昨日は、深夜東京から帰り、天長節の良き日に触れることを控えざるを得なかったことを書いた。今上陛下のお誕生日を選び、東条英機ら7名を絞首刑にしたGHQとマッカーサーの悪魔的な思惑は、まことに、卑劣で無念だが、見事に「戦後日本」を造る起点となっている。
そして、このGHQに迎合する戦後のなかで、今の内閣と与党が生まれたのである。彼らにおいては、GHQへの迎合が、中国共産党への迎合に転化している。
これを象徴的に見せてくれたのが、十二月の小沢民主党幹事長と百四十余名の国会議員を含む六百名以上の訪中と、見返りの習近平というウイグル人大量虐殺の責任者と天皇陛下の会見であった。
ナチスとの戦いというイギリス存亡の危機に立ち向かったチャーチルは、落選中はイギリスの歴史を勉強し、政治家の使命感は自国の歴史を学ぶことによって得られるものだと述べた。
しかし、我が国、民主党の幹事長の韓国での発言をみると、歴史観まで迎合していることが明らかである。というより、自国の歴史を学んでいない。これでは政治家としての使命感をもてるはずがない。
「戦後」に心地よく泳ぎ、歴史認識としては村山談話しかなく、村山歴史観を吹聴して周辺諸国の覚えめでたきを得るということは、つまり、日本人としての使命感を放棄していることに他ならない。
この度の、小沢幹事長らの中国韓国訪問は、まざまざとこのことを見せてくれた。国民は「戦後」という醜い姿を、彼らに看ることができたのである。そして、こともあろうに、この彼らが、政府与党として我が国の操舵室を占拠するに至っているのだ。
そこで、国際政治のなかで、速くもこの彼らの政府が、何をもたらしつつあるかを一つ指摘したい。これはマスコミがあまり報じていない。
まず、国内であれば、母ちゃんのお金に頼って総理になろうが、土建屋を締め上げるのが政治力だと思っていようが、朝言うことと夜言うことが違おうが、まだ堪えることができる。
しかし、相手国のある国際政治においてはそうはいかない。国家の運命を左右することになる。
鳩山総理大臣と与党幹事長は、国際政治において、たぶん自覚なく、国家の運命を狂わしつつある。自覚なくであるから、その反動が現れ始めれば、驚くか、居直るしかできない。例の、宮内庁長官を罵り、質問する記者を憲法を読んだかと恫喝した時のように。
私が憂慮するのは、日本時間二十二日未明、アメリカのクリントン国務長官が、日本の藤崎駐米大使を国務省に呼び、日米関係の現状への認識を示し、米軍の普天間飛行場の移設に関する日米合意の早期履行を求めるアメリカ政府の立場を正式に伝えたということである。これは、極めて異例なことである。
鳩山内閣は、インド洋での給油活動を憲法違反とまで言って中止して引き上げ、さらにアメリカの国家戦略の一環にして日本を含む東アジアの安定に重要な役割を持つ沖縄のアメリカ海兵隊のプレゼンスを排除しようとしている。
それも、鳩山氏の言動においては、普天間移転に関する日米間の合意を、「守るのか」、「破棄するのか」、「そもそも合意を知らないのか」分からない。
ある時は、大統領に「私を信じて」と言い、翌日には反対のことを言う。果ては、二酸化炭素削減に関する会議、つまり普天間とは全く種類が違う会議での夕食会でたまたまクリントン国務長官と横の席になった。何かしゃべったのだろう。そして翌日勝手に「クリントン国務長官は、普天間移転を先延ばしすることを了承してくれた」と放言する。
以上の、いきさつの果てに、異例の駐米大使の国務省への呼びつけという事態になっている。この事態を観て、昭和十六年のせっぱ詰まった日米交渉における、コーデル・ハル国務長官と野村吉三郎駐米大使の情景を思い浮かべるのは大げさであろうか。しかし私は、これを連想し不吉な感じがした。
では、何故不吉な感じがしたのか。それは、アメリカの世論が、どう動くか、アメリカ政府がどう動かそうとしているのか、分からないからである。
一体、鳩山氏や与党幹部は、アメリカの世論に対する配慮があるのか。アメリカは、息子を戦場に送っている母親がいる国である。既に数千人の息子達がアフガンで戦死している。戦死した彼らの大義は、日本を含む同盟国・自由な世界をテロから守ることである。だから息子を亡くした母親は耐えることができる。
また、東アジアでの有事に備えて、アメリカは数万の若者を沖縄はじめ極東に送り込んでいる。彼らの大義は、同盟国日本を守ることである。
ところが日本には、アメリカには傲慢で中国にはぺこぺこする幹事長のいる与党と、「東シナ海を友愛の海」にしたい鳩山が、朝晩言うことがくるくるかわって、結果としてアメリカを裏切っている。同盟国を裏切るということは、もはや同盟国ではないということだ。鳩山総理の言動は、アメリカ世論が、このように激変する可能性を高めている。
アメリカの歴代大統領が、どれほどアメリカ世論を気にしているか。次の事実で、日本人は身に染みていなければならない。
先の日本とアメリカとの戦争で、アメリカが東条英機らを死刑にしたのは、「戦争の謀議」という訴因である。しかし、本当の「戦争の謀議」は、実はアメリカのルーズベルト大統領とイギリスのチャーチル首相との間で行われた。「裏口からの戦争」合意と言われる。一九四一年八月の大西洋会議である。
そして、ルーズベルトは、日本に先に手を出させる為に苦心惨憺する。つまり、日本に真珠湾を奇襲させるのである。何故、ルーズベルトは、このような卑劣な謀略をしたのか。
それは、アメリカ世論を激高させて対日戦争を開始する為である。反対から言えば、アメリカ世論が戦争を容認しなければ、対日戦争ができないからである。アメリカ大統領は、アメリカの世論で動くのだ。
今、アメリカの世論は、鳩山総理のくるくる替わる言動に反応はしていないように思える。しかし底辺では何が動いているか分からない。腹に据えかねる寸前の状態かもしれない。
さらに加えて、アメリカ国内には、極めて強力な中国の工作活動がある。鳩山総理は、就任以来、アメリカ世論を日米離反へ誘導する材料を自らの口から出し続けてきた。
言うまでもなく、日米離反は、中国共産党の願い。中華の覇権が世界に伸びる重要なステップと、中共は思っている。つまり、鳩山総理と小沢幹事長なら日本を属国化できると中国は明らかに思っている。
この度の異例の駐米大使の国務省への呼びつけを切っ掛けとして、ある日、有力コメンテーターが、鳩山の言動を、如何なる動機においてであれ、「裏切りだー」、「何故裏切り者の日本を守るために、我々の息子達が血を流さねばならないのか」と唱え始めれば、一挙に、日米同盟廃棄の方向へ火がつきかねない。
何が「友愛の海」じゃ。総理よ、フィリピンのスービック基地からアメリカが撤去した直後、中国がフィリピンが領有する、南沙諸島を一挙に武力で占領した事実を思い起こせ。尖閣諸島周辺には、巨大な地下資源が眠っているのだ。
それとも、鳩山総理は、自力で我が国を守る覚悟で、言を左右して確信的に日本を対米離反の方向に動かしているのなら、選挙公約の児童手当を断念して、五兆円以上、国防費に回すべきだ。それの方が、経済も活性化する。
その覚悟がなくて、対米関係で言を左右しているのなら、友愛坊ちゃんの火遊びではすまない。国を誤り滅ぼす。万死に値する無責任さだ。
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