中国の人民解放軍海軍の艦艇合計10隻が沖縄近海を南下しました。4月10日のことです。この中国艦隊は駆逐艦、潜水艦、フリゲート艦など中国海軍の新鋭艦を総動員していました。これまでこれほど大規模な中国艦隊が日本近海に姿みせたことは例がありません。この中国の動きはなにを意味するのか。アメリカの専門家に聞きました。
□米「国際評価戦略センター」フィッシャー氏
【ワシントン=古森義久】駆逐艦2隻、潜水艦2隻、フリゲート艦3隻など計10隻の中国艦隊が10日、沖縄近海を南下したことについて、米国のシンクタンク「国際評価戦略センター」のリチャード・フィッシャー主任研究員は、産経新聞とのインタビューで「中国海軍の新戦略の始まりであり、米軍への挑戦と日本の反応の探察を目的としている」との見解を明らかにした。
同研究員は、今回の動きが中国人民解放軍海軍としてはこれまで沿岸から最も遠い距離に出ての最大規模の演習行動だと特徴づけ、「日本は中国海軍のこの種の拡大行動にこれから定期的に直面する」と述べた。
中国側の戦略的狙いについて同研究員は、中国海軍が
(1)遠洋活動能力を高め、多元的な艦隊、機能の確立を目指す新戦略のスタートとしている
(2)訓練は東アジア、西太平洋での米海軍の覇権への挑戦を目指している
(3)今回の艦隊の動きに日本がどう反応するかを考察することを意図している-という諸点をあげた。
とくに日本への意味については「中国海軍は今回の訓練航行が象徴する拡大活動を今後定着させ、日本との領有権紛争を抱える東シナ海での海軍力の増強によって、主権の主張に、より強い実効を発揮させることを意図している」と述べ、中国が沖縄諸島に関しても日本の領有権を明確には認めていない点を指摘した。
また、今回の中国艦隊の保有兵器に関連して
(1)キロ級潜水艦が搭載する超音速のSS-N22サンバーン艦対艦ミサイルが有事の際、日本の自衛隊艦艇への大きな脅威となる
(2)ソブレメンヌイ級駆逐艦が搭載する超音速SS-N27シズラー艦対艦ミサイルも自衛隊への脅威となるほか、米軍艦艇への接近拒否の威力を発揮できる-ことを指摘した。
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この中国艦隊のその後の動向については以下の記事が同じ日の産経新聞の載っています。
<<沖縄通過の中国艦艇、その後に沖ノ鳥島近海へ>>
今月10日に沖縄近海を通過した中国海軍の艦艇がその後、日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)近海に入り、同島を基点とする日本の排他的経済水域(EEZ)内で島を1周するように航行していたことが19日、わかった。複数の日米軍事関係筋が明らかにした。沖ノ鳥島は島ではなく、EEZの基点とならない「岩」だと主張している中国側による日本への示威行動とみられ、日本政府は中国艦艇の航行記録を慎重に調べている。
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中国艦艇は、東海艦隊(司令部・浙江省寧波)のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦2隻、フリゲート艦3隻、キロ級潜水艦2隻、補給艦1隻など計10隻で編成。10日に沖縄本島の南西約140キロの公海を東シナ海から太平洋に向けて通過した後、11日に沖縄南方海域で洋上補給を行うと、13日ごろに沖ノ鳥島周辺海域に到達した。
防衛省関係者によると、現在も太平洋上で演習を継続しているという。8日には東シナ海で艦載ヘリが監視中の海上自衛隊の護衛艦の約90メートルまで接近している。
中国軍の機関紙「解放軍報」によると、中国海軍は今回の行動を「近来まれにみる期間と規模の遠洋訓練」と位置づけている。航海中には、艦載ヘリの誘導で空母機動艦隊を攻撃する訓練や対艦ミサイルによる攻撃を電波妨害で防ぐ訓練などのほか、「世論戦、心理戦、法律戦の訓練」も行うという。
中国は過去、国連海洋法条約で必要な日本への通告を行わずに沖ノ鳥島周辺のEEZ内の海洋調査を進めてきた。今回の行動も独自調査による海流データなどを通じて、同周辺海域で潜水艦を含む軍事行動が可能になったことを誇示するねらいがあるとみられる。
また、艦艇が同周辺海域に進出したとされる13日には、米ワシントンで日中首脳会談が行われていた。鳩山政権の反応を探る意図もありそうだ。
日本政府は、中国艦艇の航行について、11日までの情報は日中首脳会談後の13日午前に公表したが、その後のことは、中国政府への対応を含めて明らかにしていない。
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5416 中国艦隊が日米両国を脅かす 古森義久

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