ここ1週間余りの政府・民主党の様子を見ていると、やたらと日本労働組合総連合会(連合)の名前が目につきます。私は、この10日発売の某月刊誌に「政権交代は『労組の国盗り』だった」(タイトルは編集部がつけました)という記事を書き、民主党と労組の一体化について指摘したのですが、現実の政治の動きが、まさにその状態を表しているように感じています。
最近の事例を大雑把に時系列に沿って記すと、まず3月31日に、連合静岡の吉岡秀規会長が、民主党の小沢一郎幹事長が参院選の2人区に2人候補を立てる方針を批判し、次のように述べています。連合幹部がある政党の候補擁立方針を咎め立てすること自体、両者の癒着を証明していますね。
「民主党の支持率がここまで下がった要因は政治とカネの問題で、その根本には小沢幹事長の問題がある。小沢氏自身が、この2人擁立の提案とセットで、辞職願い、辞任の届け出を出していただければ、それだけの覚悟がおありになるんだとしたら、私たちは2人擁立についてもさらに積極的・真剣に向き合っていく覚悟はある」
民主党の足を引っ張っているのは実は小沢氏自身であるとの勇気ある指摘でもありますね。でも、これについて連合の古賀伸明会長は翌4月1日、連合側を訪ねた小沢氏に早速謝罪し、さらに翌2日には自ら国会内に出向いて小沢氏を表敬訪問し、「参院選、今から頑張りましょう」と連合の全面支援を約束しています。
そして5日には、民主党側からたくさんの閣僚や党幹部が出席して第2回政府・連合トップ会談が開催されました。会談前に、鳩山首相は記者団に次のように語りましたが、この鳩山氏の認識について私も同僚記者たちも、強い違和感を覚えました。
「(会談は)サラリーマンのお声をうかがう一番のチャンスだと私は思っています。サラリーマンのお声を代表している連合の皆さんのしっかりとしたお考えをね、うかがっていきたい」
…いや、私にも同僚にも、連合幹部がサラリーマンの代表だなんて感覚は全くなかったもので。この日、連合側から古賀会長に同行したのは南雲事務局長(電力総連)、徳永会長代行(自治労)、岡本会長代行(NHK労連)らですが、うーん、サラリーマンの声ねえ。自治労やNHK労連なんて聞くと、労働貴族というイメージはあっても、とてもサラリーマンなんて言葉は連想できないのですが。
ともあれ、この場で古賀会長は政府側に対し、さらなる雇用対策や参院選に向けたマニフェスト(政権公約)論議の必要を訴えたそうです。それに対し、鳩山氏のあいさつはというと、以下のような部分がやはり強調されていました。
「参院選もございます。そういった思いも含めて、どうかいろんな意味でのご指導をいただければと思っておりまして、どうぞよろしくお願いします」
はいはい、やっぱり選挙ですね。分かっていますとも。この後、古賀会長は記者会見を開き、連合静岡の吉岡会長が小沢氏を批判した問題について次のように謝罪し、吉岡会長を厳重注意したことや、2人区への2人擁立を容認する考えなどを明かしました。すっかり小沢氏に取り込まれていますね。
「今回の(吉岡会長の)行為は、他の組織への越権行為であり、不適切な発言であり、不本意極まりない。小沢氏と組織としての民主党におわびしたい」
で、古賀会長は翌6日には、民主党の「デフレ議連」で約20分間講演していますし、さらに翌7日昼には、ホテルニューオータニの「なだ万」で、鳩山氏、平野官房長官と会食し、いろいろと注文を伝えたそうです。平野氏と古賀会長は同じパナソニック労組の出身で、30年来の付き合いです。しっかし、この労組と政権のべったりぶりは、異様さを感じるほどですね。
まあ、もっとも、鳩山内閣の17閣僚のうち7人までが、連合の全面支援を受ける「連合組織内議員懇談会」のメンバーですし、この懇談会に入っていなくても、有形無形の支援をあおいでいることは紛れもない事実です。また、閣内には赤松農水相、小沢環境相、中井国家公安委員長と3人の日本郵政グループ労組の組織内議員がいますし、今回の亀井郵政改革・金融相主導の郵政「改悪」法案に、たいして反対が出なかったことも理解できますね。
ちなみに、今年2月に連合の政治担当者の会合で示された「第22回参院選対応方針」には、こう記されていたそうです。
《鳩山政権は、政治とカネの問題も抱え、非常に厳しい政権運営を強いられている。この情勢下にあって、参院選での有権者の意識は、極めて厳しいことが予想される。(中略)連合にとっても、真価と力量が問われる選挙であり、全組織の総力を結集し、必ず勝利しなければならない》
…マンネリ気味なのできょうはあえてあまり触れませんでしたが、念のために付け加えておくと、私がいつも取り上げている日教組も当然、連合の一員であり、日教組の中村委員長は連合の副会長でもあります。自治労や日教組は公務員を構成員とする官公労ですし、やっぱり、鳩山氏の「連合はサラリーマンの代表」という言葉は納得し難いと思う次第であります。
私としても、連合や民主党が本当にサラリーマンの希望と要請をくみ取ってくれるというのであれば、それはありがたいし、支持したくもあるのですが。望み薄でしょうね…。
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