4401 非常ベルが鳴っている 岩見隆夫

「非常ベルこれでいいのか 自民党」
もちろん、反語である。これでいいはずがない。自民党の馳浩(はせひろし)衆院議員(党新聞出版局長)の作だ。党機関紙「自由民主」最新号のコラムに書いた。
馳は石川県出身、当選4回、48歳、ロサンゼルス・オリンピック(84年)にレスリング選手で参加、のちプロレスラーになった。勝負師の勘で、自民党が危うい、と感じとっている。緊急事態のベルがけたたましく鳴っているのに、動きが鈍い、と。
谷垣禎一総裁は今月から、<歩く。聞く。応える>を実践する全国行脚をスタートさせた。4日、高知で開かれた同党の四国ブロック青年部・青年局合同会議では、
「横綱が1人では相撲にならない。わが党はもう一回足腰を鍛え直し、相手(民主党)を寄り切る覚悟だ」と訴えたという。
だが、相手は良きにつけあしきにつけ、喧騒(けんそう)の渦のなか、勢いづいている。自民党の影はますます薄れざるをえない。どんな差し手で寄り切ろうというのか。谷垣が好んで口にする、
「全員野球で……」は、技のうちに入らない。鋭さに欠け、決め手にならないのだ。
相手にスキはないか。論客、伊吹文明元幹事長の次の指摘は注目に値する。
<民主党政権下で、国民生活への政府の関与が増え、選挙結果ですべてを授権されたとの誤解、おごりから、一部幹部の判断に基づく上意下達的、中央統制的手法が大手をふってまかり通っている。この国家社会主義的な民主党政治こそ、われわれ自民党が闘うべき対象だろう……>(「いぶきの国会レポート」10月号)
一部幹部、が民主党の小沢一郎幹事長を指していることは言うまでもない。最近、顕著になってきた小沢流の統治手法を、伊吹は<日本の危機>と位置づけ、放置できないと警戒している。
谷垣も、議員立法禁止や本会議での与党代表質問パスなど小沢の国会改革について、行脚先で、「民意の吸収が十分できず、日本の民主主義を弱くするものだ」
と批判した。小沢政治が自民党の標的になりだしたことをうかがわせる。
しかし、小沢側は多数を擁してさらなる<自民攻め>の構えを強めており、理論闘争に加えて激しい体力戦になることは間違いない。自民党はどうかと言えば、惨敗後遺症がなお深く、敗因をめぐって相互批判も続いている。馳はこう言う。
「内輪もめしたり、人の悪口を言ったりしていても、自民党は浮上しない。じゃあお前はどうなんだ、と反論されるだけだ。
ここはサンドバッグ覚悟で街に出るべし。冷ややかな視線に耐えながら、街頭演説し、ミニ集会でしかられることからスタートだ」と。そうに違いない。もうひとつ、馳の作がある。
「バラまいてそれで良いのか 民主党」
政権維持の武器になるはずの民主党マニフェスト(政権公約)には、バラマキ型の批判がついて回る。いつ自縄自縛の足かせになるかわからない。自民党にとっては有力な攻撃材料だろう。
だが、攻撃だけでは失地回復にならない。国民を引きつける新たな魅力をどうして生み出すか。非常ベルが鳴っている。(敬称略)
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