今朝放映されたTBSの時事放談に、民主党の長老議員、渡部恒三・前最高顧問(77)が出演していました。この人はもともと竹下派7奉行の一人で、小沢一郎幹事長とともに自民党を飛び出す一方、小沢氏の言動についてそのときどきの視点で苦言を呈するため、メディアとしてはけっこう有難い存在でもあります。民主党国対委員長時代は、「黄門様」にも擬せられましたね。あれはちょっと、メディア側の持ちあげすぎだと感じましたが。
この人は、本当は自分こそが首相になっていて当然だったのに、という本音があからさまに前面に出ている(事実、私が知る限りでも、そのようなことを故小渕恵三氏が首相になったころから繰り返しつぶやいています)人なので、ちょっと生臭くもあるのですが、確かに話は面白いのです。朴訥そうな会津なまりの下には、いつも打算がしっかり隠されているような印象もありますが。
でも、5月の民主党代表選では、露骨に岡田外相に肩入れし、小沢氏批判を続けたので、オン、オフの発言とも記事を書く上で参考になりました。衆院選後は、やはりというか当然というか小沢氏から疎まれ、本命視されていた衆院議長の座を横路氏に奪われるだけでなく、党最高顧問のポストも外されました。そういう立場の人が、現在の政界と党についてどう考えているかが、本日の時事放談からはうかがえました。以下、収録を見た原川記者のメモを紹介します。
《Q:深夜の採決強行。それこそ自民と民主の攻守逆転という気がするがどうか
渡部氏:41年国会議員を私、務めさせていただきましたが、あの晩の国会ぐらい、国民の皆さんにはずかしい、申し訳ない、しかもまったく意味のない徹夜しての大騒ぎは、ありませんでした。
まずね、絶対に審議拒否は国会議員として許せないと40年いってきた自民党の皆さんが審議拒否で退場しちゃうわけですからね、これも国民の皆さん変だと思ったろうし、また我が方の民主党もね、私、民主党の国対委員長までやったんですが、あの当時は強行採決はしちゃいかん、やっぱり、国会の運営は与党と野党が話し合いで国民のために決めるべきだと言ってきたのがね、なんか意味の分からん、いつどうなったんだか、われわれ分からねえところで強行採決。
しかも、強行採決したならばね、私もかつて竹下内閣のとき国対委員長で、消費税法案、強行採決したことありますが、やっぱりこれをやらなければ明日の日本ないっていうような意味がなければならない。それほどの意味のある法律ではない。しかし、まあ、共産党が一番でしたね。自民党は審議拒否、民主党は強行採決。その中で共産党はちゃんと審議に参加し、しかも討論でもね、入ってね、この法案たいしたことはないけれども、内容じゃ●(聞き取れず)、賛成したんですよ。
私も共産党は入りたくなったね。しかし、結局強行するなら、ばっと強行して提出法案みんな通すっていうなら意味分かるが、でも次の日はわれわれ確保した1日やんなくちゃならないのに、止めちゃったんですから。だからまあ、明日からの参議院、今のままでは法律全部通りませんよ。
Q:国会は小沢さんが総指揮ですよねえ
渡部氏:国対委員長(山岡賢次氏)おりますけどねえ、まあ何となく小沢くんが右といえばはい、左といえばはい、となっちゃいましたね。はい、と言わない私は首になっちゃった。
Q:どうしてこんなに中途半端な強行採決に
渡部氏:だから、私は40年つきあってね、やっぱり小沢を評価して、いざというとき頼りになるのは小沢だとつきあってきたんですがね、この木曜日から金曜日までの国会は、小沢がなんであんな指図したり、右っていったり左(っていったり)、意味分かりません、話してないから。
Q:でも、民主党議員はそう言われると右左とついていくわけですか。
渡部氏:もうそれは着いていきますねえ。そらたいしたもんだわ。昔の軍隊よりたいしたもんだ。
Q:1年生議員は
渡部氏:今、1年生議員っていう話ありましたがね、40年前になりますが、佐藤内閣の田中幹事長のとき私が初めて当選。小沢一郎君とか羽田孜くんとかね。44人当選したんですが、私1年生っていう気分なかったな。佐藤栄作と対等だと思って、もう、佐藤栄作総理のところ行って「あんた辞めろ」なんていったりね、
田中さんに食ってかかったりしたもんですけど。これはね、私は国会議員は1年生とか2年生とか差別するのは大変な間違いで、むしろ14回も当選した私などは明日いなくなっていいんで、むしろ今度初めて当選した人が国民が今何を望んでいるか、何を考えているかこれからどうして未来をつくっていくかに対して一番敏感な感覚持っているんです。
しかもね、名誉のために申しあげますと、今度当選した民主党の1期生はみんなそれぞれ個性をもった優秀な学者もいれば、役所の経験者もいれば、首長経験もいれば、特別の思いを持って、非常に素晴らしい1年生が多いんでもっと晴れ晴れと活躍させていただきたいと思っています。
Q:政権の正念場を迎えている鳩山さんに一言。
渡部氏:皆さんに知ってもらいたいのは、今までの総理大臣は、だいたい外務大臣、大蔵大臣みんな経験しているんですよ。(鳩山君は)官房副長官しか経験してないんだから、今まで多少あいまいなとこあったとしてもよくやっておりました。私が今鳩山くんに望みたいのは勇気と決断。》
渡部氏は4日には、福岡市内のホテルでの講演で「大臣、副大臣、政務官以外はみんな暇で、小沢君が右と言えば右、左と言えば左。(政府入りしなかった)民主党の国会議員は何をしたらいいのか」と述べています。小沢幹事長室による政府・与党の一元化政策の歪みを批判しているわけですが、そりゃこういうことをはっきり言われれば、小沢氏としても煙たいし、鬱陶しいでしょうね。
また、10月の産経新聞のインタビューに対しては「ポスト鳩山」についてこう率直に語っていました。民主党の現状をずばり言い表しています。
《今、仮に鳩山君が辞めるんだったら、そらもう小沢君が推した者がなるに決まっている。代表選なんかやったって、形だけのもんだよ。それは率直に認める。今の状態では、もう文句なし、小沢君に支持されない者が代表になる可能性はない》
さて、一方の小沢氏は10月26日の記者会見で、この渡部氏を最高顧問から外した理由だか感想だかを聞かれて、こう語っています。渡部氏についてもそうだけれど、藤井裕久財務相との距離感もはっきりうかがえて興味深いところです。
《最高顧問はですね、みなさんもどういう理解をしているか、最高顧問というのはどういう職責だと理解しているかによるんですがね、ボクは最高顧問というのは、功なり名をとげて、一般の議員とは別な高いレベルでいろいろとアドバイスしてもらったりなんだりというのが最高顧問っちゅうのだいたいのイメージじゃないかと。一般的には。
ところが、たまたま、藤井さんの例が出てきましたから。分かる? 言っていること。藤井さん! 最高顧問だったの! それで引退宣言もなさったの! その方が現役に連なって、しかも大事な、一番大事な国務大臣を担うっちゅうことになっちゃったもんですから、そうすると、じゃあ最高顧問っていうのはどういう性格の人かなと。
日本語と日本人が受けるイメージっていうのは。ということをちょっと私も考えて、現役でもってやると、やれる能力のある人、あるいは意欲のある人、それは最高顧問というイメージと意味合いとはちょっと違うのではないかと。だからキミが今、具体的に言ったけれど、渡部恒三先生はまだまだそういう現役で、現役で、前線でやれる能力もあるし、ご本人も意欲もあるんじゃないかなとすれば、最高顧問ということでない方がかえっていいんじゃないかなと。分かった?》
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