5161 鳩山政権は核抑止を否定するのか 古森義久

核兵器を搭載したアメリカ軍艦艇の日本領海の通過や日本の港への立ち寄りに関しての日米密約があったことが確認されました。私自身がライシャワー元大使から聞いた説明が正しかったことが証されたわけです。
しかし鳩山政権のこれからの核抑止政策をどうするのでしょうか。これからは核搭載艦艇の日本領海の通過も一切、認めないということになると、アメリカの核の締め出しということになります。
【ワシントン=古森義久】日本政府の「核持ち込ませず」の虚構を初めて日本側に詳細に明かしたエドウィン・ライシャワー元駐日米国大使が今回の有識者委員会報告書の結果を知れば、大きくうなずいたことだろう。
同元大使は29年前に「日本が率直に密約の事実を認めるときがきたのだ」と明言していたからだ。だが事実を認めた後の核抑止政策をどうするのか。この点も彼が熱をこめて論じたところだった。
ライシャワー氏は1981年5月、毎日新聞記者だった私とのインタビューで日本側の非核三原則の「持ち込み(イントロダクション)」の解釈は日米で異なり、核兵器搭載の米軍艦艇は日本側の否定にもかかわらず、日本の領海を通り、港に立ち寄っていることを暴露した。
日米両政府間にはその相違をそのままにする密約があるというわけだ。日本政府はこの「ライシャワー発言」を全面的に否定した。
だが今回の報告書は「日本側が核搭載艦船の寄港を黙認する『暗黙の合意』という広義の密約があった」と認め、日本政府が「うそを含む不正直な説明に終始した」と総括した。
ライシャワー発言を全面的に肯定したわけだ。
日本の安全保障の中枢となる核抑止にかかわる明白なうそが正されたことの意義は大きい。長年、虚構を虚構と呼び、日本政府からは否定されてきた私自身の感慨も深い。
しかしこの機になぜそんな虚構が保たれたかの理由を考えることも重要だろう。
この点、ライシャワー氏と話す直前に会ったダグラス・マッカーサー2世の言葉が思いだされる。ライシャワー氏の前任の駐日大使だった彼は1960年の日米安保条約改定の米側中心人物だった。
マッカーサー氏は核搭載艦艇の日本への寄港の真実を示唆しながらも、決して明確には認めず、私の再度の質問に「死んだ馬にムチ打つことは止めたほうがよい」と繰り返すのだった。
そして日米安保改定以降、ソ連の核の脅威は増大し、日本国内には米国と手を切ってソ連との連帯を求める勢力も強く、とくに核への反発は感情主義が強すぎると強調した。
だから「核持ち込み」の事実を明かせば、日米同盟は危機にひんすると警告したのだった。
この点、今回の報告書は60年代からの米ソ対立の苛酷(かこく)な現実や日本国内の反米親共活動の広がり、さらには核へのアレルギー的忌避をも詳述して、日米密約による「核持ち込ませず」の虚構をやむを得なかった必要悪としてもハイライトを当てている。
ただしライシャワー氏は当時から「日本政府はもうソ連の艦艇が核兵器を積んで日本の各海峡を往来しているのだから、米軍の艦艇も核搭載のまま日本の港に立ち寄ることがある、と言明すべきだ」と明言していた。
非核二・五原則の勧めだった。日本国民ももうそれを受け入れるだろうとみていたのだ。
それから29年、鳩山政権は密約を明るみに出した後、どんな核の政策を取るのか。戦術核兵器の米軍艦艇への搭載は91年に停止されたが、またいつその種の核兵器の日本周辺での抑止効果が求められるかわからない。
中国もロシアも、そしておそらく北朝鮮も、日本に届く戦術核兵器を多数、保有し、配備しているのだ。そうした核の政治的威嚇をも含めての威力を抑えるには日本は米国の核兵器に頼ってきた。
その一方で密約を除いた非核三原則を機能させれば、抑止のための米国の核を有事でも日本の港や領海には入れさせないこととなる。
この背反をどう解くのか。密約後の日本はそんな重大な政策の選択をも迫られるのである。
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コメント

  1. karasu713 より:

    本当にいまさら暴露しても何も意味のない密約を政権与党・外務省が暴露する意味はなんでしょう?
    トヨタリコール、太地町のイルカ漁の隠し撮り、ワシントン条約でのマグロ禁猟 モナコ提案へのアメリカの賛成などはすべて基地問題に対するアメリカの意思表示と思います。
    太平ボケでごにょごにょ言ってたら、沖縄基地は捨ててさっさとアメリカは中国に向かいます。
    基地で潤って置きながら、口では反対を唱えていた人たちはこまるでしょう。

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