菅、亀井の口論でもめた基本政策閣僚委員会で激しい応酬の最中、鳩山首相ら閣僚は20分間も押し黙ったままだったという。会議に出なかった民主党の「最高実力者」小沢幹事長は、内閣を束ねられない鳩山首相に手をかす素振りもみせない。
「やはり小沢さんは鳩山を見捨てている」と党内の消息通は語る。
菅、亀井の喧嘩はいち早く平河町を駆け巡った。ポスト鳩山に擬せられている両者のサヤ当てとみる向きもある。産経新聞の解説が臨場感があって面白い。それにしても鳩山さんは、どうなっているの?よく喋るが、顔のみない影の薄い首相は戦後政治でも珍しい存在である。
<「やはり連立政権を維持していくことが政権の安定につながるから、ここは我慢のしどころだ」
■首相に揺さぶり
首相、鳩山由紀夫は8日朝、記者団にこう心境を語った。米軍普天間飛行場移設問題をめぐり、連立離脱をちらつかせた社民党に続き、今度は国民新党が首相の足元を揺さぶっていた。
8日午前9時、首相官邸3階の南会議室。第2次補正予算案など新たな経済対策を決める基本政策閣僚委員会は、冒頭から緊迫した空気が漂っていた。
「日本郵政社長に斎藤次郎元大蔵事務次官を決めたときも私は文句を言わず認めた。(国民新党が求めた)郵政株式売却凍結法を通した恩義は感じないのか」
口火を切ったのは副総理・国家戦略担当相の菅直人だった。緊急経済対策規模を1千億円上積みし7・2兆円にしたにもかかわらず、なお納得しようとしない郵政改革・金融相の亀井静香に詰め寄ったのだ。
「お前、そんなことまで言うのか。国民新党のためというが、3党合意で決めた内容じゃないか」
■20分間の応酬
亀井も激しく言い返し、言葉の応酬は鳩山をはじめほかの閣僚が押し黙る中、約20分間続いた。
出席者の一人は「最高権力者同士の会議のはずが、まるで幼稚園児のケンカだった」と漏らしたが、これには伏線があった。
もともと菅は亀井の財政出動路線に批判的で、「財政出動が大きければ大きいほどいいなんていうのは恐竜時代」と亀井を当てこすったこともある。その菅は、本格化する平成22年度予算案編成作業を控え、新経済対策を4日中に決定するつもりだった。
ところが、国民新党が増額を要求したため折り合いがつかず、8日に先送りされた。菅は4日に、亀井に3度にわたり電話をかけ「なぜ協議に出てこないのか」と出席を促したが、その電話すら無言で切られていた。業を煮やした官邸側が別ルートで国民新党側に「連立離脱する覚悟はあるのか」と脅しをかける場面もあった。
だが亀井は終始、強気で妥協するそぶりすらみせない。結局、菅も予算上積みを認めざるを得なかった。
衆参両院で8人しかいない国民新党や12人の社民党が強い姿勢で臨めるのは、民主党の「最高実力者」である幹事長、小沢一郎が問題解決に動こうとせず、事態を放置しているからだ。
「連立内にいろいろ議論があるのは大いに結構なことだ。それは民主主義の手法、プロセスとしては、当たり前のことだ」
■連立維持を優先
小沢は7日の記者会見でもこう述べるなど、連立維持を優先させる構えを崩さない。小沢がそう意思表示している間は、政府がいかに国民新、社民両党にいらだちを深めようと、連立の枠組みを壊したり、組み替えたりすることは鳩山にも許さないという暗黙の了解がある。
政府への不介入を決め込む小沢と、その影に縛られ連立の手かせ、足かせで思うままに動けない鳩山政権。その弊害は経済分野にも及んでいる。
◇
■経済無策、「政局」ばかり
世界経済の先行き不安、デフレや円高が解消されない中で、鳩山政権では経済政策の「司令塔」が見あたらず、政治家にとって理解しやすい「政局」ばかりが優先されている。
財務相、藤井裕久は8日の記者会見で、第2次補正予算案に盛り込む新たな経済政策の財政支出が7・2兆円に膨らんだことについてこう繰り返した。
「3党連立であるとしか申し上げられない」「3党連立の仕組みがあることを素直に受け止めている」。藤井は直接触れなかったが、国民新党の意向だと言いたかったようだ。
補正予算決定に至る鳩山政権の軌跡は、首相の鳩山由紀夫が官房副長官を務めていた7党1会派による非自民連立の「細川政権」を連想させる。
細川政権は平成5年8月、「赤字国債を発行しない」と公約して発足した。だが、バブル経済崩壊やコメ不作で半年後の6年2月、4年ぶりに赤字国債(3兆1338億円)を発行する予算案を編成した。
くしくも当時の蔵相は藤井だ。藤井が当初「後世に恥を残す政策をとるべきでない」と反対した赤字国債発行再開を最終的に認めた理由の一つが「連立の事情」だった。
「補正ごときでこんなにもめて、本予算はどうするのか。この内閣はどうなるんだろう。こんな調子で本当に予算は組めるのか」
郵政改革・金融相の亀井静香の欠席で第2次補正予算案を決める基本政策閣僚委員会が流れた4日夜、閣僚の一人はこう漏らした。
■マニフェスト予算
「今週中に要望をまとめて優先順位をつける。党として要望する機会をつくってもらいたい」民主党幹事長の小沢一郎は7日の記者会見でこう方針を示した。
小沢は14日にも、22年度予算案の重点要望を鳩山に提出する。幹事長室が受けた陳情は、内容がマニフェスト(政権公約)に合致しているかどうかで選別されていく見通しだ。
マニフェストは「国民との契約」(鳩山)であり、先の衆院選勝利の原動力だった。可能な限りマニフェストを重視した予算編成を望む党側と、財政規律を少しでも進めたい官邸の意向はときに矛盾する。
さらに社民、国民新両党の思惑がからめば難航は必至だ。本来は鳩山のリーダーシップが求められる局面だが、その存在感は薄い。
マニフェストの目玉政策である子ども手当も高速道路の原則無料化も、財源のめどは立っておらず、担当閣僚同士の「言いたい放題」(政府高官)が続く。
「菅氏をトップに国家戦略室を作ったが、スタッフが極めて乏しく、国家戦略になっていない」首相は2日、前国会議員が主催した講演で、ひとごとのようにこうぼやいた。
■成長戦略の欠如
鳩山政権発足時から「欠如」が指摘されているのが成長戦略だ。これは中長期的な経済政策を持っていないことを意味する。
10月2日、霞が関の合同庁舎の会議室に菅ら内閣府の政務三役らが集まった。円卓で相対したのは、気鋭の民間エコノミスト5人。鳩山政権下で始まった政府とマーケット関係者による経済情勢の意見交換会だ。
「声の大きい人ばかりにお金を使うべきでない。拡張財政は効果が小さい」
新政権の予算編成がバラマキに陥ることを警告したのが、BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎だった。河野は政府がまとめた緊急雇用対策や「無駄の撲滅」といった目標には一定の評価を与えるものの、「マクロ経済の中長期的な展望に欠ける。財政再建策も早急につくるべきだ」と指摘する。
「民主党のマニフェストをみると、国民生活第一にシフトしている。長期的な課題と(政策への)ウエート(重み)の付け方がないといけない」
12月2日、東京・芝の東京プリンスホテルで開かれた経済同友会会合。代表幹事でリコー会長の桜井正光は、事業仕分けの成果を語った行政刷新担当相の仙谷由人にこう語った。
企業であれば、経営戦略と中長期の経営計画の双方を必ず立てる。桜井はそうさとし、「経営戦略がないと、トータルの予算はなかなか組めない」とくぎを刺した。仙谷は神妙な面持ちでうなずき、こう返すのがやっとだった。
「成長戦略は、菅さんが近々につくってくれると思う」(敬称略=産経)>
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4547 補正ごときでもめて、本予算はどうするのか 古沢襄
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