昨日、民主党の小沢一郎幹事長の記者会見をテレビで見て、そのあまりに勝ち誇ったような傍若無人な態度に暗澹たる気分になりました。小沢氏は、マスコミに対しては「小沢一郎は不正な献金は受け取っていなかった、潔白だったという報道を続けろ」と下命し、米国に対しては「せっかく(米国に)行くとすれば、大統領にもそれなりの十分、時間をとっていただかないと困る」とゴーマンかましていたのでした。何様のつもりなのか。
で、記者会見後、小沢氏を昔から知る某氏に「なんだかなあ」と愚痴をこぼしたところ、彼は「小沢さんはああやって強がって虚勢を張っていないと求心力が保てないんだよ」と私を諭し、メモ用紙に「大隈候五訓」なるものをしたためてくれました。
一、 何事も楽観的にみる
二、 怒るな
三、 貪るな
四、 愚痴をこぼすな
五、 世の為に働け
別に大隈重信候に特別な思い入れはありませんが、なるほど、もっともであるなと感じた次第です。小沢氏は、「此の世をば我が世とぞ思ふ」藤原道長の心境であるようにも見えますが、不起訴となった4日夜、報道陣のぶらさがりインタビューに答えて部屋を出る際には「オシッ!」と右拳を挙げてガッツポーズをとったぐらいですから、これまで薄氷を踏む思いでもあったのでしょう。
そこで本日は、記録の意味も込めて、5日付の在京各紙朝刊に掲載された署名記事から印象に残った部分を抜粋し、ここに掲載しておこうと考えました。社説よりも、より取材現場のナマの声に近いかと。小沢氏に厳しい意見から検察に反省を求めるものまでトーンはいろいろですが。
・ 産経 近藤豊和社会部長 「ほくそ笑むのはまだ早い」
《捜査の過程で表面化した、陸山会による東京都世田谷区の土地取引に絡む不明朗な億単位の金の出し入れや融資については、腑に落ちないことが多すぎる。また、陸山会による大量の不動産取得や政党助成金の移動など総額数十億円にも上る不明朗な金の動きに至っては、「疑惑の山」であり続けている。(中略)「疑惑の山」への捜査は継続されることだろう。そして、国民の注視もやむことはない。ほくそ笑むのはまだ早い》
・ 読売 溝口烈社会部長 「虚偽報告 国民を愚弄」
《3人の起訴事実は「収入」と「支出」合わせて21億円余の巨額の虚偽記入であり、過去に例がない。陸山会では、2007年までの4年間で約30億円もの資金が、収支報告書の記載とは異なる流れにあった。帳尻さえ合っていれば虚偽を記載しても構わないという姿勢は、規正法の趣旨を踏みにじり、国民を愚弄するものだ》
・ 日経 平岡啓社会部長 「権力の対立 何を残したか」
《不正献金の一掃を政治信条としてアピールし、政権交代を主導したとして政界で大きな力をふるう小沢氏の献金疑惑の捜査だからこそ検察も長期戦にシフトした。(中略)権力の対立がもたらしたものが、検察と政治への不信の増幅だけだったとすれば、勝者はいない。最大の敗者は不信を募らせる国民ではないか》
・ 毎日 松下英志社会部副部長 「『大山鳴動』否めず」
《昨年の西松事件から続く小沢氏周辺への捜査も、複数の特捜OBは懸念する。「結果的に1人の政治家をターゲットにした通年捜査とみられてしまう。これでは国民に『政治的意図がある』との憶測すら生む」。長い捜査の果てに、検察への期待がしぼむことを恐れる》
・ 毎日 小菅洋人政治部長 「進退 有権者が決める」
《起訴された秘書たちは集票・集金マシンの一翼を担ったとも言え、それが小沢氏の政治活動を支えてきた。監督責任が問われるのは当然だ。選挙に勝って数を確保し派閥化する。票とカネは、「政官業」のトライアングルの中からひねり出す-こういう旧田中派型手法と、公開を大原則にし、カネには縛られない本来の民主党の体質は相いれない。物言わぬ民主党に「小沢化」の懸念を強く持った》
・ 東京 飯田孝幸社会部司法キャップ 「検察は国民に説明を 土地購入原資明示せず」
《刑事訴訟法47条は、公判前の訴訟関係書類を公表することを禁じている。しかし、特捜部は小沢氏の事務所や複数のゼネコンも捜索した上、国会開会直前に国会議員を逮捕してまで捜査を進めた。これだけ影響を及ぼした捜査の結果について、刑事訴訟法を盾に口をつぐんだままでいられるはずはない。特捜部にとって有利、不利を問わず、国民に最低限の説明を果たす責務があるはずだ》
・ 朝日 薬師寺克行政治エディター 「政権 出直す機会に」
《巨額な資金が絡む「闇」を持つ政治家が、政権党の幹事長として国政を左右するのでは、まともな民主主義国家とは言えないだろう。(中略)首相は「小沢氏に参院選を仕切ってもらいたい」と述べた。自浄能力のない、もの言わぬ政党のままでいるつもりなのだろうか。今、すべきは政権のリセットだ》
…小沢氏は昨日の記者会見で、石川知裕被告に対し、野党側が辞職勧告決議案を提出している件について「石川自身は、国会議員の職務に関連して、責任を問われているわけではない。若干そこは違う」と強調しました。4日の起訴の時点でも、同じ趣旨のことを言っていました。
しかし、これはおかしな理屈だと思います。同僚記者は「そんなことが通るのなら、選挙違反をして当選した議員は『あれは当選する前の話だから』と免罪されることになる。納得がいかない」と感想を漏らしていました。小沢氏一流の「オレ様流」の屁理屈、言い逃れとそれが通用すると世の中を甘く見ている姿勢にはもう辟易しています。もういいかげんにしてほしい、ホントに。おっと「大隈候五訓」を思い出さなくては。
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4972 小沢一郎氏への各紙の視線と「大隈候五訓」 阿比留瑠比

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