ゴールデンウィークに、母校である群馬県の高崎高校の友人とゴルフに行くこととなった。ところが、幹事から送られてきた名簿に常連の2人の名前がない。「どうしたんだ」と電話で訊くと、「2人とも脳卒中で倒れて半身不随だ」という。
1人目は、寒暖が激しかった3月のある日の明け方近く、様子がおかしいことに横で寝ていたかみさんが気づき、亭主の体をゆすって声をかけたが、「うーん」とうめいて言語不明瞭。夜明けが近かったので、迷ったがサイレンで近所に迷惑をかけてはと思い、そっとしておいた。夜が明けて救急車を呼んでかかりつけの地方の中核病院へ搬送。
もう“異変”から大分経っていたという。その病院でどのような処置が行われたのか、詳しい話しは聞けなかったが、察するに、このとき彼の脳内では、血管に血栓(血の塊)が詰まって血流を妨げ、そこから下流の脳細胞が壊死を開始していた。脳細胞は壊死すると、その細胞がつかさどっている運動機能が麻痺する—。壊死した細胞は二度と機能を回復することはなく、余生を「よいよい」で過ごすことになる。本人は勿論、家族のご苦労を思えば胸が潰れる。
もう1人の友人は正月だったというが、発症後どんな対応を取ったのか、本人とは話しも出来ず、家族もきちんと説明することはなかったそうだ。
だが、この2人の家族に共通して言えることは、日本の3大疾病の3番目に挙げられている脳疾患(年間の死者15万人)について、高齢家族が持っていなければならない最低限の知識を持ち合わせていなかったのではないかという疑いである。
脳梗塞になっても、対応さえ間違えなければ何の後遺症も残さず、快適な老後を楽しむ治療法がある。このことさえ知ってさえいれば、2人の友人とはゴルフ場で再会の喜びを分かち合えたはずなのである。
その治療法を受けるための最低限の知識ははこうだ。
・体の片側、例え、それが片手の小指の先のしびれであっても、「おかしいな」と思ったら一刻も早く、夜中であろうと、明け方であろうと、迷わず救急車を呼んで病院に駆けつけること。
・だが病院ならどこでもいいいというわけではない。脳梗塞を解消するT-PAという特効薬(血栓溶解剤)の点滴を24時間体制でやってくれる専門医のいる病院でなくてはならない。
・この治療を受けることの出来る病院はそう多くない。24時間体制で専門医がいてMRIなどの検査が出来る医療体制が整っていなければならない。自分がいざというときに駆け込む病院をあらかじめ決めておかなければならない。
・というのも、このT-PAという薬は発症から3時間以内でなければ効果を発揮しないからだ。検査の時間を考えると、一刻も早く、出来れば2時間以内に病院に着いて精密検査を受けることが望ましい。
・点滴を開始すると、動かなかった半身が15分で機能を回復し、歩いて退院したという実例が専門誌に紹介されている。
問題は、地方ではそんな条件の整った病院はそう多くないということだ。そんな専門病院をどうやっての見つけるか。それはもうそのトシになったら、年に1回、定期的に脳ドックでも受けて、まず診察券を確保し、そのとき医者に訊くしかない。「T-PAをやってますか」と。
やってなかったら他を当ってみよう。インターネットで調べる方法もある。面倒なようだが、いざというときのことを考えると、どうせヒマなのだからこれくらいのトライはリクリエーションだと思えば、楽勝ではないだろうか。で、ジジ、ババはトモシラガで天寿をまっとうできる。
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