険なバロチスタン地方チャガイ地区に位置し、埋蔵は四億トン。推定契約金額は3億5000万ドル。03年から投資が開始されている。
ところがムシャラフ前大統領が中国の冶金集団と契約した生産高より多くを生産している模様で、あからさまな契約違反を批判する声がパキスタンではあがっている。生産高を監査するシステムがパキスタンにはない。
また欧州系の環境監査団体のレポートに依れば、生産現場で水質管理が悪く、ひどい汚染が確認されている。同銅山の水源はイラン国境の盆地から引いているため、現地住民には水枯れの恐れも高まっている。
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4371 アフガニスタンの巨大なる矛盾 宮崎正弘

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