4633 スペインが中国の江沢民氏に逮捕状を出す 伊勢雅臣

スペインでは司法当局が九八年、チリでスペイン人を弾圧したピノチェト元大統領の罪を認める判決を下し、その要請に従って英国が、国内に滞在していたピノチェトを逮捕した。
また〇六年には、グアテマラのノーベル平和賞受賞者であるリゴベルタ・メンチュウ氏の訴えを認め、エフライン・リオス・モント将軍などを大量虐殺(ジェノサイド)、拷問などの罪で引き渡すよう、同国政府に要求した。被告が自国民でなく、犯罪が行われたのも自国外だとしても、人権犯罪については普遍的管轄権を適用するとの判断だ。
そして〇九年十一月には、中国の江沢民前国家主席らを法輪功学習者へのジェノサイドの罪と拷問の罪で起訴することを認めた。二年間に及ぶ調査を経た上でのことだ。
江沢民と言えば法輪功弾圧を開始した人間。中共の内部統計によれば、九九年七月から〇一年十月末までに千六百名が弾圧政策の下で死亡している。
原告は中国人被害者十五人。被告は江沢民のほか、「六一〇弁公室」(法輪功迫害の秘密機関)のトップだった羅幹、元商務部長の薄熙来(現重慶市委書記)、前北京市委員会書記長の賈慶林、規律検査委員会書記だった呉官正ら計五人。
イグレシアス弁護士は「普遍的管轄権への申請により、この事案は決定的な段階に入った。スペインの司法制度は、二十一世紀の中国で起こっているジェノサイドの被害者を弁護する。そして刑事免責が適用されることはない。集団虐殺や拷問は、中国の国民だけでなく、国際社会全体に対する犯罪だ。スペインは人権と普遍的公正を擁護する」と述べている。
司法当局はすでに外交ルートを通じ、被告らに対して事件関与についての質問状を送付している。もし六週間以内に回答がない場合、国際逮捕状を発行する。
有罪が確定されれば、被告は最低二十年の禁固刑となる可能性がある。
ただスペインでは被告が出席しなければ裁判は開けない。しかし被告がスペインと関連条約を結んでいる国に入った際、その国に引渡しを要請することができる。
この問題について大紀元報が中共の各機関に電話で取材したところ、次のような反応が見られた。
中央司法部事務室の職員――重大事件であり、司法部として応えられないと答えた。
最高検査院と最高裁判所の職員――「このような驚愕的なニュースにコメントはできない」と回答した。
外交部スポークスマン事務室の関係者――「海外で本当に彼らを提訴することができるなんて、思いもよらなかったことだ」と、その場で驚愕の反応を隠せなかった。
そのほか、情報筋の話として、「公安部では上層から末端まですでにこの事を知っており、中では痛快なニュースだと拍手する人も少なくない」「公安部は派閥林立で、江沢民らを恨んでいる者は少なくない。ジェノサイドと判定されたことを内部闘争の武器にして、今後、さらなる劇的な事件を引き起こす可能性がある」とも報じている。
江沢民らをジェノサイドの執行者と、事実の通りに認定することは、文明社会においては本来当然過ぎることなのだ。
ただ中共政権は殺戮を止めろと言われても決して止めることはない。なぜなら殺戮抜きでは政権が維持できないからだ。
法輪功は〇五年、日本でも大阪地裁に江沢民らを訴えたことがあるが、却下されている。「拷問、虐待行為が行われたとされる場所は日本ではなく中国だから」がその理由だった。当時原告団は「日本が正義の立場に立ち、利益に誘惑されることなく、悪いものに対して悪いとはっきり言ってほしい」と訴えていたが、そう簡単には行くまい。
中国に「暴力を放棄せよ」と訴えるのは「政権を放棄せよ」と求めるのに等しく、日本の国にそこまでやる勇気などないだろう。
被告の一人である薄熙来は現在は重慶市委書記になり、「平安重慶」なる暴力団一掃キャンペーンの下で、無辜の法輪功学習者の逮捕も忘れないのは相変わらずだが、その彼が年内に来日する。「貿易・投資面での協力拡大に加え、民主党政権との接触が目的」(時事)だそうだが、民主党は平気でこの人物と握手することだろう。そして一般国民はそれに関しては一切無批判のままだろう。
中共のジェノサイドを批判する国際圧力を形成しよう。それによって中共政権がダメージを受け、やがて崩壊へと繋がって行けば、中国国内はもとより、周辺諸国も「暴力」から免れることができることになろう。
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