米国のパキスタン援助75億ドルは絵に描いた餅に終わる?険悪化する米―パキスタン関係の本質に横たわる要素は米の傲慢、パの不信感。
オバマ大統領はパキスタンに対して向こう五年間に75億ドルの援助を約束した。ザルダリ大統領にとっては、人気急落した自己の政権維持のために、この援助は死活的である。
ところが。
第一に米大使館員65名のヴィザ更新がならず、パキスタンを去った。現在パキスタンにおける米国の外交業務は六割ていどしかなされていない。
駐在武官、情報関係者、CIA関係、軍の部品技術者なども含まれており、近く500名規模の大使館員を800名規模に拡大する予定だが、ヴィザの発給が決定的に遅れている。「両国関係は危機的状況だ」という。
第二にパキスタン国内を移動するアメリカ大使館の外交ナンバーをつけた車両が、チェック・ポイントで検問をうけ、ながながと待たされる。
これでは米国大使館の車両がテロの標的にもなりやすく、パキスタン政府に改善を求めても、馬耳東風。パキスタン当局は「われわれは戦争状態にあり、一つの例外も許されない」と検問の手をゆるめず、末端でも米大使館業務に支障が出ている。
第三はパキスタン国民にとって「米国は味方ではなく、アメリカ人は傲慢である」というメンタリテイィの拡大である。
一部の知識人には親米派、知米派もいるが、大部分の国民は貧困。「米帝のアフガン侵略の手伝いをパキスタンがする必要はない」と考えている。
こうして米国が供与したゲリラ討伐の武装ヘリコプターは稼働できない。理由はパーツ交換が技術者にヴィザがおりないために停止状態にあるからで、年間10億ドルの現行のパキスタン援助プログラムも、その実行要員にヴィザがおりない。
パキスタンはまったく友好的ではない、と大使館高官がNYタイムズのインタビューに応じている(09年12月18日付け)。
そういえば南ワリジスタンにおけるタリバン討伐作戦も、どこかゲリラ側と打ち合わせがあるかのように、パキスタン軍を三万投入しても成果うすく、大半のタリバンはほかの地域へ移動してしまった。
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4622 きしむ米国とパキスタン関係 宮崎正弘

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