ユーロ圏が「勝ち組」と「負け組」が鮮明に別れた。ドイツは「マルク」(世界最強通貨のひとつ)に復帰するのか?
発端はギリシアだった。債務不履行の危機に瀕してEU諸国がいかにギリシア救済の措置をとるのか。IMFには限界があり、EMF(ヨーロッパ通貨基金)の構想が浮かぶ。
だが、これもうまくは行かないだろう。かつて宮沢政権のおり、アジア通貨危機に遭遇した日本は「アジア通貨基金」構想をぶち挙げてタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどの通貨危機を救おうとした。だが米国の反対で潰された。
ギリシアのみの問題ではなかった。通称「PIGS」と呼ばれるのはポルトガル、イタリア、ギリシア、スペインで、マーヒオトリヒト条約に決められたGDP対比債務率などに違反している。連動してEU諸国全体の経済危機に繋がる懼れが高まったのである。
しかるにこれら四カ国はドイツ、フランスの通貨と共通であり、しかし金利がそれぞれの中央銀行が決めるとなれば、当初から懸念された「ユーロ」の整合性が円滑にいかないことのなによりの証明となる。通貨発行は主権行為に属することではなかったのか。
こうしてユーロ圏の「勝ち組」とはドイツ、オランダ、オーストリア、フィンランド。「負け組」にはフランス、ベルギーに上記四カ国が加わる。
思えばサッチャー元英首相が「通貨統合は主権の放棄」といって英ポンドがユーロに加わらなかったことは正解だった(拙著『ヨーロッパの悪夢』、カッパブックス参照)。
推薦。「ドイツはユーロから離脱し、独創的な通貨同盟を再構築するべきだろう」(ヨアチム・スタバッテリ<独チュービゲン大学客員教授>、ヘラルドトリビューン、3月29日)。
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5288 ドイツは「マルク」に復帰するのか? 宮崎正弘

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