兵藤二十八『もはやSFではない無人機とロボット兵器』(並木書房)これからの世界戦争は米国の無人機が代表するようにロボット兵器が多用され、これこそが核武装が叶わなくなった日本の最後の切り札になるだろう、という。
賛成である。人間と違ってロボットは感情線がなく、喜怒哀楽がないから、戦争の最前線でも兵器で戦闘行為に従事できるし、排便も発汗もないロボットはエコ兵器でもある。
日本の産業のインフラと潜在の技術力があれば、すぐにもロボット兵器大国になれたのに、貧困な頭脳しかない劣化した政治家の無謀なる防衛政策の結果、ロボット開発競争に日本は出遅れている。それも決定的な出遅れで、取り返すには時間とエネルギーと金を注ぎ込む必要がある。
しかし、この無策状態のままでは将来、米国に特許支払いが生じる。この危機を日本の政治家も官僚もマスコミも軍事オタクも認識していないと兵藤さんは苛立つ。
さて夥しいロボット兵器の陳列と解説は、本書に譲るとして、アフガンでもイエーメンでも無人機の大活躍は指摘する必要がないだろう。しかし軍事オタクの、あの政治家(漫画の主人公に似ている人)は知っているかなぁ。
さてさて、評者宮崎正弘にとって、この本には深い興味と格別の思いがある。というのも1984年に拙著『軍事ロボット戦争』(ダイヤモンド社、絶版)を上梓したおり、なかみは上記と本質論で同じだったけれども、当時の防衛庁高官ならびに防衛評論家と称する人々にも意見を聞いたことがある。
とくに某テレビ局にいた友人が有力な防衛議員なども廻ってくれた。「うん。ナルホド。面白いな」で嗤ってお終いだった。
SF世界のこととかたづけられ、将来の技術を見通す力もない人たち、というより目の前の出世と日米安保条約の履行にのみ汲々としているサラリーマン軍人にとって、そういう戦略的な事柄は考える時間もないのだ。
そして四半世紀以上も閲して、日本の防衛論は欧米水準から言うと幼稚園のレベル。一方で保守論壇には兵藤氏のような若い世代の防衛本格派論客が最近たくさん出てきたことを欣快に思う。
不況対策にも国を挙げての防衛産業テコ入れと防衛力強化が国益になる。鳩山友愛政権は、国を売ることに忙しく国を守ることにはいささかの関心も抱いていないようではありますが・・・。本書は画期的な日本防衛への建議書でもある。
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4803 防衛論の泰斗・兵藤二十八さんの新作 宮崎正弘

コメント
かつて北京大学法学部で教鞭を執っていた袁さんの著書が出版されました。
中国共産党による隣国支配がどのようにすすめられてきているかを暴いた本です。
一連の問題を総合的に考える時の参考になるので、ぜひ一読をお勧めいたします。
「暴かれた中国の極秘戦略」
紀伊国屋書店サイトからも内容詳細見られます。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4944235526_1.html
著者
天安門六四事件に参加したためその後貴州省に転任させられ、貴州師範大学法学部学部長を務めていた。
2004年豪州訪問中に政治亡命した。現在シドニー在住で、中国の民主活動を行っています。
日本の未来のために日本人は戦略的思考を もっと身に付けていかなくてはなりませんよね☆