国民党、実に四連敗。馬政権の北京急接近に台湾国民がNO。嘉義、新竹、桃園で国民党有力候補が落選。花蓮でかろうじて一議席確保。
馬英九の四連敗。つまり国民党の惨敗が続いている。
今回の国会議員補欠選挙は重大とばかり国民党は有力候補に絞り、学者で清潔なイメージの有名人も落下傘候補で送ったが、当選できなかった。
夏の日本の参議院選挙、おそらく、こういうことになるだろう。
小沢惨敗、鳩山退陣というシナリオにぶれる可能性が日々高まっている(いや、鳩山が政権を投げるのはもっと前になるかも)。
昨年九月、台湾の国会議員の補欠選挙は雲林県。国民党の金城湯池の場所で、何故か馬英九の人気がとまり、敗れた。直前の台風被害救援の遅れ、災害対策への無策が国民の怒りを買ったのが原因と言われた。
底流にはあまりに性急な大陸接近への本省人の不安と不信があり、それが反・国民党傾斜へのバネになったのである。
就任当時(08年五月)、60%以上の支持率があった馬政権、いまや20%台(国民党系の中国時報や連合報の調査で)。これも鳩山人気急落と似ている。
同年12月、五大都市をのぞく県知事と市長選挙(17大市長県知事選挙)でも国民党は全勝からおおきく後退し、四議席を野党・民進党が獲得した。
13席を確保したといっても国民党は得票率を15%も下げ、民進党との差は2・5%というきわどさだった。ついで本年一月の国会議員補欠選挙は改選三議席の全てが民進党のものとなる。全敗である。これは国民党にとって強い衝撃だった。
今回(2月27日)の国会議員補欠選挙では、四議席中の三議席が民進党へ。結局、花蓮のみが国民党(それも辛勝だった)。
これで台湾国会は国民党75,民進党33,無所属5(定数113)。あと一議席伸ばして野党連合が39議席となれば、三分の一をこえるので総統不信任案を上程できる。
今回の得票は次の通り
■嘉義
陳明文(前知事)57451(民進党)
林徳瑞(国民党)27138
嘉義はもともと反国民党感情のつよい地盤で、事前予測でもこの選挙区だけは国民党はあきらめていた。
■新竹
膨紹僅(前地裁判事)71625(民進党)
鄭永堂(国民党) 56342
外省人ならびに選挙民に大陸とのビジネスマンが多い地区(ハイテクパークがある)で事前には民進党の苦戦が伝えられていた。だが馬の不人気と政治に醒めたビジネスマンが多い所為か、投票率が36%と低調。国民党支持者の多くが棄権したためといわれる。
■桃園
黄仁予(前市議) 45363 (民進党)
陳学聖(前台北市議)42600 (国民党の落下傘候補)
番狂わせ。桃園も国民党が強力な地盤をもつ選挙区だったが、国民党系から、党の「落下傘候補」(陳学聖は学者候補)に反発して組織が分裂し、独自に呉全東(県議)と林香美(副市長)が立候補して各一万票を獲得した。つまり民進党は「漁夫の利」を得た。
■花蓮
王延弁(国民党) 39379
粛美琴(民進党) 33249
施勝郎(国民党系) 8863
この花蓮も国民党の強い選挙区で、女性の落下傘候補=粛美琴(前立法委員)は多くのボランティアを連れての選挙だったがおよばず。しかし僅か6000票までに追い上げ、国民党のダントツの強さは失われていることがわかる。前の選挙以来、国民党の分裂も響いた。
▲年末の五大市長選挙で次の総統に甚大な影響がでる
敗戦の弁を国民党の金溥聡・秘書長は「候補者の指名制度と党改革の遅れが原因」として、地域閥化した国民党の古い体質からの脱皮を掲げたが、買票システムの実態にはふれなかった。
国民党を牛耳る金溥聡は満州族。馬英九にもっとも近いブレーンとしてしられる。彼の立場も、この結果ではおおきく揺らぐだろう。
蘇嘉全(民進党秘書長)は「クリーンな背景とクリーンなイメージ造りに国民党は破れた」とし、さらなる民進党の躍進を語った。蔡英文・主席(女性)の党首続投は、これでほぼ固まった。
年末に台湾は五大市長選挙(台北、新北、台中、台南、高雄)を行うが、このうち台南と高雄をのぞいて民進党は弱いとされる選挙区ばかり。
だが、いまの勢いが続けば(続くだろうが)、台中と新北(台北県が特別市に昇格)も民進党が取れる可能性がある。
五大市長は台湾政府の閣議に出席できる閣僚級である。このため現地通によれば、花蓮で善戦した粛美琴や、前首相で民進党の有力政治家=蘇貞昌らが台北、新北市長への出馬が予測されている。(膨紹僅の「膨」から月扁ととり、「僅」は王扁。「粛美琴」の「粛」には草冠)
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