4517 ルース米大使が日本側に激怒 古沢襄

日米関係は最悪の事態を迎えようとしている。オバマ大統領と親しいルース米大使は温厚な人柄で知られるが、四日、岡田外相と北沢防衛相を前に顔を真っ赤にして大声を張り上げ、年内決着を先送りにする方針を伝えた日本側に怒りをあらわにした。
鳩山首相はオバマ大統領との会談で米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題について「私を信じてほしい」と早期決着の姿勢をみせ、日米閣僚級の作業グループ(WG)で検証作業を行うことになった。岡田外相と北沢防衛相も年内に決着させる積極的な姿勢をみせている。
しかし、その後の鳩山首相は社民党の反対に苦慮し、ズルズルと決定を先延ばして、遂には普天間移設の年内決着断念した。鳩山首相は、過去に日米が合意しているキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市辺野古)移設もまだ選択肢として残っているとしながら、他県や米領土であるグアム移設まで口にする混乱ぶりをみせている。
この状態下で四日、日本側から年内決着を先送りにする方針をルース米大使に伝えられた。年内決着を先送りする日本側の動きは、すでに米側に察知されていた。岡田外相、北沢防衛相の積極的姿勢と平野官房長官の消極的姿勢が食い違っていたからである。閣内の調整が難航しても鳩山首相の裁断で年内決着に向かうと米側は期待した。
しかし鳩山首相みずからが「年内決着と言ったことはない」と決着の先送りをしたことによって、米側の怒りが爆発したことになる。米側とすれば鳩山政権の態度は”二枚舌”としか映らない。本国政府からもルース米大使に訓令が相次いでいるという。
米側とすれば日米合意が破棄されれば、米軍普天間飛行場の米海兵隊ヘリコプター部隊と米海兵隊八〇〇〇は普天間に駐留することになる。司令部機能をグアムに移設させる必要もなくなる。朝鮮半島有事の場合には最初の突撃部隊が、沖縄にあることは望ましい。
米側の本心は普天間移設が白紙還元されることにあるのではないか。この問題に関する米大使館と米国務省の交換電文は、いずれ情報公開法によって明らかになるが、それまではルース米大使が日本側に激怒した裏側の事情は分からない。
<米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題をめぐり鳩山由紀夫首相が年内決着を断念したことに、米国側が激怒した。
4日午後、日米合意に基づくキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市辺野古)移設を念頭にした、日米閣僚級作業グループ(WG)の検証作業が開かれた外務省4階大臣室隣りの接見室。
関係者によると、少人数会合に移った後、米国のルース駐日大使がそれまでの穏やかな語り口を一変させた。「いつも温厚」(防衛省筋)で知られるルース氏は、岡田克也外相と北沢俊美防衛相を前に顔を真っ赤にして大声を張り上げ、年内決着を先送りにする方針を伝えた日本側に怒りをあらわにした、という。
いらだちを強める米国側の姿勢は、会合後、首相官邸を訪れた岡田、北沢両氏から鳩山由紀夫首相にも伝えられたとみられる。
伏線はあった。鳩山首相は4日、「グアムに全部移設することが、米国の抑止力ということを考えたときに妥当か検討する必要がある」と記者団に語り、年内決着どころか、グアム移設も含め検討する考えを示していたのだ。福島瑞穂消費者・少子化担当相(社民党党首)は「選択肢の幅が明確に広がったことを大変歓迎している」と強調した。
もともと日米合意に基づく普天間移設計画は、普天間の米海兵隊ヘリコプター部隊を辺野古の代替施設に移し、司令部機能などはグアムに移設させることが柱だ。ヘリ部隊も一緒にグアムに移設した場合、有事の際にグアムからヘリ部隊が県内に展開する地上部隊をピックアップしに沖縄に立ち寄る手間がかかる。政府関係者は「ヘリ部隊と一体のグアム案は想像をはるかに超える」と語る。
これまでの米軍再編協議で議論された案は、いずれも県内が対象だった。移設先に県外を持ち出せば日米作業グループの検証作業は困難になる。岡田外相が米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)への統合を主張する事情でもある。
一方、海兵隊の戦闘機とヘリを分散移設させる案も政府・与党内にある。ヘリ基地を辺野古に隣接するシュワブ、ハンセンいずれかの陸地に建設し、海兵隊の戦闘機については嘉手納に統合する案だ。ただ、米側は部隊運用上の理由から日米合意が唯一の選択肢との立場。与党内からは「実現可能だったら、とっくにやっている」(政務三役)と嘆きの声も出ている。(産経)>
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