5153 中国の大手銀行が軒並み増資するというが 宮崎正弘

王岐山副首相は「市場にそんな巨額を受け入れる余地があるか」と爆弾発言。中国の景気刺激策は財政出動が4兆元、貸し出しが7兆元。つまり2009年だけで合計11兆元(邦貨換算148兆円強)を超えた。
これでマンション価格は急落せず、株価は緩やかな下降線だが暴落を回避できた。また頭金なしの住宅ローン、自動車のローン条件の緩和、電化製品の奨励金など、ありとあらゆる財政、金融支援政策の出動で、かろうじて8%成長を維持できた。
ことしのGDP成長目標も8%(全人代で温家宝首相演説)、自動車販売を1500万台と設定し、確実に日本のGDPを越える。
ところが、年初来、中国は預金準備率を二回引き上げ、通貨供給をタイトにした。不動産バブルを抑制する措置として、ことしの通貨供給の伸びは17%台に抑える(昨年は27%増)。なにかの前兆である。
日本のバブル崩壊は「総量規制」が発端だった。そこへBIS基準8%遵守が追い被さり、株価の暴落によって銀行は保有資産評価が激減し、突如、健全経営から不良債権の山をかかえる仕儀となった。
追い打ちをかけて欧米系の格付け機関が日本の金融機関の格付けを政治的意図でもあるかのように大幅に下げた。
日本の生命線が心臓発作に襲われ、銀行は貸しはがし、企業は資金難、こうして日本経済は「失われた二十年に陥没する。
 
中国はこれを教訓としている。
日本の二の舞を避けるには、銀行の不良債権暴発を抑止する対策が必要である。いまのところ、不良債権率は3%以内などと、誰も信じない数字を豪語するが、実際は40%前後の不良債権が隠されている(不動産と株価が下落すれば、たちまち表面化するだろう)。
▲中国の銀行は早め早めの手を打った。
中国農業銀行は外貨準備高から資金をぶち込んでもらって経営再建に乗り出しているが、新規株式公開(IPO)で2000億元を調達する計画を発表した。
くわえて世界第二位(時価発行)を誇る中国建設銀行、世界一の中国工商銀行、香港ドルも発券する中国銀行の四大国有銀行に交通銀行を加えた五大銀行の増資計画は、なんと8000億元(邦貨換算10兆円)を超える。
 
これらは新規株式公開分であり、すでに中国銀行はA株転換社債を発行で400億元、交通銀行が株主割当増資で最大420億元を調達する計画を発表している。
さらに民間の大手招商銀行、中信銀行、深セン発展銀行、上海浦東発展銀行、南京銀行なども資金調達方針を明らかにしており、はたして市場はこれらの資金需要をまかなうほどのキャパが残っているのか?
財政出動ならともかく、市場から調達するのは将来の「エンロン型詐欺にある」と言えなくもない。3月5日、全人代で発言した王岐山(副首相)は大型銀行の増資計画に直裁に言及し、「市場は8000億元の資金調達を受け入れきれないだろう」と爆弾発言に及んだ。
直後、中国工商銀行の楊凱生・行長と中国建設銀行の郭樹清・会長は「自己資本比率は基準を満たしており、当面の資金調達計画はない」とした。中国経済の薔薇色が、突如褪せる日が、そこまで来ている?
杜父魚ブログの全記事・索引リスト

コメント

タイトルとURLをコピーしました