5458 兵力の急減に悩む北朝鮮軍 古沢襄

韓国メデイアでは哨戒艦「天安」の沈没事故が、北朝鮮による魚雷攻撃説が有力となり、今後の問題は韓国が報復のための軍事行動をいつとるか、に移った。朝鮮日報は北朝鮮軍が沈没事故が発生して以降、寝るときにも靴を脱がない臨戦態勢にあると報じている。
さらに北朝鮮人民軍の正規の兵力が食糧不足などから激減していて、「女性兵士」の増強で補う状況になっていると分析している。北朝鮮が誇る「200万の銃爆弾」が、青少年人口の減少により100万を維持することさえも難しくなっているという。
<北朝鮮は今月7日から、全軍・全民に対し非常戦時態勢を宣言した。消息通によると、人民軍は哨戒艦「天安」の沈没事故が発生して以降、寝るときにも靴を脱がないという。だがそれ以上に、北朝鮮の国防委員会は頭を悩ませている。
精神力が衰え、多くの人が飢え死にし、兵力が急減しているからだ。北朝鮮軍部は、韓米連合軍が攻撃してきた場合、手の打ちようもなく崩壊しかねないという懸念が広まる中で最近、国防委の非常対策会議を開いた。
対北消息通によると、北朝鮮が選択したカードは、「女性兵士」の増強だった。戦力の減少を防ぐ「苦肉の策」として、女性の入隊を増やし、在来型の戦力に対する先端化を進め、空白を埋めようという戦略を打ち立てたという。
最近韓国に入国した元軍人の脱北者は、「2008年から女性の入隊が急増し、昨年からは女性も男性と同じく、義務招募(徴兵)の対象に含まれたようだ」と語った。
人民軍への入隊は志願によるものだが、具体的な内幕は強制徴兵制度と変わらない。今では女性も男性と同じく、国家から招集されれば、誰であろうと軍隊に行かなければならない。
女性の入隊が急激に増えたことで、全兵力の20%以上を女性兵士が占めていると思われる。これまで女性兵士は、医務兵や通信交換手、高射砲中隊などを担当してきたが、今では全兵種に拡大されている。
国防委員会が女性を人民軍に大挙入隊させようとしているのは、入隊する男性が不足しているからだ。2011年に入隊する人民軍兵士は、食糧難が本格化した1994年生まれ(軍入隊の年齢は満17歳)の世代に当たる。
金日成(キム・イルソン)主席が死去した94年から98年までは、食糧難が最も厳しかったため、今後数年間は人民軍の兵力減少が不可避の現実になるといわれる。現在、北朝鮮人民軍の正規の兵力はおよそ120万人とみられる。
しかし、実際は異なる。ファン・ジャンヨプ元朝鮮労働党書記は最近、記者に対し、「亡命する前、チョン・ビョンホ労働党軍需工業部長に尋ねたところ、『有事の際の戦闘動員可能兵力は187万人だ』と話していた」と語った
現在北朝鮮には、正規軍のほか人民保安部(警察)、国家保衛部、教導隊(退役軍人による非正規軍)、労農赤衛隊などの民兵組織があり、これを含めると、北朝鮮がしばしば言及する200万の「銃爆弾」が可能だ。
しかし、最近韓国に入国した元軍人の脱北者は、北朝鮮が誇る「200万の銃爆弾」が、青少年人口の減少により100万を維持することさえも難しくなっている、と語った。94年に金日成主席が死去した後、食糧難で最も大きな打撃を受けた階層が、子どもたちだったからだ。
食糧難で出生率が急減し、生まれた子どもの相当数が栄養失調で死亡したため、子どもの数が急減した。たとえ生き残ったとしても、健康状態は悪く、軍に服務できない若者が多い。
脱北者が運営している対北ラジオ局「自由北韓放送」は、「最近、北朝鮮軍に入隊する兵士たちの背丈の基準が、従来の148センチから137センチに調整された」と報じた。これは、韓国では小学校低学年程度の背丈に当たる。
元教師のある脱北者は、「2000年以降、北朝鮮の主要都市では小学校や中学校が統廃合されたところが多いが、これは児童・生徒の数が以前より20-30%も減り、教室ががら空きの学校が増えたからだ」と語った。
咸鏡北道清津市付近のある学校は、生徒の数が半分に減り、閉鎖されることになったという。李明博(イ・ミョンバク)政権発足後、対北支援が中断し、再び人民軍の師団別に栄養失調の軍人を管理する中隊も増えている。
しかし、劣悪な身体条件を克服し軍隊に入隊したとしても、厳しい訓練と空腹で再び栄養失調に陥る軍人が増え、有事の際に有力な戦力として戦闘を遂行できるのか、という懸念が大きくなっている。その上、最近行われたデノミネーション(通貨呼称単位の変更)の失敗による後遺症もある。
北朝鮮の最前線を守る特殊部隊・民警(民事警察)部隊でも、配給が一定せず、白米からトウモロコシへと質が落ちたという。また、一般の後方部隊では配給さえもきちんと行われておらず、北朝鮮軍の非常警戒態勢は「張り子のトラ」のようなこけ威しだ、という解釈も出ている。
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