5377 拝啓鳩山由紀夫首相殿、あなたは天気予報士になるべきだった 宮崎正弘

しかし幸いにも「米中同盟」の亀裂は「日米同盟」のひび割れより深刻。日米中は「正三角形」と意味不明のことを言いだして、「東アジア共同体」という米国が反対している構想をまだ声高に言いつのって、オバマ政権に不信感を抱かせ(決定打はプリーズ・トラスト・ミー発言)、ついには普天間基地問題の二転三転で米国を怒らせた。
せっかくワシントンの核サミットに呼んで貰ってもオバマは鳩山には十分間しか時間を割かず、同時に小沢訪米団を婉曲に断った。あっても仕方がない。民主党に見切りをつけたというのがワシントンの空気だろう。
他方、つい三ヶ月前まで米中関係は[G2]、「二十一世紀でももっとも重要な国は中国」と獅子吼してきたオバマ政権だが、昨秋の訪中で適当にあしらわれ、その後、グーグルに端を発した両国関係の冷却はオバマが台湾へ武器供与を再開し、チベットの指導者ダライラマ法王と面会し、ついに人民元切り上げ要求となった。
米中関係はささくれだった。このため胡錦涛は予定になかった核サミットに急遽訪米し、オバマと会うや開口一番「人民元切り上げ」を否定した。米中関係が、予想より深刻に亀裂がはいっている事態を浮かび上がらせた。
これは日本の外交にとってつけいるチャンス。敵失を活用して日米同盟の復活に全力を注ぐことは国益を考える政治家のする仕事である。
しかし日章旗を掲げた日本政府専用機に傘をもって乗り込む鳩山首相には国家国民の権益を背負っているという意識は希薄のようである。
感受性が鈍いのかもしれない。あのサイケデリックはシャツを愛用するのも滑稽だが、ポピュリズム重視、国益無視の現れ、やはり宇宙人だったのか。
さて勧告である。鳩山首相殿、あなたは政治家になるべきではなかった。スタンフォード大学では不倫授業のほかに、いったい何を研究されていたのか。佐藤優氏によれば「確率理論」の由で、英語で書かれた鳩山の博士論文は「しっかりしている」と言う。
▲数学の偏微分方程式を政治決断に応用するな
東大工学部時代は応用物理学、計数工学を学び、システムの信頼性回復という講演が得意で、スタンフォード大学の博士課程の研究はオペレーション・リサーチ(OR)とアンドレィ・マルコフ理論だったそうな。
確率理論とは偏微分方程式、一種アルゴリズム数式による未来予測。たとえば九番目に見合いすると成婚する確率が高くなるという例の学問である。
ナチスの謎とされたエニグマ暗号機は天才的数学者が、その暗号アルゴリズムを解読した。日本軍の暗号も米国の数学者が丹念に数字アルゴリズムを解析しており、日本の機密は米国に筒抜けだった。
しかしながら鳩山首相がスタンフォード大学で挑んだのは、この国益にかなう数学とは縁の薄い確率性理論だった。
 
以前にも指摘したが、この偏微分方程式をまとめ上げたのがマルコフ博士で、筆者はてっきり数字アルゴリズムは暗号に応用されると考えて専門家に尋ねたところ、「エニグマのアルゴリズム、北朝鮮の暗号乱数表とマルコフ理論は無関係。むしろ天気予報に応用されている」という。
そうか。過去のパターンを考慮に入れず、直近の出来事だけで判断をするから朝令暮改。天気予報はせいぜい十二時間から二十四時間。三日後の天気ははずれる確率のほうが高い。
 
普天間基地移転をめぐって過去の半世紀に亘る日米安保条約も、十数年にわたって日米が協議してきた普天間基地移転先の合意事項も、すっぽりと忘れ、直近のデータとは沖縄の政治、小沢の顔色、党内事情、朝日新聞の論調をインプットして、二十四時間ていどの決断だけをする。
だから朝の発言と昼の発言がぶれる。嗚呼、鳩山首相よ、あなたは天気予報士になるべきではなかったか。
   
杜父魚ブログの全記事・索引リスト

コメント

タイトルとURLをコピーしました