5407 中国的ポピュリズム「親民路線」 宮崎正弘

やっぱりそうか、チベット被災地で漢族の軍隊と住民との軋轢。死体の扱いがぞんざい、チベット族の怒りが現場で沸騰している。
ダライラマ法王はチベット(青海省)の地震被災地への慰霊の旅を希望している。中国政府は、これを受け入れる度量はあるまい。
そればかりか外国からの救援チームを一切謝絶した中国は青海省チベット自治県へ軍を中心に一万余の救援と医療チームを派遣した。台湾からも20名の医療チームが現場に入る予定。
温家宝首相はインドネシア訪問を中止して真っ先に現場に入った。胡錦涛は訪問先ブラジルから飛んで帰って現場に入った。このような「親民路線」(中国的ポピュリズム)は、旧共産党の遣り方とは異なるが、つまりは映像時代のイメージ宣伝という政治戦略の一環でしかない。
映像を見る限り(北京の官製放送だから)、えらく軍隊が現場で感謝され、大活躍している様子が映し出されている。また派遣されたのは良いが高山病に倒れる兵士も取り上げている。なんだか軍隊が大活躍のイメージをもつ。これで漢族とチベット族の対立も災い転じて福となしたかのように。
実態はまったく違うとヘラルドトリビューンが現場から伝えている(4月19日付け)。
「かれらはプロパガンダが目的で被災地にやってきた。チベットの犠牲者への同情も希薄で、死体の扱いが仏教儀式に反する。かれらが後片付けをしているのは政府関係のビルだか、つぶれた民家の片付けは後回しにされている」と住民の不満を拾っている。
人民解放軍報道班はチベットの僧侶達の救援活動を撮影しないで、自分たちの活動だけをカメラに収めている、とする僧侶の発言も同紙は拾っている。また四川省地震のときと異なり、民間ボランティアの現地入りを禁止している。
日本のマスコミは地震被災地の「青海省」をあたかも中国の版図で描いているが、青海省から四川省、貴州省、雲南省の山岳地帯は共産党の侵略以前まで、れっきとしたチベットである。
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