先週、新幹線の車中で中年の婦人に声をかけられた。
「参院選で民主党は惨敗だそうですね」
「え、だれの話で……」
「週刊誌に書いてありました」
なんだ、そんなことか。しかし、この荒れ模様だ。昨夏の衆院選と違って、情勢は混とんとしている。参院選の投票日(7月11日予定)まで、あと170日しかない。
高齢候補者の扱いが焦点の一つになってきた。自民党は、参院選比例代表に<70歳定年>を設けているが、これをめぐって党内の意見が割れ、もたもたしている。
一方の民主党は年齢にこだわらず、昨年12月、比例代表に83歳の候補者を公認した。民主、自民のこの対応の違い、選挙結果に微妙に響きそう。
高齢公認を手にしたのは流通業界の最長老、清水信次(のぶつぐ)だ。日本スーパーマーケット協会名誉会長を務めながら、ライフコーポレーション会長として、食品スーパー<ライフ>210店舗を全国に展開している。
民主党政権が誕生したあと、清水はかねてじっこんの小沢一郎幹事長に、「少子化には担当大臣も役所もあるのに、高齢者には何もない。おかしいではないか。ほかにもやりたいことがある。余命はあまりないが、議員として最後のご奉公をしたい」と申し入れると、小沢は即座にOKし、
「全国の高齢者の代表として、比例代表がいい」と述べたという。
清水はいま83歳だが、選挙の時は84歳、仮に当選し任期を務めあげれば90歳だ。清水はこう言う。
「若くても(仕事が)できない人がいるし、高齢でも若いのに負けない活力、精神力を持っている者がいる。私も陸軍の兵隊経験があるが、戦前、戦中、戦後の動乱期を生き抜いた人が政界に何人かいないといかん。いま衆参の全議員722人のうち、80歳以上は公明の草川昭三さん(参・81歳)だけだ」
高齢化が年々進み、年金・医療・介護などが深刻さを増すなか、民主党の高齢候補者を担ぐ作戦は、世間に好感を持たれるかもしれない。若い民主党の議員構成が、老壮青の老が薄く、それを埋めることによって厚みをつけたい狙いもある。
自民党の場合は逆に、衆参連敗の原因が<長老支配>にあった、という指摘が中堅・若手の間に根強く、高齢候補者を忌避する空気が広がった。対象の一人、山崎拓前副総裁(73)は、
「高齢者排除の論理でイメージアップを狙っているが、逆に自民党のイメージダウンにつながる」と忌避の風潮を批判している。当たっているかもしれない。
政治がかつてなく迷走を続けている時節だけに、有能な高齢者の経験、知恵、思慮深さを生かすことは貴重だ。清水は、
「戦争に負けてからの日本は政官民一体ではい上がった。昭和43年には、ついに第二の経済大国になったんです。しかし、それ以後の自民党は残念ながら劣化した。だから、政権交代は国民が本当に望んだ無血革命だ。いまこそ、目先にこだわるのでなく、世界を相手に、恥をさらさないように、私もやる。最低15万票を目指す」と出馬決意に至る存念を語った。
しかし、民主党はカネの問題で揺れている。「日本は内外大事な時、大岡裁きが必要だ」そううまくいくか。清水には、「政治家は国のために死ね!」(財界研究所・01年刊)という著書もある。(敬称略)
杜父魚ブログの全記事・索引リスト
4848 84歳にして出馬の「存念」 岩見隆夫
未分類
コメント