5318 意思統一なき交渉 普天間継続に現実味  古沢襄

ここにきて地方紙に鳩山政権に対する厳しい論調が目立つようになった。中国新聞は普天間移設で迷走する政権内部の意思統一なき交渉が、地元と米側の了解が得られないまま、移設そのものが不可能な情勢にあると分析している。
「沖縄県外移設」を公約してきた鳩山首相は、普天間の代替施設として鹿児島県・徳之島移設にこだわりをみせる。だが地元の反対運動は高まる一方で、決着の見通しがつかない。三月末までに政府案を決めると言っていたが、四月に入っても政府案が固まらない。
このままでは普天間の継続使用という最悪の事態を招きかねない。
<米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題をめぐり、政府が移設候補地や手順を十分に意思統一しないまま見切り発車で沖縄県など関係自治体や米側と調整を進めている内情が明確になった。腰の定まらない姿勢に地元は反発を強めており、鳩山由紀夫首相が明言する「5月決着」のハードルは高まるばかり。政府があれこれ検討しても地元と米側の了解が得られなければ移設は不可能な情勢で、普天間の継続使用が現実味を帯びてきた。5月に決着しなかった場合、鳩山首相の退陣論が強まる展開もはらんでいる。
▽徳之島に難色
普天間移設問題のポイントは、滑走路をどこに移転するかの一点に集約される。その意味で、普天間の代替施設は長い滑走路の確保を想定している鹿児島県・徳之島か、沖縄本島東岸の勝連半島沖埋め立て地に絞られる。どちらも移設先とすれば、普天間の代替施設が2カ所になってしまう。
先行させる徳之島を時限的に使う選択肢も論理的には浮上するとみられるが、いったん徳之島に移設すれば勝連半島沖の埋め立ては極めて困難になり、今度は米海兵隊の飛行場が徳之島に固定されかねない。
そもそも地元はどこも受け入れ反対の声が支配的。米側はキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)を埋め立てる現行計画が最善との立場を崩さない。沖縄県に駐留する海兵隊陸上部隊と訓練場の一体運用の必要性も訴えており、ヘリコプター部隊だけの徳之島移転に強い難色を示しそうだ。
▽時間軸考慮せず
鳩山政権は各移設案の「時間軸」をほとんど考慮せず、二段構えや3段階の構想を米側や沖縄県に打診している。防衛省によると、仮に地元が受け入れに同意しても徳之島の場合、滑走路の設計と環境影響評価(アセスメント)と工期を合わせ8年程度かかる。ヘリや航空機の格納庫、海兵隊員や家族の宿舎、厚生施設などの整備も必要で、そのためには用地を買収しなければならない。これも計算に入れれば「実際には移設まで何年かかるか予想できない」(防衛省筋)という。
勝連半島沖案は沖縄県知事による公有水面の埋め立て許可が不可欠。これがない限り着工できない。万が一、知事や地元の了解を得ても、1600メートル級の滑走路で10年、自衛隊との共用を想定した3千メートル級の滑走路を複数造る場合では15~20年を要すると試算されている。岡田克也外相が先月26日にルース駐日米大使に示した案は1600メートルを基本としている。
▽強まる不信感
米側は2012年にも配備を予定する垂直離着陸輸送機MV22オスプレーを想定し、1600メートル以上が必要と主張。政府はシュワブ沿岸部陸上に約550メートルのヘリ離着陸帯を建設する青写真を描く。これだと、旧型ヘリの運用は可能だが、通常は航空機のように離着陸するオスプレーは恒常的に使用できず、固定翼機も乗り入れできない。
このためヘリ離着陸帯は旧型ヘリを対象にしたその場しのぎの「暫定措置」にすぎない。しかも環境影響評価と工期を合わせ最低8年。これに事前の設計期間も加えれば、10年前後かかるとみられる。
日本側は具体的な移設先を絞り込むため、外務、防衛当局の実務者協議の早期開催を米国に打診。米側は拒んでいないものの、連立政権内の溝と地元の反発を踏まえ「実現可能性が読めないまま、移設案を詰めても意味があるのか」(米外交筋)と不信感が根強い。首相は、関係自治体の反発に加え、こうした米側の空気も十分に把握していない恐れがある。(中国新聞)>
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