4618 天皇陛下の「政治利用」に関する自民党の検証会 阿比留瑠比

首相官邸側が宮内庁に対し、15日の天皇陛下と中国の習近平副主席との会見をごり押しした問題で、自民党は16日夕、「天皇陛下の政治利用検証緊急特命委員会」の会合を開き、事実関係の検証を行いました。その件に関して、後輩の田中記者がメモ起こしを送ってくれたので、ここで報告します。いろいろと思うところはありますが、私があれこれ解説するより、これを読んでいただいた方が状況がよく分かると思うので、そのまま(長すぎるのでごく一部は割愛)載せておきます。
自民党はまあ、あれこれダメな点は多いのですが、こういう会合を記者にフルオープンにするところがいいですね。民主党側は小沢一郎幹事長の影響なんでしょうが、秘密主義が多く内部での議論が見えにくいところがありますから。以下のやりとり、非常に興味深く、問題の所在をクリアにする内容だと思います。
外務官僚A (日本側は)秋頃から、国家指導者の一人という言い方ではあったが(来日の)調整を聞いて、日本側に連絡するようにということを再三、あらゆるレベルの接触、チャネルを通じて中国側に求めてきた。中国側は内部の事情があったのか、決済が取れなかったのか、中々、返事がなかった。 
12月中旬に訪日する可能性が高いということで、特に楊潔篪外相が日本を11月に訪問した際、19日に同行者から私に内報があった。当方は内報を受け、内々、宮内庁に打診した。結果的には、その後、正式に伝達があり、26日に外務省の担当局長、アジア大洋州局長が宮内庁に訪問して、改めて陛下ご引見についての打診をした。
結果的には、「1カ月ルールがあるので、困難である」という返事を頂いたので、当方はまず30日に不可能であると中国側に連絡した。12月3日に北京の中国外交部副部長、王光亜氏から我が方の在中国日本国大使に要請が改めて天皇陛下ご引見の要請があった。9日、こちらの崔天凱中国大使から官房長官に再度に要請があった。
10日に「15日午前にご引見が実現する」旨の内報が宮内庁からあった。それを受け、当方のアジア局長から在京の孔鉉佑公使にその旨、伝達した。
宮内官僚 11月26日に外務省の担当局長に我が方の式部官長に習副主席の陛下との謁見について打診があった。これまで守られていた1カ月ルールに照らして困難であるということを翌27日に返事した。
その後、12月7日、官房長官から羽毛田長官に「日中関係の重要性に鑑みてぜひ陛下のご引見を実現できないか」というお話があった。その際、羽毛田長官から、「今まで1カ月ルールを守ってきた、このルールは、陛下以下皇室が行う国際親善活動は政府なりが行ういわゆる外交とは次元を異にして純粋に友好関係を進めるために行っているものであって、国の大小とか我が国との色々な懸案の重要性等々に左右されずに等しく各国と友好関係、親善活動をやるという皇室の今までの在り方を踏まえてやっている、
その中での1カ月ルールは守っていきたい」と申し上げ、一度はお引き取りを頂いた。ただ、10日になり、再度官房長官から「総理の指示もありなんとかこの引見を実現するように」とのお話があったということであり、羽毛田長官の方で「ご指示とあらば宮内庁としては組織上、それに従うべき立場にあるので、陛下に引見をして頂くようにお願いをする」という状況になったが、その際、宮内庁の考え方については再度、ご説明申し上げた。
そして、15日の引見に関して10日にそういうことになり、11日になり陛下の日程は15日の週の日程は引見がない状態で公表されており、15日の日程が追加の形で公表になった。その関係で宮内記者会からどうして追加があったのかという説明が求められ、長官がいきさつを説明し、こういうことは二度とあってはほしくないという説明をした。
■ 質疑応答
石井みどり氏 自民党の元首相が働きかけたとの報道があるが、事実は。どこにあったのか。それに対し、外務省、宮内庁がどういう説明をしたのか。
世耕弘成氏 副主席は国賓、公賓、公式実務訪問賓客、実務訪問賓客という中で実務訪問賓客という決定がされているがどういう判断か。閣議了解事項だと聞いているが。実務訪問賓客に対して霞が関や国会周辺で国旗掲揚が行われているが、誰がどういう形で決めたのか。ウルグアイの大統領も同じ日に来ているのに、ウルグアイの国旗を掲げず中国のナンバー6の副主席に対してなぜ国旗を掲揚したのか。
平沢勝栄氏 天皇の行われることについて、国事行為とか公的行為とか私的行為とか言われているが、宮内庁はどう理解しているか。憲法7条で大使、公使の接受はあるが、それ以外の外国賓客は公的行為で、それも内閣の助言と承認に基づいてやっているのか。
山本一太氏 経緯で確認。外交部会で外務省から公式に中国に一度、断ったという説明があった。夜のニュースを見ていたら、官房長官が一回外交ルートで断ったことを知らなかったという話があって、気になっている。知らなかったはずないと思う。どんな連絡をしたのか。官邸が知らなかったってことはあり得ないと思う。
外務官僚A 先ほど、元総理から働きかけがあったかどうかというご質問があった。元総理から働きかけがあったかどうかは承知していないが、元総理に対して1カ月ルールの説明を行うようにという官邸からの指示があり、その説明を行った経緯がある。
平沢氏 元総理って誰ですか。
外務官僚A 中曽根元総理でございます。12月の7日前後だったと思います。
山本氏 官邸からの指示で?
外務官僚A 1カ月ルールを説明して頂きたいということで説明した経緯がある。一旦断っていたという今の質問についてだが、30日の時点で官邸とも調整した上でご引見は難しい、不可能だということで説明はしている。中国側に答えている。
山本氏 そのことは官房長官は知っていたのか。外交ルートで断ったということは知っていたんですね。
外務官僚A 官邸とも調整しております。
平沢氏 官邸って誰?
外務官僚A 官房長官、それから総理でございます。
石井氏 中曽根元総理は説明を聞かれてどうおっしゃったのか。
外務官僚A 説明をして、「了解した」ということでございます。
外務官僚B 実務訪問賓客として確定した経緯は、実務訪問賓客というのは、国賓や公式賓客にならないが、国賓や公賓の対象者となりうる人間に対して接遇の一つの方法として運用してきている。今回は、公式実務賓客ほかの案件がすでにその時期に入っており、種々の事情で公式実務賓客を2つ重ねて行えないと運用しているので、実務訪問賓客とした。
世耕氏 その公式実務賓客とは、ウルグアイ大統領か。
外務官僚B そうではない。ウルグアイ大統領も実務訪問賓客。そういうことが予定されていたが、最終的には公式実務賓客にならなかった。実務訪問賓客は閣議案件ではない。公式実務賓客までは閣議了解が必要だが。それぞれのスキームにおける接遇だが、実務訪問賓客は中国もウルグアイも同様だが、原則として街頭旗、街路旗は掲揚しない。これも例外はあり、今回については中国とのハイレベル交流の一貫として、この訪問を非常に重視するということで、歓迎の意を表するということから、中国の国旗を街路旗として掲揚した。
複数の議員 誰の指示か。
外務官僚B 外務省の中での判断。関係する局課が相談し、最終的に大臣の了解を得た。最終的に関係局課で相談の上、大臣にお諮りし、大臣に決定頂いた。
宮内官僚 今回のご引見がいわゆる天皇陛下の行為の分類ではどれにあたるかという質問だが、公的行為であると認識している。国事行為は直接、内閣の助言と承認により行うと憲法に規定されているが、公的行為についても最終的には内閣が責任を負うという解釈が確立している。具体的には色々、積み重ねがあり、外国の接遇の場合の内閣の関与の仕方としては、公式実務訪問賓客までは閣議決定を経てこういう処遇をすると決まるが、それ以外は実務的に宮内庁、外務省と官邸等々と調整した上で行う。
衛藤晟一氏 30日ルールは誰がどう決めたのか。どう運用してきたのか。こういう経過の働きかけは中国大使館からあったのか、党からあったのか。働きかけと決定の経過を明らかにして。
田村憲久氏 1カ月ルールは未だかつて破られたことはないのか。特例が今まであったのか。国旗の掲揚は政治家からの要請はあったか。
西村康稔氏 16年に文書を出した時点では過去、抵触した例があったということだが、最近抵触した例は。そもそもこのルール、小沢氏の発言によると宮内庁の役人が作ったと。確かに文書は役人が作ったことになっているが、政治レベルでも理解し決めたルールだと思う。小沢の理解は間違っているのでは。小沢幹事長の発言の「それよりも優位性の低い行事を休めばいい」と不遜な発言だと思う。
宮内官僚 1カ月ルールは平成7年に宮内庁式部官長から外務省儀典長あてに、別件願いについては1カ月以前に申し入れてくれと文書を出しており、さらに平成16年2月に、これまでやむを得ない事情で弊害が散見されたことを踏まえ、16年にはこの1カ月ルールを今後はしっかり守って頂くようにというお願いを各方面にしてくださいと。
バックグラウンドは、15年1月に陛下が前立腺ガンの手術をし、その後も色々な治療をされていたという状況、15年12月23日に70歳という高齢者と言えるような節目の年齢になられたこと。こういうことを踏まえて16年以降は例外のないように、とお願いしている。16年2月以降、例外は17年2月の1件。タイの上院議長がお見えになった時にわずか1日だけ間に合わなかった。スマトラ沖の大地震、大津波の被害があった直後なので、そういう事態で1日ということについては受けるべきだろうと。
世耕氏 1カ月ルールは、天皇陛下は外国の客と会う時に大変な準備をされると聞いたことがある。相手がどんな話を振ってきても、会談が何時間予定をオーバーしても対応できるだけの話題や相手の人となりをたたき込むので大変な準備をすると聞いているが、1カ月ルールとの関係は。
宮内官僚 おっしゃる通りで、仄聞しておるところでは色々な勉強をなさる。ケース・バイ・ケースだが、お来しになる賓客の国の大使が帰国し、話を聞いたり、それに準ずるその国に詳しい方々の話を聞いたりして色々、事前に勉強なさっていることは聞いている。単に20分、30分の会見だけでなく、準備の時間も多々あるので、そういうことも踏まえて1カ月ルールがあることは私どもも認識している。
山本氏 中曽根元総理に説明に行ったと言った。民主党の某大臣があたかも自民党の総理経験者が会見を申し入れたみたいなことを言っている。中曽根元総理が陛下の1カ月ルールを破って会見をせよなどと言ったはずがない。大臣の発言は極めて不正確だと思っているし、不正確な事実の下で言ったのなら大問題だ。
西田昌司氏 偽メールと同じだよ!
山本氏 例えば中曽根元総理が聞いたとしても、1カ月ルールを破って会見を設定した判断は民主党政権であり総理だ。中曽根総理に説明に行けと指示があった理由は。全体の雰囲気の中で、中曽根元総理が1カ月ルールを破ってでも会見をしろと言ったのか。
鴨下一郎氏 この(羽毛田信吾)長官の話の中で、一旦終わって再度官房長官から総理の指示を受けてと。経過を詳しく。平野長官は一旦、納得したのか。その後、もう一度、要請があったという経緯は。報道なので事実関係は分からないが、平野氏は恫喝に近い形で要請したと聞いているが。
外務官僚A 前原大臣の発言に対してコメントは控えたい。1カ月ルールについて中曽根元総理に説明したところ、「よく分かりました」ということだった。
山本氏 なんで行けと言われたのか。
外務官僚A 説明するようにということだったので。
不明議員 誰から、なぜ行けと言われたのか。
外務官僚A 官邸の官房長官から説明に行ってくださいと。
西田氏 私たちが奇異に感じたのはなぜ前原大臣がそういう発言をしているのか。閣議の中でやっているのか。まったく所管外ではないか。 
小沢さんの発言はとんでも無い発言だ。ルールで書いてなければやっていいとか、こうういう話を言っているが、小沢氏の政治姿勢そのものだ。天皇陛下の存在は憲法で規定してあるが、天皇陛下は憲法の枠外に元々、おられる存在だ。
今、日本国憲法の中でやっているが、元々慣習、伝統の上におられる。その積み重ねが様々なルールになっている。天皇陛下に対する態度として傲岸不遜というよりもあるまじき態度だ。そこははっきり自民党がしておかないと。公式的な法律論じゃない。特に民主党政府が行った在位20周年式典はなんですか。松野官房副長官が寝ていたじゃないか! 
外務官僚A 元総理の件は、先ほどの説明の通り。前原大臣がどういう背景、趣旨で発言したかを忖度することは差し控えたい。経緯を説明するようにということで1カ月ルールを説明し、ご理解頂けたということが全てだ。
外務官僚C 閣議には閣僚しか出ていない。閣議、閣僚懇でどういうやりとりが行われているかは承知していない。
宮内官僚 官房長官から羽毛田長官に電話があったのは12月7日。紙に書いてあるようなことを長官が申し上げ、官房長官からは、「言うことは分かるが、日中関係の重要性に鑑みて何とかしてほしい」という話があったと聞いている。
相当、侃々諤々の議論をしたようだが、やりとりの中身は承知していない。7日は平行線というか、やりとりがあった後で引き取られたと聞いている。再度、10日には「総理の指示もあるので」という形で、いわば宮内庁をも統括する総理、官房長官からのご指示があったと理解している。
下村博文氏 我が党のスタンスを明確にする必要がある。これはもう政治利用というよりは政治圧力だ。宮内庁に対しても天皇陛下に対してもそう断ぜざるを得ない。官邸だけでなく小沢幹事長の14日の発言も、天皇陛下のお言葉を忖度したようなことを言うこと自体が不遜としか言いようがない。訪韓した時も陛下の訪韓については皆さんが歓迎してくださるなら結構なことだと発言。立場を超えた、正にわきまえていない、不遜な政治利用を超えた不遜な対応としか思えない。
石井氏 小沢幹事長の話で見過ごせないのは、天皇陛下の体調のことまで言及している。今回、断ったのは外交プロトコルに則らないということだけで返事をしたのか。陛下の体調云々ということではないのか。
平沢氏 宮内庁長官のところに今回の訪日の件で要請があったのは官房長官だけか。他にあったか。(宮内庁)長官は2回目の時に断ってほしかった。どう聞いているか。1000通のメールや手紙の内容は。
宮内官僚 宮内庁長官からは1カ月ルールを厳守してほしいと断った。一部報道で陛下の体調を理由にして断ったと流れたので、そうではないとメディアに明言している。長官に電話があったのは平野博文官房長官から2回あったというのは承知しているが、それ以外にあったかどうか、あったともなかったとも聞いていない。
二回目断ってほしかったということだが、宮内庁も内閣総理大臣を主任大臣として内閣総理大臣の下にあるので、指示とあれば組織として受けざるを得ない。但し、陛下をお守りする立場からこの問題について宮内庁長官としての考えをはっきり説明させて頂くということで、取材に応えて国民に説明をしたという経緯だ。
メールなどは1000件を超えているというところまでは聞いている。中身はほとんどがしっかりやれ、長官の言っていることはその通りだという中身だと聞いている。
稲田朋美氏 憲法3条の天皇の国事に関する全ての行為には内閣の助言と承認を必要とし、内閣が責任を負うとある。公的な行為だが、憲法の教科書によると政治に影響を及ぼすものであってはならず、単なる私的な行為ではないので、内閣の直接又は間接の補佐の下に内閣が責任を負うと書かれている。内閣が責任を負うという意味は、最終的な判断は内閣がするのか、天皇陛下が断ることはできるのか。
宮内官僚 内閣が言うことは陛下は常に尊重されているので、よほどのことがない限り、内閣の提案、判断を尊重し活動されている。
石破茂氏 先程来出ている前原大臣の件だが、誰かから、つまり中曽根元総理のところに単に1カ月ルールの説明だけに行くはずはない。その前に何かがあったのか。曲げてまでご引見賜りたいという話はなかったか。
外務官僚A 一切ない。
石破氏 とするならば、いかなる根拠に基づいて発言したのかということは極めて重大な問題だ。何の根拠もなく、どこかで聞いたような話を公式の場で一国の国務大臣が言うというようなことは許されて良いはずはない。
国土交通相に対し、どのようなことなのか我が党として公式にきちんと問いただすことでなければならない。私どもとしてきちんと見解を明らかにし、内閣が責任を負うというのはこれまた憲法の教科書だが、最終的には内閣不信任になる、責任を問うということはそういうことだ。
…やはり皇室がかかわると、国民の琴線に触れるというのか、みんな黙ってはいられないという気持ちになるようですね。私もそうですが。
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