カルザイ(アフガニスタン大統領)が訪米したが、めぼしい成果はなかった。日々失われてゆく米軍、NATOのアフガニスタン統治の戦略プラン。
5月12日、カルザイ大統領はワシントン入りし、ホワイトハウスでオバマ大統領と会見、新聞報道に拠れば両者の「ささくれだった」冷たい空気は和らぎ、アフガニスタン問題の解決に前向きの方向が示されたそうな。(共同声明、記者会見の詳細は下欄にサイト紹介)。
ヘルマンド県マルジャへの軍事作戦は一応「成功」を収め、タリバンは他の地域へ逃散した。つぎはNATO軍の軍備が整い次第、タリバンの聖地「カンダハル」へ入る。
軍事作戦を展開する前に多くのミッションがすでにカンダハルへ入り、部族長らを説得し、住民にタリバン支持から離れるよう慰撫工作をし、多少の資金も配布しているが、幾つかの深刻な問題がある。部族長等はタリバンを支持していないが、かといってカルザイ政権も信用していない。
現在アフガニスタンを「統治」するカルザイ政権は、およそ政府の体をなしてはおらず、「全地域の四分の一しか、この政権を支持していない」(NYタイムズ、5月14日付け)。
第一にカルザイ政権の腐敗が酷すぎること。軍事と警察機構は「北部同盟」が握り、タジク人が横暴にふるまっている事実を多数派のパシュトンは冷ややかに見ている。
第二に住民に裨益する政策はなにもなく、したがって麻薬栽培に走る。
第三に西側の利権は、ほぼカルザイ一族が寡占し、復興プログラムの契約者はカルザイの弟が独占しているため、住民の不満は往々にしてタリバン支持に流れる。
基本的にはアフガニスタン国民は明日の希望を抱いておらず、米軍がきてカネをまけば、それを貰い、翌日タリバンがきて有利な条件で兵士を募集すれば、それに応じる。日々、NATO軍にも沈鬱な空気が支配しつつある。
杜父魚ブログの全記事・索引リスト
5571 アフダンを覆うNATO軍の憂鬱 宮崎正弘

コメント