4498 パキスタン核とアメリカの狙い 宮崎正弘

イランが濃縮ウラン工場をさらに十箇所拡大と発表した傍らで、パキスタン大統領は核管理の責任を首相へ移譲。
不思議な発表がなされた。パキスタンのザルダリ大統領(ブッド前首相の夫君)は、核兵器管理の最終責任を首相へ移譲するとしたのだ(11月27日)。
とはいえ過去二年間のかれの政権で核管理は大統領府ではなく軍がしてきた。
二重の意味で不思議である。パキスタンはシビリアン・コントロールが謳われているだけで、軍は「国中国」というアンタッチャブルな存在。大統領の権限を無視する。
1999年に軍事クーデタで政権を掌握したムシャラフ前大統領は陸軍参謀総長を兼務したから軍ににらみが利いた。
が、いまのザルダリ大統領は、民間の富裕層出身で、一族の血縁地縁重視と腐敗汚職の噂が絶えず、国民の人気は低迷している。
現在の支持率は最低に近い。「首相に核管理の権利を大統領が移譲しようとしまいと、事実上は軍が管理しているのであって、なんにも実際的な効果はない」(NYタイムズ、11月29日)。
ならばザルダリ発言はいったい何の目的があるのか?
「いまどき核管理の建言云々なる発言は、国民を軍批判に向かわせて自己の失政をすり替えつつ、パキスタン国内のみならず国際社会に再び核管理の問題を提議して見せたのではないのか」と軍事専門家が語る(IHI,11月30日)。
アメリカはすでに二つのシナリオのもとに行動している。
アメリカの最終的狙いはパキスタンの安定であり、核兵器の絶対的安全管理、テロリストの手には渡さないという決意である。
パキスタンの核兵器は60発から100発と推定され、陸軍のキドワイ将軍が核管理の責任者だ。キドワイは前ムシャラフ時代から引き続き、特殊核兵器監理部隊を率いているという。
アメリカが用意したシナリオとは、第一はザルダリの不人気による大統領交代、あるいは反対野党からシャリフの再登場である。
第二のシナリオは軍事クーデタの可能性。現在パキスタン軍のトップはカヤニ将軍。どちらともアメリカは接触している。
同じ日にイランはウラン濃縮工場は十箇所に拡大した、と発表した。
   ♪
(読者の声1)貴誌前号に書評の出た、フレデリック・ビンセント・ウイリアムズの古本は、$194ドルもする。田中秀雄さんの翻訳は日本一ですよ。
注文します。和訳を読んでから、英文のを買おうかと思う。ラルフ・タウンゼンドの出版人ウイリス・カート氏から、「暗黒大陸・中国(WAYSTHAT ARE DARK)」の原本のコピー権を許されています。
ぼくはたった一冊残った、世界史で名だたるスパイだった、HECTOR BYWATERの「THE STRANGE INTELLIGENCE」を持っている。$300ドルだった。他にも、「VALOR OF IGNORANCE」BY HOMER LEAやら、「HOMER LEA、SUNYAT-SEN」ANSCHEL、「CHAN TSOーLIN IN NORTHEAST CHINA、1911~1923」by McCORMACKなどの大古本や、「THRILLING STORIES OF THE RUSSIAN JAPANESE WAR」by J MARTIN MILLER(1904)という写真大入りの絶版も持っている。
これは手に持てないぐらいの重さです。$200だったと思う。
英米の海軍は凄く日本海会戦の勉強をしていたことが判る。JACK LONDONがSFクロニクル記者だった時代、朝鮮半島を北上する日本軍の軍馬に随行した記録(1904)もどこかにある。
他に日本の新聞社が描いた日清日露戦役の絵本が欲しいが、カネを貯めているところ(笑)。(伊勢ルイジアナ)
(宮崎正弘のコメント)奇観本のご趣味もおありですね。拙宅は狭く本棚も十分ではないので羨ましい話を聞きました。
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